【テーマ4】適応実践に向けた異なるステークホルダーレベルでの課題の抽出とソリューションの提案

栗栖 聖

Kurisu Kiyo

テーマリーダー

東京大学/大学院工学系研究科


気候変動に対して温室効果ガスを削減するための消費者行動の解析や情報提供法の検討評価に関する研究を実施すると共に、S18より気候変動適応に関わる研究を実施してきている。本プロジェクトでは、テーマ4リーダーを務め、様々なステークホルダーレベルでの気候変動影響の認知と適応に向けた課題を明らかにし、適応推進に向けた道筋を見出すことを目標としている。専門は、環境システム、環境配慮行動。

概要

本テーマでは、個人、コミュニティ、企業、地方自治体、国といった異なるレベルを対象に、気候変動適応の現状、現場での適応における課題、制約、促進要因を明らかにする。
サブテーマ1では、市民、コミュニティ、企業といった異なるステークホルダーレベルを対象に、気候変動影響の認知、気候変動に関するリテラシー、緩和・適応行動への意図、および実際の行動実践の現状や行動実施に向けての課題を明らかにする。加えて、気候変動への理解を高め、行動実践に向けて有効となる情報提供内容を検討する。
サブテーマ2では、適応計画策定済み地方公共団体や気候変動対策に積極的に取り組む「世界首長誓約/日本」地方公共団体(都道府県・市町村)の気候変動適応計画及び都市計画マスタープランの概要整理、類型化を行う。その上で対象とした地方公共団体(自治体)における課題認識の評価、気候変動適応計画及び都市計画マスタープラン、それらに基づく気候変動適応策の内容及び進捗状況の分析と評価を行う。また、様々なステークホルダーを対象としたディスカッションやワークショップを通じて、気候変動適応に関わる施策受容性の課題を把握し、気候変動適応計画及びそれに基づく施策の改善案を検討する。
サブテーマ3では、適応に関する法制度・政策の体系的整理および提言の達成に向けて、適応に関する現行の法制度・政策を洗い出し、体系的に整理する。同様の分析を諸外国についても実施し、日本法との比較分析を行い、法改正や法制度の創設等を提案する。さらに、社会実装に係る法的・政策的な阻害要因の解明および解決策の提示に関しては、指定暑熱避難施設の指定や流域治水関連法で導入された諸制度を中心に、地方公共団体が認識している法的・政策的な課題を明らかにする。当該課題や適応策の実施に係る不確実性の問題、他テーマの研究から生じた法律上の懸念点につき、考えられうる解決策を提示する。
これらを通じて気候変動適応の実践における様々なステークホルダーレベルでの現状と課題を理解し、適応促進に向けた施策の提案と評価へと繋げる。

研究の流れと研究体制

目標

気候変動適応の実践においては様々なステークホルダーレベルでの現状と課題を理解し、適応促進に向けた戦略を提案することが必要である。本テーマでは、個人、コミュニティ、企業、地方自治体、国といった異なるレベルを対象に、大規模調査と個別の聞き取り調査を通じて、適応の現状、現場での適応における課題、制約、促進要因を明らかにし、適応促進に向けた施策の提案と評価を実施する。

【サブテーマ4(1)】市民等における適応リテラシーの評価と促進

サブテーマリーダー

栗栖 聖(東京大学/大学院工学系研究科)

概要

適応戦略の実現のためのパスウェイの提案・策定を行うには、各地域、また異なるステークホルダーにおいて現状でどのような気候変動への認識があり、それに対してどのような行動がとられ、そこにはどのような課題があるかを明らかにしなければならない。本サブテーマでは市民、コミュニティ、企業といった異なるステークホルダーレベルを対象に、これら各ステークホルダーレベルで、気候変動影響の認知、気候変動に関するリテラシー、緩和・適応行動への意図、および実際の行動実践の現状を明らかにする。さらに行動実施に向けての課題を各ステークホルダーレベルおよびステークホルダー内の類型別に明らかにする。加えて、気候変動への理解を高め、行動実践に向けて有効となる情報提供内容を検討する。

サブテーマ4(1)の概要

目標

  • 各ステークホルダーレベルでの気候変動に関する行動実践に向けた課題の分析
  • 各ステークホルダー内での類型化および各類型特徴の把握
  • 効果的な情報提供内容の検討と試行

研究対象と計画

  • 市民における行動規定因の抽出と仮説の構築
  • 構築した仮説に基づく調査票の設計
  • 市民を対象とした全国規模でのアンケート調査・解析
  • コミュニティ(町内会、学校など)、企業経営者、特定企業(動物園、スキー場、テーマパーク等)の調査の検討
  • 中小企業における行動仮説の検討
  • 中小企業を対象とした全国規模でのアンケート調査・解析
  • 特定のコミュニティ、企業を対象とした聞き取り調査・解析

【サブテーマ4(2)】地方公共団体の気候変動適応計画とそれに基づく具体施策の評価

村山 顕人

Akito Murayama

サブテーマリーダー

東京大学/大学院工学系研究科


現状分析や将来予測を行い、多様な主体の意向や活動を理解しながら、都市の空間形成にかかわる計画を立案するプランニングの研究・実践に取り組んできた。本プロジェクトでは、地方公共団体の気候変動適応計画とそれに基づく具体施策の評価を行い、主に気候変動対策の都市空間への実装に取り組む。専門は都市計画・まちづくり。

概要

持続可能なエネルギーの推進、温室効果ガスの大幅削減、気候変動の影響への適応に積極的に取り組み、持続可能でレジリエントな地域づくりにおいて日本をリードする「世界首長誓約/日本」49地方公共団体や適応計画策定済み地方公共団体と連携し、気候変動影響予測に関する科学的知見に対する地方公共団体の課題認識の評価、地方公共団体の地域気候変動適応計画とそれに基づく施策の内容及び進捗状況の評価と改善提案、計画・施策の評価枠組みの検討、様々なステークホルダーによる施策の受容性の課題の解明を行う。

サブテーマ4(2)の概要

目標

  • 環境政策と都市計画が連携して、人々の暮らしを規定する都市の物的環境(都市空間)の形成に気候変動対策を組み込むこと

研究対象と計画

  • 気候変動適応計画
  • 都市計画マスタープラン、緑の基本計画等の都市の物的環境の形成に関わる計画
  • 適応計画・施策の評価枠組み
  • 様々なステークホルダーによる施策の受容性

【サブテーマ4(3)】国レベルの法制度・政策の整理と提案

釼持 麻衣

Mai Kemmochi

サブテーマリーダー

関東学院大学/法学部


気候変動への適応を進めるための法政策のあり方や適応策を進めるうえで生じうる課題について、法学の観点から研究している。本プロジェクトでは、気候変動適応に関わる法制度の分野横断的な整理を踏まえて、政策提言を行うことなどを目指す。専門は、環境法学、行政法学。

概要

適応に関する法制度・政策の体系的整理および提言に向けて、適応に関する現行の法制度・政策を洗い出し、分野横断的に整理する。諸外国の法制度の研究および日本法との比較も踏まえて、将来的な法改正や法制度の創設等を提案する。また、社会実装の段階にも目を向け、指定暑熱避難施設の指定や流域治水関連法で導入された諸制度を中心に、その実施を担う自治体が認識している法的・政策的な阻害要因を明らかにする。これらの阻害要因や適応策の実施に係る不確実性の問題、他テーマの研究から生じた法律上の懸念点につき、考えられうる解決策を提示する。

目標

  • 適応に関する法制度・政策の体系的整理および提言
  • 社会実装に係る法的・政策的な阻害要因の解明および解決策の提言

研究対象と計画

  • 日本の法制度・政策の体系的・分野横断的な整理
  • 諸外国の法制度・政策の研究
  • 日本における将来的な法改正や制度導入の提言
  • 適応の社会実装に係る法的・政策的な阻害要因の解明
  • 阻害要因に対する法的解決策の検討
  • 不確実性に関する判例法理の解明