千葉県の地域特性、センター設置の経緯や組織体制についてお聞かせください。
千葉県は、三方を海に囲まれた温暖な気候です。また、山々が続く房総丘陵を除いて、ほぼ平坦な地形であり、平均標高が45mと全国で一番低い県です。
本県では、2016年9月に策定した「千葉県地球温暖化対策実行計画」において、適応策について取り組んでいくとし、2018年3月には、この計画に基づき適応を進めるため、各分野の気候変動影響及び各施策における取組方針を整理した「千葉県の気候変動影響と適応の取組方針」を策定しました。そして、同年12月の気候変動適応法の施行に伴い、その取組方針を、2019年2月に法に基づく地域気候変動適応計画として位置付けました。
この流れの中で、気候変動影響に適切に対応し、情報収集機能などの充実を図るため、環境に関する調査・研究や情報提供などを行っている千葉県環境研究センターを、2020年4月1日に気候変動適応法第13条に基づく「地域気候変動適応センター」に位置付けました。
組織体制は、全て環境研究センターの職員が兼任し、気候変動影響や適応に関する情報の収集・整理・提供、他の研究機関等との情報共有などの役割を担っています。
地域適応センターの活動内容について、現在取り組まれていることや今後予定されていることがあれば教えてください。
活動内容としては、関係機関との情報共有や意見交換などによる、気候変動影響や適応に関する情報を収集・整理、及びホームページや講師の派遣、イベントへの出展等を通じた県民の皆様などにわかりやすい形での情報提供を行っています。
また、当センターでは、環境問題への理解を深めてもらうことを目的として、2018年6月にYouTubeチャンネル(環境情報チャンネル)を開設し、気候変動に関する内容を含む環境情報等を動画で配信しています。2021年度は、気候変動の影響と適応に関するものとして「小学生でも楽しく学べる気候変動問題」、「千葉県における気候変動の影響予測」、「県内の企業や市民団体による気候変動対策の事例紹介」の3つをテーマに動画を制作しているところであり、できあがり次第、環境情報チャンネルで配信する予定です。
今後は、若い世代をターゲットとして自ら考え取り組むきっかけとなるように普及啓発を推進したいと考えています。
その他、県内の12の高校に対し、熱中症関係のアンケート・実態調査を行いました。学校における熱中症リスク低減に向け、温暖化に伴う学校運営への影響や具体的な対策を尋ねるもので、現在、その回答を取りまとめ、整理しているところです。
庁内関係部局との連携や県、事業者の適応推進において工夫されている点や課題などありましたらお聞かせください。
気候変動への対応は温室効果ガスの排出を抑制する「緩和策」と、温暖化による被害を回避・軽減する「適応策」をそれぞれ行っていく必要があり、当センターでは温暖化対策等の施策を所管している循環型社会推進課と連携し、県民向けのセミナーを開催して適応策について分かりやすく説明するなど、事業を進めています。加えて、気候変動の影響が予測されている農業や水産業などの研究機関と情報共有を図るなど連携に向け取り組んでいるところです。
庁内関係部局との連携については、主として循環型社会推進課が担っており、毎年、関係部局における施策の取組実績等を把握し、その結果について情報共有を図るなど、連携に努めています。
また、当センターと市町村で、協力して事業を実施していけるよう意見交換を行い、検討を進めているところです。なお、事業者については、当センターとして、今後どのように協力を進めていけるかが課題となっています。
現在の業務に携わるやりがい、今後の展望をお聞かせください。
2021年8月に公表されたIPCCの第6次評価報告書では、「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことは疑う余地がない」とされる一方で、世界全体で2050年カーボンニュートラルを達成できれば、気温上昇を1.5℃程度に抑えられる可能性が高まるとされています。そのため、県民一人ひとりが温室効果ガスの排出量削減に取り組むとともに、今後避けて通れない気候変動の影響に対する「適応」について、関心や理解を深め行動変容を促すことが重要です。
次世代を担う子どもたちが豊かで安心して暮らしていける千葉県の環境を守るために、業務に取り組んでいきたいと考えております。
(2022年2月18日掲載)