気候変動による影響
米国アラスカ州にあるニュートック村は、ニングリック川による洪水と土地の浸食の脅威に曝されています(図1、図2)。ゴミの埋立地は、1996年の浸食によって失われ、現在の新しい埋立地は満潮時にボートでアクセスしなければなりません。また、2005年には村の船着場が浸食により失われ、村への運搬船は横を流れるニュートック川に限定されていますが、水位の変化から航行は極めて困難で制限されています。
掲載日 | 2022年9月8日 |
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分野 | 自然災害・沿岸域 / 国民生活・都市生活 |
地域名 | 海外(米・アラスカ州) |
米国アラスカ州にあるニュートック村は、ニングリック川による洪水と土地の浸食の脅威に曝されています(図1、図2)。ゴミの埋立地は、1996年の浸食によって失われ、現在の新しい埋立地は満潮時にボートでアクセスしなければなりません。また、2005年には村の船着場が浸食により失われ、村への運搬船は横を流れるニュートック川に限定されていますが、水位の変化から航行は極めて困難で制限されています。
ニュートック村は、幾つかの候補地からネルソン島のマータービックへの村の移転を決意し、2006年にアラスカの商業コミュニティ経済開発省(DCCED)内のコミュニティ地域課(DCRA)に対し支援を要請しました。DCCEDはアラスカ州行政命令を受け、これに従いDCRAがニュートックの移転事業の支援を調整する「ニュートック・プラニング・グループ(NPG)(注1)」を発足させました。
NPGの代表者は、定期的に集まり様々な専門知識やリソースを活用し移転を実現するための枠組みや戦略の確立に取り組みました。そして、この取り組みに基づき、連邦政府機関とUkpeaġvik Iñupiat Corporation Construction (UICC)は、マータービックに運輸の要となる船着場、深刻な洪水が発生した時の避難所や発電所等の主要施設を建設しました。避難所には、寒冷化を想定したエネルギー効率の良い住宅システムが導入され、一時的に最大300人を収容することができます。2019年10月に21世帯140人(ニュートック村の人口の約1/3)がマータービックに移住しました。
発電所の運営が村に移行する前の2ヶ月間は、UICCが運営し、新しい家を暖めるための十分な燃料と先進的な水道システムを提供しました。住民は、村の中央に設置されたトレーラーにゴミを廃棄し、UICCがゴミ処理場まで運搬しました。2019年12月には給水所、発電所、燃料貯蔵所が稼働し、新しい村の施設管理者へトレーニングが行われました。こうしてニュートック村からの移転計画は、2020年1月に第一段階を終えました。
移転計画の最終段階として、上下水システムの導入や病院建設を予定しています(図3)。また、かつてのニュートック村において、病院への緊急搬送や貨物、旅客サービス等住民のニーズに応えていた空港は2022年の完成を目指して建設中です。
マータービックへ移転することにより、土地の浸食によって引き起こされていた様々な問題が解決され、住民たちは衛生的で安全な新しい生活を送れるようになることが期待されます。
図1 ニュートック村の海岸線における浸食マップ
(出典:Alaska Department of Commerce, Community, and Economic Developmentウェブページ 「NEWTOK PLANNING GROUP」)
図2 ニュートック村の建物に迫る浸食
(出典:Alaska Department of Commerce, Community, and Economic Developmentウェブページ 「NEWTOK PLANNING GROUP」)
図3 整備の進むマータービック
(出典:Alaska Department of Commerce, Community, and Economic Developmentウェブページ 「Newtok Relocation News」)
脚注
(注1)NPGは、ニュートック村や連邦政府機関(アラスカ州・アメリカ合衆国)の他、非営利団体や中等後教育機関やヘルスケア企業等から構成