気候変動に備えた海岸防護(防災)計画

掲載日 2026年1月21日
分野 自然災害・沿岸域
地域名 関東(千葉県)

気候変動による影響

温室効果ガス排出量の増加により、21世紀の間、世界全体で大気・海洋は昇温し続け、世界平均海面水位は上昇が続くことが予測されています。温室効果ガスの排出を抑えた場合でも一定の海面上昇は免れないとされており、海面上昇による高潮・高波のリスクの増大及び海岸侵食が懸念されます。

千葉県においても、九十九里浜では侵食が著しい箇所が存在します。また、高潮・高波による港湾及び漁港防波堤等への被害等が懸念されています。

取り組み

千葉県は、平成15年8月に定めた「千葉東沿岸海岸保全基本計画」に基づき、銚子市の県境から館山市洲崎までの海岸における侵食、高波及び高潮に対する施設整備を進めてきました。そして、国による「海岸保全施設の技術上の基準を定める省令(注1)」が令和3年7月に一部改正・施行されたことを受け、気候変動による影響への対応のため「千葉東沿岸海岸保全基本計画」の計画変更を令和7年3月に実施しました。

当該計画は、「被害からの海岸の防護(防災)」・「海岸環境の整備と保全」・「公衆の海岸の適正な利用」の3つの側面からバランスの取れた総合的な海岸管理を目指す上で、さらに気候変動に伴う中長期的な海面水位の上昇や強い台風の増加などによる高潮・波浪被害の増大への対応を考慮して策定されています。

特に「被害からの海岸の防護(防災)」において、気温2℃上昇シナリオ(RCP2.6)における2100年時点の気候を想定し、防護すべき地域や防護水準などの海岸防護の目標が設定されています。この目標においては、高潮・高波、津波に対する対策として、RCP2.6の予測上昇量(0.26-0.53m)を考慮し、海面上昇量0.4mを加味した波浪の高さを防護の対象としており、例えば津波を想定した海岸保全施設の高さについて検討する場合には、朔望平均満潮位(注2)や津波によるせりあがりに、海面上昇量を加えた値を計画天端高(注3)とする必要があります(図1)。このように海面上昇量を加味した上で、当該計画には、各地域の海岸ごとに津波・高潮・高波対策を考慮した海岸保全施設等の目安高が示されています(図2)。

このような背景のもと、海岸保全施設等の整備を進める中で、手戻りのないよう順応的に段階整備することを基本とし、考慮すべきポイントとして次のことが挙げられています。

《気候変動の不確実性》
RCP2.6(2℃上昇相当)における外力の変化にも予測の幅があり、また、2℃以上の気温上昇が生じる可能性も考慮

《施設の耐用年数》
施設の耐用年数(例えばコンクリート構造物では50年)と将来予測を考慮

《被害の想定》
越流や越波による浸水想定などを考慮

《地形・砂浜の変動》
将来的な気候変動や人為的改変による影響等も考慮(地形や砂浜の変動傾向の把握に努める)

なお、海岸の防護に向けた具体的な対策の検討にあたっては、堤防等による防護だけでなく、砂浜等による面的防護(注4)など、様々な方策があることに留意が必要であるとされています(図3)。

気候変動の影響に伴う侵食については、砂浜の地形変化に影響する外力の気候変動影響の定量的な評価が現時点で難しい一方、海岸侵食は海面上昇の影響等を受けることがほぼ確実であることから、上流域から海岸への人為的な土砂供給も含めた総合土砂管理の下、モニタリングと気候変動の影響予測を組み合わせて順応的に対応していくこととされています。

効果/期待される効果等

千葉県は、2100年のRCP2.6(2℃上昇相当)における予測海面上昇量(0.26-0.53m)や生態系・自然景観の保護などを踏まえて千葉県における予測海面上昇量(0.4m)を設定し、それを考慮した防護水準で防護すべき地域での整備を進めることによって、今後の気候変動に伴う高潮等の水災害の頻発化・激甚化の被害抑制が期待されます。

海岸保全施設等の目安高の範囲(現在・将来)
図2 海岸保全施設等の目安高の範囲(現在・将来)
(出典:千葉県「千葉東沿岸海岸保全基本計画」(令和7年3月版)内 4. 海岸保全施設の整備に関する基本的な事項について

脚注
(注1)日本の海岸を守るために作られる堤防や護岸などの「海岸保全施設」について、どういう基準で作るべきか、その設計や構造、材料などの技術的なルールをまとめて国が定めた省令。令和2年に公表された「気候変動を踏まえた海岸保全のあり方 提言」を踏まえ、海岸保全を過去のデータに基づきつつ気候変動による影響を明示的に考慮した対策へ転換するために令和3年7月30日に一部改正・施行された。
(注2)朔(新月)および望(満月)の日から5日以内に現れる、各月の最高満潮面の平均値を指す。
(注3)構造物を計画通りに施工した場合の最上部の高さを指す。
(注4)人工リーフや養浜、緩傾斜護岸等の複数の施設によって、波の力を分散させて受け止める方式を指す。

出典・関連情報

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