陸域モデル:
降水量と蒸発散位を駆動力とする力学ベース分布型流出モデルであり、中小河川流域も含む全ての集水域から瀬戸内海への淡水・汚濁負荷(SS,COD,TN,TP)流出量を予測します。流出が降水に左右されない、工場や事業所など点源からの負荷には2014年度調査実績の発生負荷量データ(環境省, 2016)を使用しています。
沿岸域は大気、陸、海洋のちょうど境界にあり、その水環境はこれらすべての影響を受けます。中でも閉鎖性海域は、陸域の影響を強く受けることが特徴です。
国立環境研究所では、陸域からの降水-流出の変化を考慮して瀬戸内海の水環境への気候変動影響を予測する、陸域-海域統合モデルの開発・改良を進めてきました。本予測情報はこのモデル(2021年度版)による数値シミュレーションに基づくものです。
降水量と蒸発散位を駆動力とする力学ベース分布型流出モデルであり、中小河川流域も含む全ての集水域から瀬戸内海への淡水・汚濁負荷(SS,COD,TN,TP)流出量を予測します。流出が降水に左右されない、工場や事業所など点源からの負荷には2014年度調査実績の発生負荷量データ(環境省, 2016)を使用しています。
力学ベースの3次元流動モデルとC-N-P-Oの物質循環を解析する水質・底質モデルで構成され、海上気象、外洋、陸域モデルの淡水・汚濁負荷流出を駆動力として瀬戸内海の流動場・水質場を予測します。
モデルの水平解像度は陸域、海域ともに約1km(3次メッシュ)です。
本予測は、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第5次評価報告書のRCPシナリオ(代表濃度経路シナリオ)に基づいて実施されています。RCPシナリオは全部で4つ(RCP2.6,4.5,6.0,8.5)あり、21世紀末の将来気候における世界平均気温は、最も気候変動が大きいRCP8.5で2.6 ~ 4.8℃、最も小さいRCP2.6で0.3 ~ 1.7℃上昇すると予測されています。
陸域と海域に共通で必要となる気象条件には「地域気候変動予測データ」(環境省, 2014)を使用しています。このデータは、気象庁気象研究所の地域気候モデルNHRCMを用いて、日本周辺の気候変動を水平解像度20 kmで予測されたものです。20世紀末(1984年9月 ~ 2004年8月)における現在気候、21世紀末(2080年9月 ~ 2100年8月)における4つのRCPシナリオの将来気候を対象とし、それぞれ20年分の1時間データを陸域ー海域モデルに与えています。
海域の予測では外洋の境界条件が必要ですが、地域気候変動予測データからは海面水温以外は取得できません。本予測では、現在気候においては同期間の再解析データ(海洋研究開発機構のFORA-WNP30)を用い、これに全球大気海洋結合モデル(東京大学・国立環境研究所・海洋研究開発機構のMIROC5)で予測された現在気候と将来気候の長期平均値・線形トレンドの変化量を加えることで、将来気候の水温・塩分を作成しました。この方法では、外洋の水温上昇は考慮されますが、現在と将来で黒潮の流軸変動が変わらない制約があります。
その他、本予測の主な条件・制約は下記のとおりです。
水質の予測結果を大きく左右する植物プランクトンについては、室内培養実験によって増殖特性(光、温度、栄養塩の依存性)を精緻に調べた3種類(代表的な優占種である珪藻のSkeletonema marinoi-dohrnii complexと Eucampia zodiacus、渦鞭毛藻のProrocentrum dentatum)をモデルに考慮しています。いずれも水温30℃あたりで増殖速度が急激に低下する種であり、本予測結果に見られる夏期の水温上昇に伴う一次生産の減少の要因になっています。このことは、より高温耐性を有する種の出現などによって、予測結果が大きく変わる可能性があることを示唆しています。
気候変動の影響を抽出しやすくするため、点源からの負荷量については上記の2014年度調査実績の発生負荷量データ(環境省, 2016)を現在気候と将来気候に共通して与えました。なお、面源からの負荷量については、降水依存の算定式で予測しています。
現在気候と将来気候で共通とし、World Ocean Atlas 2009の統計値を与えています。