水稲生育予測システム「でるた」の活用

掲載日 2025年10月22日
分野 農業、森林・林業、水産業
地域名 関東(千葉県)

気候変動による影響

千葉県内各地の年平均気温は、長期的に上昇傾向を示しており、銚子地方気象台では100年あたり1.2℃の割合で上昇しています。加えて、日最高気温が30℃以上となる「真夏日」の日数は10年当たり1.5日の割合で増加しています。

水稲においては、出穂期後20日間の平均気温が26℃を超えると、基部未熟粒や背白粒などの白未熟粒の発生  (高温登熟障害)が多くなり、等級が低下してしまいます。

取り組み

千葉県では、スマート農業推進の一環として、県内の水稲の出穂期および作業適期を予測する水稲生育予測システム「でるた(注)」を公開しています。本システムは、水稲の生育判断、作業計画の策定、生育の年次変動の把握、さらには人材育成など、さまざまな場面での活用を目的としています。

「でるた」は、県内10箇所のアメダス地点それぞれにおいて、移植日(苗を植えた日)と品種の情報から水稲の出穂期を予測し、そこから追肥や斑点米カメムシ類対策などの作業適期を計算して表示します(図1)。

また、「でるた」は二つの形式で情報を提供しています。一つは、品種と移植日を選択して予測を表示する「Webアプリ(図2)」、もう一つは、6品種の4月1日から6月30日の移植日に対応した予測を一覧で示す「一覧表(図3)」です。

効果/期待される効果等

「でるた」を活用することで出穂期の予測が可能となり、出穂期後に高温が予想される場合には、事前に高温による登熟障害を軽減するための対策を講じることができます。

さらに、千葉県職員による現地確認では、調査対象の約80%の水田において、予測された出穂期が実測値の前後3日以内に収まりました。利用者へのアンケート結果でも「予測の精度に問題がない」、「使いやすい」、「継続利用したい」など肯定的な意見が多数を占めています。

「でるた」による予測・計算方法
図1 「でるた」による予測・計算方法
(出典:千葉県「水稲生育予測システム『でるた』」)
「Webアプリ」による予測結果の例(※7/16設定
図2 「Webアプリ」による予測結果の例(※7/16設定)
(出典:千葉県農林総合研究センター 水稲生育予測システム 「でるた™」 利用マニュアル(2024年3月)
「一覧表」による予測結果の一部の例(※7/16設定)
図3 「一覧表」による予測結果の一部の例(※7/16設定)
(出典:千葉県農林総合研究センター 水稲生育予測システム 「でるた™」 利用マニュアル(2024年3月)

脚注
(注)農林総合研究センターが開発した「でるた」は、水稲出穂期予測モデルをクラウドシステム化し、推奨される水稲の作業適期の目安をパソコン、スマートフォンいずれの端末でも閲覧可能な無料のWebアプリケーションである。名称は、「穂が『出る田』んぼが予測できる」ことから、「でるた」と命名されている。

出典・関連情報

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