脚注
(注)工場、倉庫、体育館など規模の大きな建物の屋根に多く使用される金属屋根で、通常板厚0.6~1.2ミリの鋼板を用いて、山高を大きく成型したものである。
「屋根散水システム」による暑熱対策
株式会社イーエス・ウォーターネット
掲載日 | 2021年11月2日 |
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適応分野 | 健康 |
会社概要
株式会社イーエス・ウォーターネットは創業以来、「農水に貢献する企業」をモットーに、農水の専門メーカーとして、最新のかんがいシステムを取り入れ、民間事業から公共事業まで数多くの実績を重ねてきた。現在では、農業分野で培ってきたノウハウを新幹線の消雪システム、環境・都市緑化システム、水処理システム、ODA事業など、環境・工業・海外分野にも活動の幅を広げている。
気候変動による影響
地球温暖化、砂漠化、ヒートアイランド現象、ゲリラ豪雨等、地球規模で環境が大きく変化している。こうした状況を受け、創業以来、農業を通じて社会貢献を行ってきた当社では、これまでに蓄積した経験、知識、開発商品を環境分野で活かすべく、地球規模での温暖化防止、温室ガス抑制、緑のダムの創出、防災分野にも活動を広げている。
適応に関する取り組み
当社は、スプリンクラーで屋根に撒いた水が蒸発する際に、屋根の表面から熱を奪うこと(気化熱)を利用して、屋根温度の上昇を防ぐ「屋根散水システム」を提案している。これは庭や道に水を撒いて涼をとる打ち水と同じ考えの暑熱対策である。屋根温度の上昇が抑制されると、屋根から室内へ伝わる輻射熱が減り、その結果として室内の温度上昇も抑制される。
当社は、屋根散水に必要な機器(スプリンクラーやコントローラ、付帯機器など)を全て取り揃え、システムとして提供している(図1)。さらに、汎用の自動散水コントローラの他に、屋根散水専用のコントローラも用意している。屋根散水に特化した専用コントローラは、散水の期間や曜日、開始・終了時刻、散水継続・中断時間等の設定により、屋根散水の自動制御が可能となっている。
また、「屋根散水システム」は、屋根上にソーラーパネル(太陽光パネル)がある場合、この冷却にも適用できる。ソーラーパネルは温度が上昇すると発電効率が落ちるといわれているため、散水により冷却することで発電効率が回復すれば、省エネ・節電効果が一層高まる。
効果/期待される効果等
当社の折半屋根(注)への屋上散水の冷却効果検証では、日射が強くなる正午前後に最も効果が表れた(図2)。散水を行わない折半屋根の天井部分は51.5℃まで上昇したのに対して、散水を行う方は32℃までの上昇に留まり、散水の有無により約20℃の差異が生じた。また、遮熱塗料、遮光シートとの冷却性能の比較も実施した。その結果、屋根散水は遮熱塗料、遮光シートよりも5℃~7℃ほど屋根温度を低く抑えており、屋根散水による冷却効果の高さが示された(図3)。
「屋根散水システム」は、工場や倉庫、大型ホームセンター、メガソーラーパネル、学校校舎等へ導入されており、利用者からは室内に入った際にひんやりと感じられた、作業が楽になった等の意見が寄せられている。