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イラストで分かりやすい適応策
気候変動の影響と適応策

りんご

農業・林業・水産業分野|農業|果樹
協力:農業・食品産業技術総合研究機構

影響の要因

気温の上昇により、果実の着色期等が高温になる事で影響が生じている。

現在の状況と将来予測

現在、凍霜害、日焼け果、りんごの着色不良・着色遅延、黒星病の早期発症等の影響がみられている。

将来、2060年代には現在のりんごの主力産地の多くが暖地りんごの産地と同等の気温となると予測され、適応策をとらない場合、東北中部の平野部まで現在よりも栽培しにくい気候となる。

出典:杉浦(2020)を一部改変

適応策

永年性作物である果樹は他の作物と比べ、気候に対する適応性の幅が狭い。採算性の面から植栽後20〜30年間は同一樹で生産する事を考慮した適応策を実施する必要がある。

時期
現在
現在~中期
~長期
分類
栽培技術による対応
高温耐性品種への改植
樹種転換
分類
栽培技術による対応
高温耐性品種への改植
樹種転換
対応主体
【狭】生産者レベル 【広】産地レベル(周辺産業への影響等も検討)
方法
[凍霜害対策]

春先の気温が高く、果樹の生育ステージが早まる年は、凍霜害対策を行う。
【事前】
①燃焼法、②散水氷結法、③防霜ファン
【事後】
人工授粉等により結実を確保する。

[日焼け果対策]

①遮光資材(樹上):農薬散布や着色管理の邪魔にならない樹上に、丈夫な紐で遮光資材(遮光率10~20%程度)の裾を既存の支柱等に結び付けて被覆する。 ②遮光資材(果実):日焼けを起こしそうな果実(南側等)に遮光性資材を被覆。強い直射日光が当たるのを防ぎ、果実表面温度の極端な上昇を抑えることで、日焼けの発生を軽減する。

[着色不良対策]

①光反射マルチシートの敷設:りんごの下面にも光を当て、果実全体の着色を良くする。 ②葉摘み・玉回し:実全体に日光が当たるように、実上部の葉を摘み取り(葉摘み)、摘んだ部分が着色したら、隠れている側に日光が当たるように実を回す(玉回し)。 ③果実発色促進装置:果実収穫後に青色LED光を照射し、着色向上する技術が開発されている(農研機構他2021)。

[改植(別品種)]

①品種:温度が高くても比較的着色のよい品種(「紅みのり」「錦秋」「秋映え」等)や、緑黄色で着色の問題が発生しない品種(「もりのかがやき」等)に改植する。 ②改植・新植方法:管理が容易な樹形で収量増加も可能な省力樹形(ジョイントV字トレリス、トールスピンドルシステム等)が開発・実装されている。

[改植(別樹種)]

都道府県の果樹農業振興計画等で長期的な展望を持ちながら、より暖地向きの樹種に改植する。各樹種(ぶどう等)の将来適地予測マップや産地ブランド戦略等も考慮し、採用する樹種を決定することが考えられる。

時期

春(発芽期~開花期)

①遮光資材(樹上):梅雨明け~夏季において、晴天で日焼け発生の可能性がある最高気温30℃以上と予想される前日までに被覆する。 ②遮光資材(果実):気温や日射量が増える7月上旬頃に取付、病害虫やサビの発生リスクを避ける為に8月下旬〜9月上旬頃に取り外し。

①②秋(着色期)
③収穫後

主に秋植え
根の活着の面から休眠期中の秋植えが望ましい。積雪や土壌凍結の影響、野ウサギ・野ネズミの被害が大きい場合は春植えを実施する。
(農林水産省 参照2025年10月15日)

既存樹種の地域ブランドが確立している場合も多く、樹種転換は最後の手段。苗木の生産体制整備、植え付けから収穫までの期間等を考慮すると、販売開始の10年以上前から対策の検討を開始する必要がある。

効果

①燃焼法:直接気温を高める最も一般的な方法。電源や水源は不要だが労力負担が大きい。 ②散水氷結法:電源及び水源が必要だが、自動作動可能で防霜効果は高い。 ③防霜ファン:電源が必要。地形や気象条件により効果が得られない場合がある。(岩手県農林水産部2025)

①遮光資材(樹上):現地試験において、果面温度を約2〜6℃程度抑制、無処理と比較し日焼け果の発生も軽減。年により、着色がやや遅れることがある点に注意が必要(小林他2018)。 ②遮光資材(果実):現地試験では被覆なしと比較し表面温度が約3℃程度低下、果実の日焼け発生率も半減(石川県農林総合研究センター農業試験場2018)。

①②果実全体の着色が向上する。 ③糖度が13度以上の着色不良の果実において、着色が向上する。

植え替えには手間とコストが掛かるが、別樹種に改植するよりは、同じ樹種である為栽培しやすいと考えられる。改植後数年間は収入が得られないため、園地の一部を着色のよい品種へ植え替えする等、計画的に対応することが望ましい。

樹種によるが、早いものでも成園まで3〜4年以上要する事が多い。園地の一部を樹種転換する等、収入を継続しながら計画的に対応することが望ましい。また、流通・加工等の周辺産業への影響も大きいことから、段階的・計画的な検討が必要と考えられる。

コスト

【参考価格】

[燃焼法]運用費用:1.5~4万円/10a
[散水氷結法]導入費用:30~40万円(揚水ポンプ、施工費等含まず)、電気料金や水利費等:数千円
[防霜ファン]導入費用:90~120万円(別途制御盤が必要・施工費等含まず)、運用費用:1時間あたり140~211円/10a(岩手県農林水産部2025より引用)

【参考価格】

①遮光資材(樹上)遮光率8%資材:110,000 円/10a、遮光率22%資材:150,000 円/10a(試作品のため原反価格・税抜)(以上青森県産業技術センター2018及び小林他2018より引用) ②遮光資材(果実)筒状伸縮性あり:15円/枚程度(3年以上使用可)(石川県農林総合研究センター農業試験場2018より引用)

【参考価格】

①製品によるが数万円/100m程度 ②果実発色促進装置:開発元に要問合せ

【改植参考価格】

  • ジョイントV字トレリス:約160万円/10a(肥料費、農薬費、資材費他)
  • トールスピンドルシステム:約210万円/10a(肥料費、農薬費、資材費他)  (以上AI(機械化樹形)コンソーシアム2021より引用)
    ※農林水産省 果樹経営支援対策事業において、改植(新植)支援:73(71)万円/10aの補助が実施されている(農林水産省農産局 参照2025年10月15日)。

樹種転換に加え栽培方法の知見取得も必要なため、同樹種への改植よりコストを要する。

社会的視点

りんご栽培の継続は、果樹生産のみならず、関連産業の維持や国内での食料の安定供給、地域文化など、多岐にわたり貢献することになる。また、外観品質向上のため生産者の努力が続けられているが、高温による着色不良でも味は変わらないため、外観に左右されずに消費者が購入するような消費向上をはかるなど、社会が適応していくことも重要である。

適応策の
進め方

【気候変動を考慮した考え方・準備・計画】 近年の温暖化に伴う高温障害は、高温を原因として生ずる果実、花、樹体における障害であり、収量や商品性の低下に直結する。高温障害に対しては、栽培管理における基本技術を徹底した上で、症状に応じた技術的対策を講ずる。技術的対策による対応が困難な場合においては、障害リスクの低い品種の導入を図るなど品種構成の見直しを行う。それでもなお障害の発生が抑えられず生産が困難な場合は、「表1.栽培する上での気象条件・注意事項」を参照して地域の気象条件に合った品目への転換を検討する。(以上農林水産省 2025 より引用)

2026年1月改訂
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