陸域からの淡水流出量
流況の極端化(出水時の流量は増加、平常時の流量は減少の傾向)が見られますが、年間流出量には有意な将来変化が見られません(年々の変動の方が大きい)。地域気候変動予測データの降水量についても、同様の将来変化が報告されており、それが強く反映された予測結果といえます。
ここでは気候変動が瀬戸内海の水環境に及ぼす影響の予測情報を提供します。この情報は環境省事業「閉鎖性海域における気候変動による影響評価等検討業務(平成28~30年度)」「閉鎖性海域における気候変動による影響評価及び適応策等検討業務(令和元~3年度)」によって得られた成果です。
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位置は下のマップを参照してください。
大阪湾、紀伊水道、播磨灘、備讃瀬戸、備後灘、燧灘、安芸灘、広島湾、周防灘、伊予灘、豊後水道
国立環境研究所では、陸域からの降水-流出の変化を考慮して瀬戸内海の水環境への気候変動影響を予測する、陸域-海域統合モデルの開発・改良を進めてきました。本予測情報はこのモデル(2021年度版)による数値シミュレーションに基づくものです。
予測シミュレーションは、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第5次評価報告書のRCPシナリオ(代表濃度経路シナリオ)に基づいて実施されています。RCPシナリオは全部で4つ(RCP 2.6,4.5,6.0,8.5)あり、21世紀末の将来気候における世界平均気温は、最も気候変動が大きいRCP8.5で2.6 ~ 4.8℃、最も小さいRCP2.6で0.3 ~ 1.7℃上昇すると予測されています。
瀬戸内海の水質予測にあたり、陸域の工場や事業所などの点源から人為的に排出される負荷量を考慮する必要がありますが、本予測では現在と将来で変化しないことを前提としています。なお、森林や農地など、降水に伴って土地から流出する面源負荷はモデルで計算しています。
本予測シミュレーションは、現在気候20世紀末(1984年9月 ~ 2004年8月)、4つのRCPシナリオの将来気候21世紀末(2080年9月 ~ 2100年8月)で行われています。それぞれの気候シナリオで20年間の予測値(日別平均値)が出力されますが、最初の1年を除く19年間の統計値で本予測情報を取りまとめています(例えば、「現在気候2月の水温」は現在気候1985~2004年における2月の水温の平均値を示しています)。また、現在気候から将来気候にかけての変化を「将来変化」と表記しています。
本予測で得られた瀬戸内海の水環境への主要な気候変動影響は下記のとおりです。
流況の極端化(出水時の流量は増加、平常時の流量は減少の傾向)が見られますが、年間流出量には有意な将来変化が見られません(年々の変動の方が大きい)。地域気候変動予測データの降水量についても、同様の将来変化が報告されており、それが強く反映された予測結果といえます。
流況の極端化に伴い、SSなどの懸濁態(粒子態)物質の流出量に増加傾向が見られますが、COD・TN・TPの年間流出量には有意な将来変化が見られません。淡水流出量が変わらないことに加え、汚濁負荷の流出は、降水とは無関係の点源負荷によるものが降水に依存する面源負荷よりも卓越していることが原因と考えられます。
一年を通して有意な上昇傾向が見られます。温暖化傾向が強い気候シナリオになるほど昇温幅が大きくなり、RCP8.5では表層水温が現在気候よりも3~4℃上昇しています。昇温幅は夏~秋が比較的大きく、閉鎖性が強くて水深が浅い海域ほど昇温は顕著となります。RCP8.5では、周防灘および燧灘~大阪湾において、8月平均の表層水温が30℃を超えています。
表層、底層ともに全体的に若干の上昇傾向が見られますが、その上昇幅は年変動と比べて小さく、有意な将来変化とはいえません。
年平均の表層Chl.a濃度は、備讃瀬戸~大阪湾の東部海域において減少傾向が見られます。特に、夏~秋に表層水温が30℃を超える海域において減少が顕著であり、一次生産の高温阻害が発生しています。逆に、冬~春は、温暖化によって一次生産が活発化し、表層Chl.a濃度が増加する将来変化が見られます。
植物プランクトンの一次生産に必要な栄養塩の一つであるDIN濃度は、上記のChl.a濃度に対応する将来変化となり、夏~秋に一次生産が減少する海域では上昇、冬~春に一次生産が増加する海域では低下する将来変化が見られます。
COD、TN、TPの濃度は、豊後水道と紀伊水道を除く内海において、気候シナリオの温暖化傾向が強くなるにつれて、少しずつ上昇する傾向が見られます。特にTNとTPの濃度については、東部の海域になるほど上昇幅が大きくなります。夏~秋の一次生産の低下によって栄養塩の有機化と沈降・海底堆積量が減少するため、溶存無機態のまま内海から外洋に潮流で輸送されやすくなっていることが原因と考えられます。
貧酸素水塊が発生する大阪湾の底層DOについては、夏~秋は一次生産の低下によって有機物量が減少するため、底層DOは若干上昇する傾向が見られます。逆に、一次生産が増加する冬~春は底層DOが低下するため、貧酸素水塊の発生期間は長期化する将来変化が見られます。
本予測情報には不確実性が含まれており、特に下記の点について留意が必要です。