公的機関による事業者向け「熱中症対策」支援制度
掲載日 | 2025年7月10日 |
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分野 | 健康 / 産業・経済活動 |
地域名 | 全国 |
気候変動による影響
近年、気候変動の影響により夏季の気温上昇が顕著になり、熱中症による健康被害が深刻化しています。特に建設業や運輸業、製造業など、屋外や高温環境下での作業が多い業種においては、健康被害のリスクが高まるとともに、生産性の低下も懸念されています。
こうした状況を受けて、職場におけるWBGT(暑さ指数)に応じた作業時間の見直しや水分・塩分の補給、休憩の確保といった熱中症対策が取り組まれてきましたが、2025年6月1日に施行された改正労働安全衛生規則により、事業者は熱中症による健康障害の防止に向けて、「体制整備」、「手順作成」、「関係者への周知」などの具体的な対応が義務化されました(注)。
これらの義務に違反した場合には、違反の程度によって労働基準監督署による是正指導や労働安全衛生法第119条第1項に基づき、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。
取り組み
事業者は、空調設備や暑熱対策用品の導入、WBGTの測定・活用などに加えて、作業時間の調整や従業員への継続的な教育を通じ、職場において計画的かつ効果的な熱中症対策を実施することが求められます。これらの取り組みを進める際には、国や自治体の補助制度を活用することができます。
以下に、代表的な支援制度の例を紹介します。
※各制度の受給要件や詳細については、公式サイトをご確認ください。
補助(助成)制度名 (実施主体者) |
補助(助成)対象 | 対象事業者 | 補助(助成)率・上限額 |
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エイジフレンドリー補助金 (厚生労働省) |
高年齢労働者の労働災害防止のための設備改善や、専門家による指導を受けるための経費(図) | 中小企業事業者 ・1年以上事業を実施していること ・役員を除き、自社の労災保険適用の高年齢労働者(60歳以上)が常時1名以上就労していること ・高年齢労働者が対策を行う作業に就いていること |
補助率:1/2 上限額:100万円 |
業務改善助成金(厚生労働省) | 生産性向上のための設備投資などに要した費用の一部 (但し、事業所内最低賃金を一定額引き上げることが要件となる) |
国内で事業を営む中小企業・個人事業主 ・事業場内最低賃金と事業者が所在する地域別最低賃金の差額が50円以内であること ・解雇、賃金引き下げなどの不交付要件がないこと |
助成率: 4/5(事業場内最低賃金が1千円未満) 3/4(事業場内最低賃金が1千円以上) 上限額:30万円~600万円(賃上げ額および対象労働者数により異なる) |
熱中症対策ガイドライン策定等補助事業 (東京都) |
以下に係る外注・委託費、広報費、専門家指導費、直接人件費などの経費 ・業界特有の暑熱環境に即した熱中症対策ガイドラインの新規策定又は改訂 ・策定又は改訂したガイドラインの業界内への普及活動 |
次のいずれかの条件を満たす者が対象となり、一から三の順に優先して申込みを受け付け 一.熱中症対策ガイドラインの策定を計画しているエッセンシャルワーカーの事業者団体 二.熱中症リスクが高い職場であると都が認める団体 三.熱中症リスクが高い職場であると都が認める事業者 |
助成率: 対象経費の2/3 上限額:200万円 |
効果/期待される効果等
事業者は、各種補助制度を活用することで、熱中症対策にかかる費用負担を抑えながら、職場環境の整備を効率的に推進することができます。その結果、従業員の健康リスクを軽減するとともに、職場全体の生産性向上にもつながることが期待されます。

(出典:厚生労働省「令和7年度エイジフレンドリー補助金」のご案内)
脚注
(注)義務付けの対象は、「WBGT28度以上または気温31度以上の環境下で連続1時間以上または1日4時間を超えて実施」が見込まれる作業。(出典:厚生労働省「職場における熱中症対策の強化について」)
出典・関連情報