気候変動による影響
ドイツのシュペサートは、低木に覆われた山脈(最高標高586m)で、バイエルン州とヘッセン州を跨ぐように位置しています。夏季はハイキングが主要な観光資源となっています。また、冬季はスキーが大きな魅力となっていますが、近年は気候変動の影響によりスキーができる日が著しく少なくなっています。ヘッセン州では、21世紀末(2071-2100年)までに降雪日が20~40%減少するという予測もあり、既存のスキー施設の維持が懸念されています(注1)。
掲載日 | 2022年6月8日 |
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分野 | 産業・経済活動 |
地域名 | 海外(ドイツ) |
ドイツのシュペサートは、低木に覆われた山脈(最高標高586m)で、バイエルン州とヘッセン州を跨ぐように位置しています。夏季はハイキングが主要な観光資源となっています。また、冬季はスキーが大きな魅力となっていますが、近年は気候変動の影響によりスキーができる日が著しく少なくなっています。ヘッセン州では、21世紀末(2071-2100年)までに降雪日が20~40%減少するという予測もあり、既存のスキー施設の維持が懸念されています(注1)。
ヘッセン州の適応戦略では、観光分野における気候変動への適応が非常に重視されています。包括的な対策は、地域の観光活動の発展の一部として、2000年から複数の協力機関(注2)により実施されてきました。また、2016年に設立したシュペサート観光有限会社により更なる対策が実施されています。具体的には、シュペサートを通年型の観光地に転換するために、文化的・健康的なサービスを提供する取組として、特にハイキングやサイクリングに焦点に置いた活動が実施されました。例えば、冬季に使用しないスキーリフトの撤去、ハイキングやマウンテンバイクを行う人のための新たなコースの設置、及びシュペサートを「感動的な森林・自然体験」の場とするための新しいコミュニケーション・コンセプトの策定等に取り組みました。
また、協力機関や関係者の連携のもと、戦略的な観光開発計画を策定するためのワークショップが開催されました。市場調査の結果や観光地としての特徴から、観光客ターゲットとなる「アクティブな自然愛好家」「ハイキングを行う人」「スローライフに興味のある観光客」「マウンテンバイクを行う人」及び「家族」等のグループを選定の上、これらのグループの参加を得ました。その結果、「ハイキング」「マウンテンバイク」「幸福」「文化」の4つのテーマが観光開発計画のための柱となりました(図1、2)。
新たな観光戦略により、観光客数は冬季から年間を通したものへと推移してきており、長期的には観光客全体の増加も期待されています。
図1 シュペサートのウェブページで紹介される「アウトドアアクティビティ」のメニュー
(出典:Spessart Tourismus und Marketing GmbH 「Welcome to the Spessart Region」)
図2 シュペサートのウェブページで紹介される「幸福」のメニュー
(出典:Spessart Tourismus und Marketing GmbH 「Welcome to the Spessart Region」)
脚注
(注1)シナリオRCP8.5を用いた地域別気候シミュレーションの評価の平均値
(注2)ヘッシッシャー・シュペサート自然公園、バイエルン州のシュペサート自然公園、シュペサートメインランド観光組織