「気候変動×都市デザインワークショップ」の開催

掲載日 2026年1月26日
分野 普及啓発 / 健康 / 国民生活・都市生活
地域名 中部(愛知県)

気候変動による影響

昨今、地球規模の気候変動に伴う気温上昇の影響が我が国でも顕在化しており、ヒートアイランド現象と相まって、特に建築密度の高い都市部における屋外環境の高温化が顕著です。これらの地域的な課題に対しては、地区スケールなどの小さな空間単位における適応策の展開が重要であり、昨今注目されている多主体協働型のまちづくりが効果的です。

取り組み

東京大学都市計画研究室では、錦二丁目エリアマネジメント株式会社との連携により、将来的な気候変動影響に適応するための地区の物的環境デザインを行う一連のワークショップ(以下、WS)を計4回にわたり実施しました(注)。これらは主に暑熱分野における将来的な課題を認識し、それに対する適応策のアイデアを創出することを目的としたまちづくり活動の一環です。プログラムにおいては、参加者による温熱環境調査の実施、適応策を模型制作に反映した都市デザイン、温熱環境シミュレーションに基づく提案内容の考察などが含まれ、環境工学と都市計画学の知見に基づく構成となっている点に特徴があります。

WSの内容

WSは計4️回を一連の内容とし、第1回は「Inspire」、第2回は「Envision」、第3回は「Evaluate」、第4回は「Experience and Plan」をテーマとしました(図1)。対象地は愛知県名古屋市中区錦二丁目地区とし、WSの開発・運営は東京大学都市計画研究室と錦二丁目エリアマネジメント株式会社の連携によって進められました。いずれの回もまちづくりに関心のある方を中心にウェブサイトなどから参加者を募集し、主な参加者は地域住民・大学・企業・行政の関係者(気候変動について専門外の方も含まれる)となりました。

第1回「Inspire」
第1回WSでは、参加者が気候変動影響に関する科学的知識について学び、対象地区における将来的な影響やそれに対する適応策のアイデアを議論することを目的としました。プログラムの構成は、専門家によるレクチャーの後に、指定された議題に対して参加者が議論することを2回繰り返しました。議題は「暑さと集中豪雨がひどくなったらどのような問題が起きるか?(図2)」と「暑さを乗り越えるためにできることは?今すぐから2090年まで」の2点です。

第2回「Envision」
第2回WSは2日間にわたって実施し、参加者が錦二丁目の実測調査により課題を把握し、将来的な適応策のアイデアを錦二丁目の模型上に表現して提案することを目的としました。1日目のプログラムは、第一に専門家による気候変動やまちづくりに関するレクチャー、第二に実測調査のフィールドワーク、第三にそれらの調査結果の整理と考察を行いました。2日目のプログラムは、第一に1日目の内容を踏まえて地区デザインのグループワークを行い、第二に成果発表と議論を行いました(図3)。グループワークにおいては、対象地区の公共空間(道路空間とオープンスペース)を3つのエリアに区分し、参加者が3グループに分かれて各エリアの地区デザインを担当しました。各グループからのアイデアとして、短期的な適応策としてはミストシャワーの実施、歩道屋根の設置、壁面緑化の実施、長期的な適応策としては道路空間の再配分・木質化、ビオトープの設置、再開発に伴う新たな公共空間の設計などが提案されました(図4)。

第3回「Evaluate」
第3回WSでは、第2回WSで提案された地区デザインを温熱環境シミュレーションによって評価し、適応策の効果に関する議論を行うことを目的としました。シミュレーションの結果は事前に専門家によって準備され、WS当日には適応策の導入前後における温熱環境の違いが、3D上に再現された表面気温分布やWBGT(湿球黒球温度)推移を示すグラフなどを通して、視覚的に説明されました。例えば、ある南北道路の空間は正午の時間帯に直達日射を遮る構造物が少ない点が課題であったが、歩道屋根、壁面緑化、道路の木質化などの提案により歩行環境が大きく改善された様子が示されました(図5)。

第4回「Experience and Plan」
第4回WSでは、第3回WSまでの成果を踏まえて仮設置された適応策の効果を体感・実測し、これらの対策の予算や維持管理などの制約条件を踏まえた適切な設置場所を議論することを目的としました。プログラムは、第一に専門家によるレクチャー、第二に実測調査のフィールドワーク、第三に調査結果の整理と考察、第四に適応策の導入場所検討に関するグループワーク、第五にそれらの成果発表を行いました(図6)。最初に多くの適応策の導入を想定し、次にそれらの対策を費用に応じて選択していく検討プロセスを経ることにより、各対策の費用対効果を踏まえながら効果的な導入場所を検討することができました。

効果/期待される効果等

計4回開催した今回のWSではのべ97名の方が参加し、まちづくり活動の目的を通じて気候変動適応の普及・促進に大きな貢献があったと考えられます。「気候変動適応」とはやや抽象的な考え方であり、その効果の定量化が難しいため、自治体や企業等の将来計画において具体的な対策が位置づけられることは「緩和」と比べて少ないです。そのような中、今回の活動ではまちづくりのテーマとして「適応」を明確に銘打った点に大きな特徴があり、地域課題の中の新たな軸の一つとして参加者に認識された様子が伺えました。まちづくりにも気候変動適応にも特効薬はなく長い時間を要するため、それらを担う関係者と共通の認識を持つことで、まちの環境改善に向けて少しずつ、かつ確実な効果を期待することができます。

「気候変動×都市デザインワークショップ」の各回のテーマ
図1 「気候変動×都市デザインワークショップ」の各回のテーマ
(出典:N2/LAB 錦2丁目エリアプラットフォーム
第1回WSの議論結果(一部抜粋)
図2 第1回WSの議論結果(一部抜粋)
(出典:N2/Lab #5気候変動その1 N2/Labワークショップ 報告
第2回WSのプログラム
図3 第2回WSのプログラム
(出典:N2/Lab #6気候変動その2 N2/Labワークショップ 報告
第2回WSのデザイン成果
図4 第2回WSのデザイン成果
(出典:N2/Lab #6気候変動その2 N2/Labワークショップ 報告
第3回WSの説明資料(温熱環境シミュレーション結果)
図5 第3回WSの説明資料(温熱環境シミュレーション結果)
(出典:N2/Lab #7気候変動その3 N2/Labワークショップ 報告
第4回WSの様子
図6 第4回WSの様子
(出典:N2/Lab #8気候変動その4 N2/Labワークショップ 報告

脚注
(注)WSの詳細はエリアプラットフォーム(N2/LAB)のウェブサイトからも参照可能です。
N2/LAB. Nishiki 2 Area Platform.

出典・関連情報

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