よこはま防災力向上マンション認定制度

掲載日 2025年7月31日
分野 自然災害・沿岸域
地域名 関東(神奈川県横浜市)

気候変動による影響

近年、気候変動によって台風や豪雨などの風水害が激甚化・頻発化しています。令和元年東日本台風(台風第19号)では、大雨に伴う内水氾濫などにより、首都圏の高層マンションにおいて電気設備が浸水し、居住継続が困難になるという被害が発生しました。
こうした背景から、横浜市内に多数存在するマンションにおいても風水害をはじめとする災害リスクへの対応が推進されています。

取り組み

横浜市は、災害に強いマンションの形成と周辺地域を含めた防災力の向上を図るため、防災対策を実施しているマンションを「よこはま防災力向上マンション」として4つに区分し、認定しています(注1、図1)。

  • ソフト認定:防災活動などのソフト対策を実施しているマンション
  • ハード認定:建物全体の対策を実施しているマンション
  • ソフト+(プラス)認定:ソフト認定のうち、地域組織との共同による防災訓練などの地域との防災連携が図られているマンション
  • ハード+(プラス)認定:ハード認定のうち、地域の一時避難場所を敷地内に設置するなどの地域との連携が図られているマンション

認定後のメリットとして、横浜市が認定を取得したマンションに認定証を交付し、横浜市ホームページで公表します。加えて、ハード+(プラス)認定を取得し、地域の防災力向上に資する施設等(注2)を設けたマンションは、容積率の緩和を受けることができます。また、横浜市は、認定取得を目指す管理組合等に対し、マンション防災に関する専門家団体等(マンション防災アドバイザー)を派遣し、防災マニュアルの検討やマンションの浸水対策などについての指導・助言を行っています。

ハード認定では、耐震性、浸水対策、防災倉庫、防災資機材、マンホールトイレなどについて基準が定められており、浸水対策については以下の2つの基準があります。

  • 浸水ハザードマップの想定浸水深を踏まえて浸水対策を講じること。
  • 建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン(国土交通省・経済産業省、令和2年6月)に沿って設計すること。

そして、具体的な浸水対策の手法は、大きく3つのカテゴリに分けられています(図2)。

  • 高い場所に置く(確実性の高い浸水防止効果が期待できる手法)
  • 水防ラインをつくる(浸水経路を遮断する手法)
  • 万が一の浸水に備える(浸水被害を軽減・早期復旧するための多重対策)

なお、横浜市では、ハード認定取得に向けた浸水対策の設計・計画のため「よこはま防災力向上マンション認定制度 浸水対策の手引き」を作成・公表しています(図3)。 ハード+(プラス)認定では、地域の一時避難場所、地域の浸水対策、地域共有の防災倉庫等、地域交流施設のいずれかの基準に適合することが求められます。このうち地域の浸水対策については、雨水貯留槽や雨水浸透ます、緑化など、一定の基準で敷地内に雨を留める取り組みを実施することが条件となります(注3)。

効果/期待される効果等

ハード認定取得に向けた浸水対策を実施することによって、災害発生時やその後においても避難所に頼らずに、マンション内で居住が継続できる可能性が高まります。また、ハード+(プラス)認定取得に向けた地域の浸水対策として、敷地内での雨水貯留などを行うことで、災害時のマンション内の居住継続に資するだけでなく、地域全体の河川への雨水流出抑制にも貢献することが期待されます。

よこはま防災力向上マンション認定制度認定基準
図1 よこはま防災力向上マンション認定制度認定基準
(出典:横浜市建築局 「『よこはま防災力向上マンション認定制度』制度概要説明資料」
「横浜防災力向上マンション認定制度 浸水対策の手引き」における浸水対策の具体的な手法
図2 「横浜防災力向上マンション認定制度 浸水対策の手引き」における浸水対策の具体的な手法
(出典:横浜市建築局(2023)「横浜防災力向上マンション認定制度 浸水対策の手引き」
「横浜防災力向上マンション認定制度 浸水対策の手引き」における浸水対策の検討手順
図3 「横浜防災力向上マンション認定制度 浸水対策の手引き」における浸水対策の検討手順
(出典:横浜市建築局(2023)「横浜防災力向上マンション認定制度 浸水対策の手引き」

脚注
(注1)当該制度においては、新築・既存、分譲・賃貸に関わらず、すべてのマンション(共同住宅)が認定対象とされている。
(注2)市街地環境設計制度、建築基準法第52条第14項第1号包括同意基準に基づき、地域共有の防災倉庫、地域交流施設、浸水リスクに配慮した電気室を設けた場合に容積率の緩和を受けることができる。
(注3)「ハード+認定」を地域の浸水対策で取得する場合、雨水活用技術規準」(日本建築学会 平成28年)に示された「基本蓄雨高100mm」に必要な蓄雨高を敷地内で確保することが求められる。雨水活用技術規準とは、平成28年に日本建築学会により示された雨水活用によって治水および防災に寄与するとともに、利用の促進と環境への配慮を行うため「蓄雨技術」の普及を目的とした基準。蓄雨とは、雨水活用を行うために「敷地内に雨をとどめる」ことをいう。

出典・関連情報

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