「気候変動適応に係る国民の理解度調査」調査結果の概要

国立環境研究所気候変動適応センターは気候変動影響・適応に関する情報の収集・整理・分析や研究を推進し、その成果を広く提供することで、政府、地方公共団体による気候変動適応に関する計画の策定や適応策の実施をはじめ、事業者や個人を含む各主体による気候変動適応に関する取り組みに貢献しています。
その一環として「気候変動適応に係る国民の理解度」に関するインターネット調査を実施しました(2022年3月8日~3月10日に実施)。ここでは、アンケート結果の概要をご紹介します。

1. 回答者の属性

今回の調査は、気候変動適応広域協議会が設置されている7地域について、今後の継続的な変化を一定程度検出できるよう、回答者数を各地域 800(予想回答比率 25%、許容誤差:3%、信頼度:95%として母集団人口数から算定)と設定した上で、地域内の性別、年代別人口比で回答者数の割付を行って実施しています。なお、性別その他については割付外としました。

回答者の属性

2. 気候変動影響の認知状況と情報提供について

気候変動の影響について「知っていた」とする回答は今回調査では各地域 70.8~73.0%となりました。地域別の特徴的な差は認められず、どの地域でも約 7 割が「知っていた」と回答する結果になっています。

気候変動影響の認知状況

図注)全体の数値は、地域別の人口差を勘案しない単純集計値。(以下図12まで同様)

気候変動影響の情報提供については、「十分提供されている」2.8~4.1%、「ある程度提供されている」42.4~46.4%と計 45.1~49.9%、約半数の方が気候変動影響の情報提供に充足していると回答しました。
地域で比較をすると、地域では大きな差はありませんでしたが、気候的に冬の寒さなどが厳しい北海道で提供不足とする回答がやや多い結果となっています。

気候変動影響の情報提供について

3. 気候変動影響の関心度

気候変動影響への関心については「とても関心がある」(17.0~23.1%)、「関心がある」(51.8~56.6%)となり、どの地域も 7 割を超える方が関心ありと回答する結果となりました。

気候変動影響の関心度

4. 日常生活の中で気候変動影響を感じるか

日常生活の中で気候変動の影響を感じるものについては、「夏の暑さ」、「風水害の増加」、「雨の降り方の激しさ」、「冬の寒さや雪の降り方」が上位の回答となりました。
地域別では「雨の降り方の激しさ」については西日本地域、「冬の寒さや雪の降り方」については東日本地域のほうが、それぞれ回答率が高い傾向がありました。

日常生活の中で気候変動影響を感じるか

5. 気候変動の特に問題だと思う影響

気候変動の特に問題だと思う影響について最も高いのは、「洪水、高潮・高波などによる気象災害が増加すること」となりました。次いで「農作物の品質や収穫量の低下、漁獲量が減少すること」、「豪雨や暴風による停電や交通まひなどインフラ・ライフラインに被害が出ること」、「野生生物や植物の生息域が変化すること」と続きます。
地域別の差は大きいとは言えませんが、「気象災害の増加」と「渇水が増加」については西日本地域ほど回答が多くなる傾向がありました。また「豪雨や帽数によるインフラ・ライフラインの被害」を筆頭に、「九州・沖縄」が全般的に回答率の高さが目立つ結果となっています。

気候変動の特に問題だと思う影響

6. 気候変動適応の認知と知りたい情報

気候変動適応の認知は「言葉も取り組みも知っていた」(4.8~7.0%)、「言葉は知らなかったが、取り組みは知っていた」(15.6~21.4%)、「言葉は知っていたが、取り組みは知らなかった」(17.8~21.5%)という結果となりました。
(地域別・性別・年代別の気候変動適応認知度は、参考資料として本概要後半に掲載しています。)

気候変動適応の認知と知りたい情報

また、気候変動適応について知りたい情報では、「日本の気候変動の影響」から「国の気候変動適応への取り組み」まで上位 6 つの項目で回答率が 3 割以上となっています。
地域別では大きな回答差が認められないものの、「北海道」と「九州・沖縄」でやや回答率が高い傾向にありました。

気候変動適応の知りたい情報

7. 実践している気候変動適応への取り組みと今後新たに実践したい取り組み

実践している気候変動適応への取り組みとしては、熱中症対策に関することが各地域4割超、ハザードマップの利用などが3割前後、3 位の地元の農作物や水産物を購入するが地域により若干差がありますが2~3割で、以下は 2 割台かそれ以下の回答率となりました。
地域別の回答結果では、熱中症対策やハザードマップの利用では「九州・沖縄」、地元の農産・水産物の購入では、「北海道」「東北」、「九州・沖縄」が高く、家の断熱では「北海道」、「東北」、「中部」の地域で高いなどの特色がある結果となっています。

実践している気候変動適応への取り組み

現在は取り組んでいないことで、今後、実践してみたい気候変動適応への取り組みの回答は、すでに取り組んでいるものとの差では、多くの項目で下回る結果となりました。順位としては、気候変動の情報の入手、身近な自然などの保全や維持、節水や水資源の保全などが上位となりました。一方で、熱中症対策など現在実践中の取り組みについては回答率を大きく下げ、1割強にとどまっています。今後の取り組みとしては、個人的なことから地域や災害対策などに意識が向いていると読み取れます。
また、「身近な動植物への気候変動影響の観察・情報共有」については、北海道、中部、近畿、中国・四国、九州・沖縄において、すでに実践している取り組みをわずかに超える結果となりました。

今後新たに実践したい気候変動適応への取り組み

8. 気候変動適応の実践への課題

気候変動適応の実践への課題では、取り組みに関する情報の不足が(40.4%~45.4%)、経済的なコストが(36.9%~41.1%)、気候変動適応の効果が不明瞭なことについてが(34.6%~39.5%)となりました。
地域別に比較をしても特徴的な回答差が読み取れませんでしたが、取り組みに関する情報不足は、「中国・四国」と「九州・沖縄」で回答率がやや高いようです。

気候変動適応の実践課題

9. 気候変動適応に関して政府に期待する取り組み

気候変動適応への取り組みについての政府への期待では、「洪水、高潮・高波などへの防災対策」、「農作物の品質や収穫量、漁獲量への対策」、「渇水対策や水資源の保全対策」が上位で、防災と食料・飲料の保全に関わる回答が高い結果となりました。

気候変動適応に関して政府に期待する取り組み

国立環境研究所気候変動適応センターでは、今後同様の理解度調査を継続的に実施し、調査結果を参考にしつつ、気候変動適応の促進に向けた取り組みを進めて参ります。

参考資料(地域別・性別・年代別 気候変動適応の認知度)

北海道地域 東北地域 関東地域 中部地域 近畿地域 中国・四国地域 九州・沖縄地域

<調査の概要>

1.調査目的

A-PLAT(気候変動適応情報プラットフォーム)等を通じた、気候変動適応センターが実施する今後の各種支援の参考とするため。

2.調査対象者

居住地:全国7地域(北海道地域、東北地域、関東地域、中部地域、近畿地域、中国四国地域、九州・沖縄地域)
年代:18 歳~29 歳、30 代、40 代、50 代、60 歳以上
性別:男性、女性、(その他)※
割付:各地域×年代×性別(※その他については割付の枠外とした。)

3.調査手法

インターネット調査

4.調査時期

2022年3月8日(火)~3月10日(木)

5.調査結果の見方

  • nは回答者数を表している。
  • 回答率(%)は小数点第2位を四捨五入し、小数点第1位までを表示している。このため、合計数値は必ずしも 100%とはならない場合がある。
  • 設問の回答には、単一回答と複数回答がある。複数回答の設問は、回答率(%)の合計が 100%を超える場合がある。
  • nが30未満の数値は参考値とする。

<調査項目一覧>

SA(シングルアンサー):単一回答  MA(マルチアンサー):複数回答   ※MT:マトリクス(表組)

調査項目一覧
(2022年6月30日掲載)

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