- インフォグラフィック
- イラストで分かりやすい適応策
サケ(シロザケ)
影響の要因
海水温の上昇や親潮・沿岸親潮の弱勢化、海洋熱波の発生等の海洋環境の変化は、サケ稚魚の生残や親魚の回帰等に影響すると考えられる(佐藤2024)。
現在の状況と将来予測
現在、サケ稚魚の回遊条件の悪化や餌環境・捕食者分布の変化、及びサケ親魚回帰時の水温上昇の影響等がみられる(佐藤2024)。日本へのサケ来遊数は2000年代半ば以降、減少している。
将来の分布面積は、 A1Bシナリオに基づく予測でサケの夏季~秋季は現在よりも縮小するのに対し、冬季~春季は現在よりも拡大すると推定されている。温暖化の負の影響は 2050 年以降に顕著になる可能性が高い。また、温暖化時の回帰ルートは現在の回帰ルートとは異なる可能性がある。放流適水温(5〜10°C)の範囲が消失する地域がある一方、北海道では長期化するとの予測がある。
適応策
短期的には、サケ稚魚の大型化や放流時期の最適化、野生魚の保全等によりサケ稚魚の生残率を上げることを目指す。長期的には、地域によっては回遊ルートの変化等への対策検討を行うことが考えられる。
現在、そ上・成熟した親魚から良質な種卵を確保する努力が行われている。その卵から発生させた稚魚に与える飼料や飼育手法の改善等が進められている。
油脂等の添加物により飼料を改善し、健康で遊泳力があり、飢餓耐性のある種苗の生産努力が行われている。
大型のサケ稚魚を放流した場合にその回帰率が向上する結果が得られており、放流稚魚の大型化のための生産・飼育技術開発も行われている(さけ・ます等栽培対象資源対策共同研究機関さけ・ます不漁対策グループ2025)。
海洋環境の変化を踏まえ、地域ごとの放流適期・適サイズの見直しや検証が行われている。
左記のサケ稚魚大型化に加え、耳石温度標識サケ稚魚の降海・成長履歴とその回帰時データを用いた「適期・適サイズ放流」の最適化も検討されている(斎藤2023)。
サケにとって好適な水温となる10月以降の遅い時期に来遊するサケ資源の造成を強化する(秋サケ資源対策検討会議2024)。
温暖化に伴う四季の2極化と水温の上昇・降下の激化に備え、一極集中ではない放流体制を整備(永沢2014)。
- 自然産卵を助長し野生魚由来の降下稚魚数を増やすことで、親魚回帰時の野生個体の割合を増加させる。
- 稚魚が成育可能な河川環境の維持・改善。
- 沿岸域における適切な漁獲圧管理の検討。
- 河川捕獲はふ化事業の種卵確保に必要な親魚数(=人工ふ化放流計画数)に留め(森田2020)、親魚捕獲数を抑制する。
野生魚がそ上・産卵しやすい河川及び周囲の環境を整備する。
- 魚道の設置・管理
- 自然産卵環境の維持や改善
- 多自然護岸
- 河川浄化
- 森林管理 等
健全な野生資源を確立するため、自然環境下で自然選択を受けている野生魚の資源・個体群を維持・保全する。
状況によっては、ふ化場の養殖用種苗生産基地や中間育成場等への転換、サケに依存する定置網業の合理化や養殖業への転換等(水産庁2023)の考え方を示しているものもある。
例:さけます類の養殖
- 高温耐性があるサクラマス、ギンザケ、ニジマス等を飼育。
- サーモンの生食市場が拡大する中、「ご当地サーモン」としてブランド化し、販売。
不漁問題に関する検討会(2021)では、「活用可能な既存施設において養殖用種苗を生産してサーモン養殖と連携する等、ふ化場の有効活用や統合も含めた効率化を図ることが必要」「サケを主対象としている定置漁業については、ブリやサバ類等漁獲量が増加している魚種の有効活用を進める」等の視点が示されている。
進め方
北海道をはじめとする各地域との連携を図り、放流事業については漁業者、研究者、行政が現場の情報を共有して、今後の方向性を検討することが必要である。環境変化への対応や回帰率の良い取組事例の横展開、野生魚を活用したふ化放流技術開発など人工種苗の遺伝的な影響も含めた研究などを早急に進める(不漁問題に関する検討会2021より引用)。
