バルセロナ市の気候シェルター

掲載日 2024年7月8日
分野 健康 / 国民生活・都市生活
地域名 海外(スペイン)

気候変動による影響

気候変動により猛暑の頻度と激しさが増すと予想されています。現在、バルセロナでは平均して4年に1度の頻度で熱波(注)が発生しており、将来的には温室効果ガスの排出をある程度抑制できたシナリオ(RCP4.5)でも熱波の頻度は8倍になると予想されており、温室効果ガスの排出が最大となるシナリオ(RCP8.5)では16倍になると予想されています。

熱波の影響は、社会経済的な状況や年齢的な理由から暑さの影響を直接的に受けやすい人々、特に高齢者や貧困層等にとって大きく、過剰で持続的な暑さは死亡率と罹患率を増加させる恐れがあります。

また、寒さも死亡率の上昇につながります。暑さの場合と同様に、高齢者やホームレスの人々など特に大きな影響を及ぼします。

取り組み

バルセロナ市では、熱波等の気候変動による影響へ備えるため、市内の様々な施設を気候シェルターとして利用する取組を始めています(図1、2)。

気候シェルターには次のような特徴があります。

  • 屋内・屋外両方のシェルターが存在しています。
    • 屋内シェルターは一年中稼働しており、暑さにも寒さにも対応できます。
    • 屋外シェルターは、6月15日から9月15日までの熱波の予防期間中のみ稼働します。
  • 気候シェルターとして、図書館、地域の施設、自治体のスポーツセンター、公園や庭園、学校、博物館等様々な施設が登録されており、人々に快適さを提供すると同時に、他の用途や機能を持っている場合があります。
  • 屋内シェルターの場合、空調設備の設定温度は、夏は27℃、冬は19℃を基本としています。
  • 特に暑さや寒さに脆弱な人(乳幼児、75歳以上の高齢者、慢性疾患のある人、生活困窮者など)向けに設計されています。
  • 医療行為は提供していないため、医療行為が必要な場合には適切な保健センターに行く必要があります。
  • 気候シェルターへは簡単にアクセス可能かつ安全であり、全てのシェルターで快適な休憩所(椅子とベンチ)と無料の水を提供しています。
  • 都市公園の場合には、都市の緑が豊富(表面積が0.5ヘクタール以上)で、植生の質を示すNDVI指数は0.4以上で、身体の不自由な人でもアクセスでき、噴水や座席があるような場所が設定されています。
  • 気候シェルターは無料で利用することができます。

効果/期待される効果等

2023年の夏季には、全部で227か所のシェルターがバルセロナ市内で稼働しました。これにより、バルセロナ市の97%の人が自宅から徒歩10分以内、58%の人が自宅からさらに近い5分以内にシェルターへアクセスできるようになりました。

バルセロナ市では、全ての住民が自宅から5分以内にシェルターへアクセスできるようにするために、今後もシェルターとして利用できる施設等の数を増やす計画をしています。特に、高齢者や貧困者等が多い地域を優先的にシェルターの登録を推進していく予定です。

図1 気候シェルターの公式マーク
(出典:バルセロナ市ウェブページ「Climate Shelters Network」)
気候シェルターの例
図2 気候シェルターの例
(出典:バルセロナ市ウェブページ「Climate Shelters Network」)

脚注
(注)バルセロナ市では、最高気温が33.1°Cを超える日が3日以上続くことを熱波と定義している。

出典・関連情報

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