長野県グリーンボンドを活用した適応策の促進
| 掲載日 | 2021年8月20日 |
|---|---|
| 分野 | 自然災害・沿岸域 / 国民生活・都市生活 |
| 地域名 | 中部(長野県) |
気候変動による影響
2019年10月に日本を襲い、長野県にも甚大な被害をもたらした台風第19号をはじめ、日本で頻発する気象災害の要因は気候変動にあると言われています。気候変動は、地球上の人間社会の存続を脅かしており、この非常事態を座視すれば、未来を担う世代に持続可能な社会を引き継ぐことができないと危惧されています。
取り組み
長野県は、2019年12月に都道府県としては初めて「気候非常事態宣言」を出しており、同時に2050年の二酸化炭素(CO2)排出量実質ゼロの達成を掲げ、気候変動への取組方針として「長野県気候危機突破方針」を策定しました。こうした「緩和」と、気候変動に起因した自然災害による被害の回避・軽減である「適応」に向けた取組として、長野県は2020年度からグリーンボンド(注1、注2)を発行しています。2020年10月7日に発行条件を決定後、主に機関投資家向けに募集を行い、即日完売しました。
グリーンボンド発行により調達した資金は、長野県内のグリーンプロジェクトに充当されます。資金充当先の一つである「気候変動への適応」プロジェクトとしては、次の3つの事業があります。
- ① 交通インフラ整備:長野県は急峻な斜面を切り開いて建設した道路が多く、豪雨や台風などで地盤が緩み、落石や土砂崩落などで道路が寸断する可能性がある道路も存在しています。かかる事態を未然に防ぐために、道路法面の危険個所について防災工事を講じています(図1)。また、停電による信号機の機能停止とその結果発生し得る交通事故の多発を防止するための各種対策信号機電源付加装置の整備も提案されています。
- ② 水害対策のための河川改修:防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策事業など、長野県は豪雨や台風の影響による浸水被害を防ぐため、護岸工事や堆積土除去、支障木除去など河川改修を進めています(図2)。
- ③ 土砂災害対策のための砂防、治山、地すべり、急傾斜地崩壊対策:豪雨や台風の影響で発生する土石流や流木などの土砂災害を未然に防ぎ、住民の生命と財産を守るべく、流域全体を保全する砂防堰堤の整備を進めています(図3)。
また、上記の他にも「森林の多面的な機能の維持増進」(注3)等の適応にも資する事業にもグリーンボンド資金は充当されます。
効果/期待される効果等
必要な資金が調達できるため、適応を含むグリーンプロジェクトがより推進されます。また資金充当先の一つである「気候変動への適応」プロジェクトによって、次のような効果が期待されます。
- ① 交通インフラ整備:法面対策工事を進めることにより、災害時の道路寸断が防がれ、罹災者救助、緊急物資の輸送等に支障が生じないようになります。また、現在一部にとどまっている信号機電源付加装置の整備や、信号機に発動発電機直結型接続ケーブルの整備が推進されます。
- ② 水害対策のための河川改修:ハードな治水対策に加え、水防災意識向上のため、想定最大規模降雨での洪水浸水想定区域図の作成も進んでいます。
- ③ 土砂災害対策のための砂防、治山、地すべり、急傾斜地崩壊対策:土砂災害対策を流域の保全という観点から推進しています。土石流や流木対策に加え、再度災害防止のための緊急土砂災害対策、徐石による既設堰堤機能増進、改築などの事業を進めていました。さらに、その他の土砂災害対策に関する事業や治山事業を計画・目標にしています。

(出典:長野県総務部財政課「長野県グリーンボンドについて」)

(出典:長野県総務部財政課「長野県グリーンボンドについて」)

(出典:長野県総務部財政課「長野県グリーンボンドについて」)
脚注
(注1)<留意事項>本記事は、本グリーンボンドの取得、売却、保有等を推奨するものではありません。国立環境研究所は、当記事のあらゆる使用から生じうる、あらゆる種類の損害について、一切責任を負いません。
(注2)企業や地方自治体等が、国内外のグリーンプロジェクトに要する資金を調達するために発行する債券をグリーンボンドと呼びます。(出典:環境省「グリーンボンド発行促進プラットフォーム」)
(注3)「森林の多面的な機能の維持増進」事業の内訳:土砂災害防止機能の向上、水源涵養、温室効果ガス等の削減、生物多様性の保全
出典・関連情報