白糠産ブリのブランド化「極寒ぶり®」

掲載日 2025年10月1日
分野 農業、森林・林業、水産業
地域名 北海道(北海道)

気候変動による影響

近年、世界的に気温上昇が原因とみられる深刻な気象災害等が多発しており、北海道においても、過去に経験したことのないような集中豪雨や猛暑等が頻発しています。また、定期的に実施されている海洋観測モニタリングのデータでは、ブリ、マンボウなどの南方系魚種の回遊が多くみられることからも、海水温の上昇が、漁業に大きく影響を及ぼしているものと推測されています。白糠町でも、ここ10年の間にサケの漁獲量が伸び悩み、ブリの揚げ量が急増しています。しかし、北海道内ではブリを食べる文化が十分に根付いておらず、これまで白糠町で水揚げされるブリは低価格で取引され、地域経済への貢献が限定的でした。

取り組み

白糠町では、ブリの付加価値を高めて消費拡大につなげるため、1匹ずつ船上で活締め(船上放血)した7キロ以上のブリを「極寒ぶり®」として商標登録し、北海道内の他地域で水揚げされるブリとの差別化を図っています(図1、図2)。

2023年には、さらなる付加価値を付与するため、「極寒ぶり®」を使用した加工商品を製造する水産加工場を町内に建設し、白糠漁業協同組合と共同で商品開発に取り組みました。この加工場の整備により、これまで一次加工や1.5次加工が中心だったブリを、直接消費者の口に入る二次加工品(そのまま食べられる状態)として提供することが可能となり、付加価値の向上が実現しました。

さらに2024年には、白糠漁業協同組合との官民連携により、日本初となる天然ブリの「鮮度保持畜養施設」を建設しました。この施設では、株式会社リバーサーが開発した「低活性活かし込み技術」を応用し、海水より塩分濃度の低い水で数日間飼育することで漁獲時のストレスを軽減し、断食飼育によって胃の内容物を排出させることで酸化を抑え、冷蔵でも1週間鮮度を保てる仕組みを実現しました。この高鮮度を維持したブリは「極寒ぶり®選熟(せんじゅく)」として、さらなる差別化を図っています。

効果/期待される効果等

これらの官民一体となったブランド化の取り組みにより、白糠町では大きな経済効果と持続可能な漁業の実現が期待されています。

かつて1kgあたり約300円で取引されていた白糠産の天然ブリの価格は、「極寒ぶり®」では1kgあたり1,200円まで引き上げられ、「極寒ぶり®選熟」では1kgあたり3,000円を目指しています。これにより、漁業の収益性が大幅に向上し、地域経済の活性化につながると考えられています。

また、「第3期白糠町創生総合戦略」においても、第一次産業の再興と振興、一次産業と連携した新たな取り組みによる雇用の創出が位置付けられており、これらの取り組みは、地域産業の活性化や新たな雇用の場の創出、さらには子育て世代の移住・定住促進にも寄与し、持続可能で魅力的なまちづくりの実現に貢献すると期待されています。

ブリを獲ってすぐに船上で活締めする様子
図1 ブリを獲ってすぐに船上で活締めする様子
(出典:北海道白糠町note「ブリ豊漁も“食べる文化ない”新ブランド「極寒ぶり®」新たな名産品に【木村漁業部】」)
獲れたての「極寒ブリ™」
図2 獲れたての「極寒ぶり®」
(出典:北海道白糠町note「ブリ豊漁も“食べる文化ない”新ブランド「極寒ぶり®」新たな名産品に【木村漁業部】」)

出典・関連情報

関連記事