熱中症チェックシートの開発と活用
掲載日 | 2021年7月21日 |
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分野 | 健康 |
地域名 | 北海道・東北(青森県) |
気候変動による影響
日本スポーツ振興センター統計情報によると、近年、学校の管理下における熱中症は、小学校・中学校・高等学校等を合わせると毎年5,000件程度発生しています。また、学校管理下における熱中症は体育・スポーツ活動中の発生が多く、複数の児童生徒が同時に症状を訴えることや時には死亡に至ることが懸念されています。
取り組み
弘前大学教育学部附属学校園(以下、附属学校園)では、2012年に熱中症対策の取組の一環として、学校における熱中症に対する重症度の「迅速な判断」と「適切な対応」のため、「熱中症チェックシート(試用版)」を考案しました。さらに青森県内の養護教諭の協力のもと、チェックシートの試用と改訂を重ね、2014年7月に全教職員が学校において児童生徒の熱中症に対応できる「熱中症チェックシート」を開発しました。
チェックシートの項目には、基本情報の他、重症度チェック(A)、応急処置(B)、バイタルチェック(C)、体の要因や発生時の状況等が含まれています(図1)。
また、チェックシートには、数多くの工夫が施されています。
- レイアウトの工夫(図1)
- 最優先とする重症度の確認から応急処置と同時にバイタルチェックを行う流れによる対処順序
- 緊急度の高い症状を見落とさないように、「III度(重症):赤」、「II度(中等症):橙」、「I度(軽症):黄」の順による3段階の分類と色分け
- バイタルチェックは、目視で確認できる項目順序
- 重症度チェック、応急処置、バイタルチェックは、時間経過がわかるよう3回分の記録形式
- チェック項目の工夫(図1)
- 簡単に短時間で記入できるチェック(☑)形式の採用
- 誰でもチェックできるようわかりやすい用語や子どもの言葉を使用
- 情報を漏れなく把握するための熱中症の症状及びバイタルサインなどの具体的な症状や発生時の状況等の記入欄の設定
- その他の症状や様子をメモするための余白の設定
- 養護教諭不在時の使用を考慮(図2)
- 裏面にチャート式による使用方法の記載
- 受診が必要な時にすぐ対応できるよう、校医等の連絡先明記欄の設定
効果/期待される効果等
雑誌「健」への掲載(2014年7月号)を契機に、全国161校の学校園による「熱中症チェックシート」活用の要望に応えました。そして、活用期間(注)終了後に質問紙による調査を実施し、全国102校園の養護教諭103名から回答が得られました。
本チェックシートの主な活用の場の回答(複数回答)として、約9割が「熱中症を疑った時の判断・対応」、約6割が「体育的行事に持参」、約4割が「教職員対象の研修や職員会議等」という結果を得ました。また、活用の目的としては、「重症度や対応を判断するため」、「症状の見落としを防ぐため」、「救急処置の記録として残すため」が其々約9割、「処置内容を確認するため」として約8割の結果を得られことから、緊急時の判断や対応の根拠として「確認」し「記録」する有用性が認められました。
また、本チェックシートは、熱中症の判断及び対応だけではなく、教職員の共通理解にも有効であることが明らかになりました。回答者のほぼ全員は、有効性を認めており、今後も活用したいというニーズがありました。
現在では全国の学校等において、保健室の対応だけでなく夏季の学校行事や各種競技大会等においても熱中症対策として活用されています。

(出典:弘前大学教育学部附属学校園の保健室ウェブページ 「熱中症チェックシート」)

(出典:弘前大学教育学部附属学校園の保健室ウェブページ 「熱中症チェックシート」)
脚注
(注)2014年7月以降の使用申込時~2015年9月30日
出典・関連情報
- 弘前大学教育学部附属学校園の保健室ウェブページ 「熱中症チェックシート」(2020年11月1日更新)
- 森菜穂子, 今井直子, 前田洋子, 淋代香織:学校における熱中症対策と熱中症チェックシートの有効性の検討, 弘前大学教育学部研究紀要クロスロード第18号, 53-62, 2014年3月.
- 中田暁代, 森菜穂子, 今井直子, 丹代菜々, 小林央美, 太田誠耕: 学校園における熱中症対策と熱中症チェックシートの活用評価, 弘前大学教育学部研究紀要クロスロード第20号, 75-84, 2016年3月.
- 独立行政法人日本スポーツ振興センター 「体育活動における熱中症予防 調査研究報告書~第2編 学校の管理下の熱中症の発生傾向~」(平成26年3月)
- 独立行政法人日本スポーツ振興センター 「学校の管理下の災害 [令和2年版] ~第二編 基本統計(負傷・疾病の概況と帳票)~」 (令和3年3月)