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気候変動と適応

分野別影響&適応

気候変動による影響と適応策をまとめた「気候変動適応計画」(平成30年11月)に閣議決定されました。「気候変動影響評価報告書」(平成 27 年3月)では我が国が定める適応7分野(「農業・林業・水産業」、「水環境・水資源」、「自然生態系」、「自然災害・沿岸域」、「健康」、「産業・経済活動」、「国民生活・都市生活」)における影響評価結果に加えて、関係府省庁による「気候変動の観測・予測及び影響評価統合レポート 2018」(平成 30 年2月)における気候変動影響に関する新たな知見を追記しています。ここでは気候変動による分野別影響と適応策の概要を紹介します。

主要7分野

農業、森林・林業、水産業

農業への影響

①農業生産総論
農業生産は気候変動の影響を受けやすく、各品目で生育障害や品質低下など気候変動によると考えられる影響が見られる。将来の影響予測については主要作物等を中心に実施しているが、より一層将来影響の研究を進める必要がある。
②水稲
高温による品質の低下等の影響が全国で確認されており、一部の地域や極端な高温年には収量の減少も見られている。将来のコメ収量を予測した研究では、このまま気温上昇が続く場合、収量は増加傾向にあるものの 2061~2080 年頃をピークに減少していくと報告している。
③果樹
永年性作物の果樹は、一年生作物に比べて気候に対する適応性の幅が狭い。気候変動に対して脆弱な作物ともいわれ、品質低下をはじめとする隔年結果の増大や生理落果の助長等の影響を受けやすいとされている。
④土地利用型作物
暖冬による麦類の茎立や出穂の早期化、その後の春先の低温や晩霜による凍霜害の発生、生育期全般の多雨による湿害の発生等が見られる。
⑤園芸作物
露地野菜のキャベツ等の葉菜類、ダイコン等の根菜類、スイカ等の果菜類等の収穫期が早まり、生育障害の発生頻度が増加している。
⑥畜産
家畜では夏季の平年を上回る高温の影響として、乳用牛の乳量・乳成分・繁殖成績の低下、肉用牛、豚及び肉用鶏の増体率の低下等が報告されている。
⑦病害虫・雑草・動物感染症
西南暖地の一部に分布するミナミアオカメムシは、水稲や大豆、果樹など多くの作物に被害をもたらす。既に関東一部にまで分布域が拡大し、気温上昇の影響が指摘されている。
⑧農業生産基盤
農業生産基盤に影響を与える降水量については、多雨年と渇水年の変動の幅が大きくなっている。将来、代かき期の北日本で利用可能な水量の減少、梅雨期や台風期に全国的に洪水リスクの増加が予測される。
⑨食品・飼料の安全確保(穀物等の農産品及びその加工品、飼料)
土壌中には多くの種類のかび(真菌)が生息している。農産物に感染して品質・収量低下をもたらす病害や食品・飼料の安全性に影響するかび毒汚染を引き起こす可能性がある。

農業の適応

①農業生産総論
農業生産全般において、高温等の影響を回避・軽減する適応技術や高温耐性品種等の導入など適応策の生産現場への普及指導や新たな適応技術の導入実証等の取組が行われている。
②水稲
肥培管理や水管理等の基本技術の徹底を図り、高温耐性品種の開発・普及を推進している。病害虫対策では発生予察情報等を活用した適期防除等の徹底を行う。
③果樹
果樹は需給バランスによって価格変動を招きやすく、長期的な視野で対策を講じることが必要である。産地における気候変動による影響と適応策などの情報共有、行動計画の検討が的確に行われるようなネットワーク体制を整備していく。
④土地利用型作物
麦、大豆、小豆、茶、てん菜、ばれいしょへの対策を示している。多雨・高温・干ばつ等の排水対策や病害虫抵抗性品種・育種素材や雑草防除技術等の開発・普及を推進する。
⑤園芸作物
野菜・花きへの対策として高温条件に適応する育種素材の開発、適切な防除・水管理を行う。なた、ハウス等施設利用の場合には台風や大雪等へのハード面での対策を推進する。
⑥畜産
畜舎内の暑熱対策や適切な飼養管理技術の啓発を行う。夏季の増体率や繁殖性の低下を防止するための生産性向上技術の開発や飼料作物を安定的に供給可能にする栽培管理技術、育種開発に取り組む。
⑦病害虫・雑草・動物感染症
気候変動に対応した病害虫防除体系の確立を行い、適時適切な情報収集・発信を行う。
⑧農業生産基盤
将来の気温上昇、融雪流出量の減少、集中豪雨の増加等の影響を踏まえ、ハード・ソフト対策を適切に組み合わせた効率的な農業用水の確保・利活用、災害対策を行う。
⑨食品・飼料の安全確保(穀物等の農産品及びその加工品、飼料)
内ほ場土壌等のかび毒産生菌の分布、気候変動による人や家畜への健康被害を低減するため、生産者への普及活動や技術開発等に取り組む。

森林・林業への影響

①山地災害、治山・林道施設
森林が有する山地災害防止機能の限界を超えた山腹崩壊や、成熟した森林が失われるリスクが高まり、また流木災害等が顕在化している。
②人工林
大気の乾燥化により水ストレスが増大してスギ林が衰退する。降水量の少ない地域では、スギ人工林の生育が将来不適になる可能性がある。
③天然林
高山帯・亜高山帯の植生の衰退、落葉広葉樹が常緑広葉樹に置き換わった可能性が高い箇所が見られる。将来の分布域が冷温帯の種で減少して暖温帯の種で拡大すると予測される。
④病害虫
気温上昇や降水量減少による被害地域の拡大が懸念される。
⑤特用林産物
夏場の気温上昇による病原菌の発生、しいたけの子実体の発生量の減少などが報告されている。

森林・林業の適応

①山地災害、治山・林道施設
森林の有する水源の涵養や保安林の配備を計画的に推進する。山地災害危険地区の調査基準の見直し、集中豪雨の増加を考慮した林道施設整備の推進、地域の実情を踏まえた海岸防災林の生育基盤造成などを検討する。
②人工林
造林木における適応性の評価、周辺環境の継続的モニタリング、長伐期リスクの評価などを行う。
③天然林
継続的なモニタリング調査と、渓流など渓流と一体となった森林生態系ネットワークの形成にも努める。
④病害虫
森林病害虫のまん延防止のための防除、森林被害のモニタリングを継続する。
⑤特用林産物
温暖化の進行による病原菌等の発生や収穫量等に関するデータの蓄積とともに、温暖化に適応したしいたけの栽培技術や品種等を検討する。

水産業への影響

①海面漁業
ブリなど高水温により漁獲量が増加する魚種もあるが、来遊予測モデルと水温予測結果から、温暖化によりサンマの南下が遅くなる可能性が示されている。
②海面養殖業
ホタテガイの大量へい死やカキのへい死率の上昇、生産量の変化などが各地で報告されている。養殖ノリでは、秋季の高水温により種付け時期が遅れ、年間収穫量が各地で減少しているといった報告がある。
③内水面漁業・養殖業
国内のアユ漁獲量は減少傾向にある。淀川河口水温は21 世紀末に1.43~1.99 ℃上昇し、淀川のアユ遡上数の減少が予想される。
④造成漁場
日本沿岸のカジメ科藻類の分布南限の北上化、暖海性藻類の種数増加が認められる。アイゴなどの植食性魚種の摂食行動の活発化と分布域が拡大し、回遊性魚類の漁獲量変化なども報告されている。
⑤漁港・漁村
気候変動による高波被害、海岸浸食、海面上昇による漁港内係留施設の浸水リスク、港内の波の静穏度への影響などが報告されている。

水産業の適応

①海面漁業
海況や漁場予測の高度化、気候変動下での資源量の推定、有害プランクトン発生要因の特定化と速やかな情報提供、海洋環境変化に伴う稚魚の放流手法開発などを推進する。
②海面養殖業
気候変動に伴う赤潮プランクトン発生の調査研究、高水温耐性を有する養殖品種の開発、水温上昇に伴い日本へ侵入が危惧される魚病対策などを行う。
③内水面漁業・養殖業
高水温耐性を有する個体の選別技術、給餌放流技術の高度化、餌料プランクトンの効率的生産技術の開発に取り組む。
④造成漁場
気候変動に伴う漁場、藻場整備、気候変動に強い海藻選定、養殖技術の開発に取り組む。
⑤漁港・漁村
異常気象による潮位や波浪のモニタリング、防波堤、物揚場等の漁港施設の嵩上げや粘り強い構造を持つ海岸保全施設の整備等の計画的に推進する。

その他の農業、森林・林業、水産業の影響

①農林水産業従事者の熱中症
作業中の熱中症死亡者数が近年増加傾向にある。特に65歳以上の高齢者の熱中症発生率は今後各地域で増加することが見込まれている。
②鳥獣害
野生鳥獣の分布拡大による農作物、造林木や水産資源等への影響が報告されている。
③世界食糧自給予測
近年の気候変動に伴う世界の食料供給の混乱事例が報告されている。

その他の農業、森林・林業、水産業の適応策

①農林水産業従事者の熱中症
通気性の高い作業着や熱中症の危険性が高い状況を知らせる熱中症計の活用などの啓発、新技術導入による作業の軽労化などを推進する。
②鳥獣害
侵入防止、捕獲活動の強化、捕獲の担い手の育成、科学的・計画的な保護・管理を推進する。
③世界食糧自給予測
経済成長、人口予測、政策動向等を考慮した超長期的、中期的食料需給予測システムの構築、世界的な食料需給の動向が我が国の食料安定供給に及ぼす影響分析と情報提供などを図る。

水環境・水資源

水環境・水資源への影響

①水環境
湖沼・ダム湖、河川ではDO(溶存酸素)の低下、水質の悪化、富栄養湖の増加が懸念される。沿岸域及び閉鎖性海域では、人為的な影響を含む表層海水温上昇傾向が報告されている。
②水資源
大量の短時間雨量を伴う大雨が発生する一方で年間の降水日数は減少し、取水制限による渇水が生じている。農業分野では田植え時期や用水管理の変更等、農業用水の需要への影響が見られる。

水環境・水資源の適応

①水環境
湖沼・ダム湖、河川では各種モニタリング体制を強化し、底層溶存酸素の改善対策、湖沼水質の将来予測の精度向上などに取り組む。沿岸域および閉鎖性海域では気候変動が水質や生物多様性等への影響に関する科学的知見の集積を図るなど調査研究を推進する。
②水資源
渇水対策として、リスク評価の推進と4つの対策(発生頻度の高い渇水, 施設の能力を上回る渇水, 農業、森林・林業分野における対策, 調査研究の推進)をあげている。

自然生態系

自然生態系への影響

①陸域生態系
高山帯・亜高山帯、自然林・二次林、人工林の分布範囲や植物種の変化等が報告されている。東北や中部山岳域での高山帯やブナ林の消滅、高山帯を生息域とする生物の激減、上空の北東風変化に伴う渡り鳥に適した空域の変化などが懸念される。
②淡水生態系
富栄養化が進行する深い湖沼での低生生物への影響、水温上昇による冷水魚の生息可能な河川分布域の減少、気候変動による湿原の乾燥化と植物群落の変化等が見られる。また、陸域生態系からの栄養塩供給の増加、土壌微生物による窒素代謝速度、土壌からの栄養塩溶脱速度の変化などが懸念される。
③沿岸生態系
サンゴ分布域の北上と生育可能地域の減少、南方系生物の越冬やサンゴの白化現象、温帯性コンブ目の磯焼けなどが発生している。
④海洋生態系
植物プランクトンの現存量に変動が生じる可能性があるとされている。
⑤生物季節
ソメイヨシノなど植物開花の早まり、動物の初鳴きの早まりなど動植物の生物季節の変動を示している。
⑥分布・個体群の変動
分布北限の高緯度化や種間相互作用の変化、生育地の分断化による種の絶滅可能性などが危惧されている。

自然生態系の適応

①陸域生態系
影響が生じる箇所でのモニタリングの実施と評価、気候変動影響を考慮した生態系に影響を及ぼす野生生物の個体群管理・外来種対策を推進する。
②淡水生態系
河川、湖沼、湿原、湧水等の連続性を確保し、生物が往来できる生態系ネットワークの形成を推進する。水温上昇に伴う内水面魚類の疫病の研究を行う。
③沿岸生態系
サンゴ礁等の脆弱な生態系における研究結果を踏まえ、保護地域の管理の適応策への位置づけを推進する。
④海洋生態系
赤潮プランクトン発生と気候変動の関連に関する調査研究を継続する。
⑤生物季節
植物の開花等の生物季節変化を把握するためのモニタリング調査を継続、強化する。研究機関やNPO等と協力した参加型モニタリング等の調査を継続、強化する。
⑥分布・個体群の変動
生物が移動・分散する経路を確保する生態系ネットワークの形成を推進し、その際に外来種やニホンジカの分布拡大のおそれとその影響を考慮する。国内希少野生動植物種の保護増殖事業計画等の見直し時に、気候変動影響も考慮した目標、対策を検討する。

自然災害・沿岸域

自然災害・沿岸域への影響

①水害
短時間強雨、総雨量が数百mmから千mmを超える大雨が発生し、全国各地で毎年のように甚大な水害が発生している。A1Bシナリオの将来予測では洪水を起こしうる大雨事象が代表的な河川流域において優位に増加するとされる。治水計画における目標安全度レベルの流域平均降雨量は全国的に増加傾向にある。
②高潮・高波
温室効果ガス排出を抑えた場合でも一定の海面上昇は免れない。台風の強度増加による高波リスクの増大、港湾・漁港防波堤等への被害が予測されている。高潮による浸水被害、海面水位上昇に伴う荷役効率の低下による物流機能低下が懸念される。全国的に砂浜の浸食が進み、20cm, 60cm, 80cmの海面上昇でそれぞれ36%、83%、91%の砂浜が消失するという予測がある。
③土砂災害
突発的で局所的な大雨に伴う警戒避難のためのリードタイムが短い土砂災害が増加する。記録的な大雨に伴う深層崩壊の増加が懸念される降雨強度が高まると崩壊発生が早くなる。また累積雨量が400mmを超過するケースが増えると、地下水位上昇の影響を受けて深層崩壊発生の危険度が高まる。
④その他(強風等)
将来予測シナリオの一つでは強風や強い台風の増加が予測されている。別のシナリオでは21世紀末には日本全域で竜巻発生好適条件の出現頻度が高まるとされる。

自然災害・沿岸域の適応

①水害

【災害リスクの評価】

災害の発生頻度、被害の度合い、どのような被害が生じるかを各主体が認識し、避難等の件栂できるように浸水深さ、浸水継続時間を明示する。被害想定には人口、インフラ、病院等の立地、高齢化の状況等地域の実情に応じた検討を行う。

【比較的発生頻度の高い外力に対する防災対策】

災害の発生頻度、被害の度合い、どのような被害が生じるかを各主体が認識し、避難等の件栂できるように浸水深さ、浸水継続時間を明示する。被害想定には人口、インフラ、病院等の立地、高齢化の状況等地域の実情に応じた検討を行う。

【施設の能力を上回る外力に対する減災対策】

施設の運用、構造、整備手順等の工夫

上下流・本支川のバランスに留意し、減災の観点を考慮した河川整備計画の見直しを進める。首都圏及び近畿圏の低平地における洪水、越水、浸水等に対して堤防の決壊を防ぐ高規格堤防の整備を推進する。

まちづくり・地域づくりとの連携

土地利用状況を考慮した治水対策を推進する。地下空間からの避難行動の時間確保のための浸水対策としての止水版の設置、避難誘導を促進する。災害リスク情報の提示、二線堤・自然堤防の築造など街づくり・地域づくりと連携した取組みを推進する。

避難、応急活動、事業継続等のための備え

大規模水害時等における孤立者等の被害想定を作成し、国、地方公共団体等が連携した避難、救助・救急、緊急輸送等ができるようタイムラインを策定する。
一般廃棄物処理事業を継続し、災害廃棄物処理計画を策定する。
防災関係機関が応急活動、復旧・復興活動を継続できるよう、市役所、消防署、病院等の浸水防止対策の実施やバックアップ機能の確保、事業継続計画の策定を促進する。企業の被害軽減や早期業務再開を図るため、水害を対象としたBCPの作成や浸水防止策の実施を促進する。

【農業分野における対策】

排水機場や排水路等の整備による湛水被害防止推進、湛水に対する脆弱性が高い施設や地域の把握、ハザードマップ作成、業務継続計画策定の推進など、ハード・ソフト対策を組み合わせた農村地域の防災・減災機能の維持・向上を図る。

②高潮・高波

【港湾】

航路・泊地の埋没の可能性が懸念される場合、防砂提等を設置する。
電気系設備の故障による港湾機能低下を防ぐためのフェーズ別高潮対応計画を策定する。

【海岸】

海岸浸食への対応として、沿岸漂砂による土砂の収支が適切となるように構造物を工夫する。

【漁港・漁村・海岸防災林】

高潮や海岸浸食の被害軽減を考慮し海岸防災林を整備する。

③土砂災害
砂防堰堤等が少しでも長い時間減災機能を発揮できるよう、施設の配置や構造を検討する。
人工衛星等を活用し深層崩壊等の発生や河道閉塞の有無をいち早く把握できる体制の整備を進める。災害リスクが特に高い地域について、土砂災害警戒区域の指定による建築物の構造規制や宅地開発等の抑制、安全な地域への移転を促進する。
④その他(強風等)
竜巻が起きやすい気象状況であることを知らせる情報の活用を促進する。

健康

健康への影響

①暑熱
真夏日の日数が多くなると熱中症死亡数も増加する傾向にある。気候変動の影響とは言い切れないものの、熱中症搬送者数の増加が全国各地で報告されている。将来予測では熱波の頻度、熱ストレスによる死亡リスク、熱中症が増加するとされる。
②感染症
デング熱等の感染症を媒介する蚊(ヒトスジシマカ)の生息域の北限は年平均気温11℃以上の地域とほぼ一致し、2016年には青森県に達しており、21世紀末には北海道東部と高標高地を覗いた日本全土へと広がる可能性がある。感染症を媒介する節足動物の分布可能域が変化し、感染症のリスクを増加させる可能性がある。
③その他
大気汚染との複合影響としてオキシダント濃度上昇に伴う健康被害が増加する。局地的豪雨により合流式下水道で越水が起きると河川の下流における水質が汚染され下痢症発症をもたらす懸念があるが、日本では報告がない。

健康の適応

①暑熱
救急、教育、医療、労働、農林水産業、スポーツ、観光、日常生活等の各場面において、気象情報の提供や注意喚起、予防・対処法の普及啓発、情報提供の実施。炎天下等の厳しい労働条件下での作業へのロボット技術やICTの導入による軽労化を図る。
②感染症
気温上昇と感染症の発生リスクの変化の関係等についての科学的知見の集積。感染症媒介蚊の発生源の対策、成虫の駆除、注意喚起に努める。
③その他
合流式下水道改善対策等の水質改善対策を推進する。

産業・経済活動

産業・経済活動への影響

①産業・経済活動
製造業では平均気温の上昇によって生産活動や生産設備の立地選定に影響を及ぼすことを示唆する研究がある。長期的に起こり得る海面上層や極端現象の頻度や強度の増加は、生産設備等に直接的・物理的な被害を与えるものもある。一方、新たなビジネスチャンスにつながる場合もあり、災害リスクを予測・評価するサービス、建物や居住空間の暑熱環境・快適性を向上させる技術、異常気象による損害を補償する天候デリバティブ等の金融商品を扱ったビジネスが展開されている。
②金融・保険
自然災害に伴う保険損害は近年著しく増加し、恒常的に被害が出る確率が高まっている。保険会社では今後の気候変動の影響を考慮したリスクヘッジ・分散の新たな手法の開発が必要との報告もなされている。
③観光業
海面上昇による砂浜減少によって沿岸部のレジャーに影響を与える。スキー場における積雪深の減少が報告されている。
④その他(海外影響等)
海外における企業の生産拠点への直接的・物理的な影響、海外における感染症媒介者の増加に伴う移住・旅行等を通じた感染症拡大への影響が懸念される。IPCC第5次評価報告書によると北極行きの開票面積が減少し続けている。サプライチェーンを通じて国内の産業・経済に影響を及ぼす。2011年のタイ国の洪水がハードディスクのサプライチェーンを通じて国内企業に約3,150億円の損失をもたらしたと試算した例がある。

産業・経済活動の適応

①産業・経済活動
環境報告書やヒアリングを通じた情報収集、得られた知見を踏まえての適応への取り組みや適応技術開発を促進する。荷主と物流事業者が連携したBCPの策定を推進する。
②金融・保険
自然災害リスクについて損害保険各社のリスク管理の高度化、モニタリング手法の高度化に取り組む。
③観光業
観光業については地域特性を踏まえ適応策を実施していくことが重要なため、地域における気候変動の影響に関する科学的知見の集積を図る。災害時にホテル・旅館等宿泊施設を避難受入施設として迅速に提供できるようにするため、宿泊関係団体等と地方公共団体との協定の締結を促す。災害関連情報を多言語にて発信する。
④その他(海外影響等)
海外の気候変動影響が安全保障に及ぼす影響、企業のサプライチェーン等を通じて社会経済状況及び食料需給に及ぼす影響について調査する。北極海航路の利活用に向けた環境を整備する。

国民生活・都市生活

国民生活・都市生活への影響

①インフラ、ライフライン
各地で記録的な豪雨による地下浸水、停電、地下鉄への影響、渇水や洪水、水質悪化等による水道インフラへの影響、豪雨や台風による切土斜面への影響等が確認されているが、気候変動の影響によるものであるかは明確には判断しがたい。
②文化・歴史などを感じる暮らし
さくら、かえで、せみ等の生物季節の変化が報告されている。さくらの花見ができる日数が減少し、さくらを観光資源とする地域への影響が予測されている。
③その他(暑熱による生活への影響)
ヒートアイランド現象に気候変動による気温上昇が重なり、熱中症リスクの増大や快適性の損失など都市生活に大きな影響を及ぼしている。

国民生活・都市生活の適応

①インフラ、ライフライン
ハザードマップ等に基づき、浸水被害が想定される地下鉄等での浸水対策や、大雨による斜面崩落や高潮等による護岸崩壊防止の対策、保全等を推進する。海上輸送維持のため、航路標識の倒壊の予防、海難防止のための海域監視体制の強化を検討する。緊急輸送道路として警察、消防、自衛隊棟が迅速に活動できるよう、安全性の高い道路網を整備する。また、「道の駅」における防災機能を強化する。停電による信号機の機能停止防止のための電源付加装置を整備する。
②文化・歴史などを感じる暮らし
気候変動が伝統行事・地場産業に及ぼす影響については研究事例が少ないため、調査研究を進め科学的知見の集積を図る。
③その他(暑熱による生活への影響)
緑地・水面は気温の上昇抑制に効果があり、都市農地はヒートアイランド現象の緩和など、国土・環境の保全の役割を果たしていうため都市農地の保全を推進する。住宅・建築物の省エネルギー化の推進、自動車からの排熱減少、公共交通の利用促進。「風の道」を活用した都市づくりの推進を図る。