高温耐性アスパラガス品種「さぬきのめざめ 2021」の育成と栽培

掲載日 2025年10月15日
分野 農業、森林・林業、水産業
地域名 中国四国(香川県)

気候変動による影響

近年、長雨や局地的豪雨、夏季の異常高温など、地球温暖化を背景とする気候変動が国際的に大きな社会問題となっており、香川県の農業においても、水稲、麦、カンキツ等の品質低下、ミニトマトや花き等の施設園芸品目の品質低下や作業環境の悪化、レタスやブロッコリー等の露地野菜の栽培条件の悪化、新たな病害虫の発生など、農業生産が不安定化しています。

取り組み

香川県農業試験場では、県内で栽培している作物(野菜、花)の品種開発・育成、および栽培方法の改善、気候変動に対応した試験を行っています。

その中で、夏の高温に適応したアスパラガス品種「さぬきのめざめ2021」を育成しました。本品種は、多様な遺伝子資源の収集から、オス株とメス株を交配して種子を採り、系統評価を実施しました(注)。また、栽培方法としては、成茎の高さ2〜3m近くまで伸び伸びと生育できるよう、2m幅の広い通路を確保し、通常のアスパラガス栽培よりも疎植にし、通路側に枠板を配置した枠板式高畝栽培である「かがわ型アスパラガス栽培法」を採用しています(図1)。

さらに、西日本農業研究センターとの共同開発による片屋根新型ハウスの2連棟タイプ(愛称:NNハウス)を導入しています(図2)。NNハウスは、建築足場に使用する鋼管を使用することから、設計上では単棟及び連棟において風速37m/sまで耐えられる構造となっています。また、ハウス上部に空気が溜まらず、換気性に優れているため、ハウス内の気温が外気温と同等に保つことが可能となりました。

「さぬきのめざめ2021」は、本県で栽培されている本県育成品種「さぬきのめざめ」と比較して、以下の特性があります。

  • 春の収穫始めがやや早く、低温期の赤色(アントシアニン)の発生が少ない。
  • 夏季の高温期においても緑色が濃く、萌芽が安定し収穫量が多い。

効果/期待される効果等

「さぬきのめざめ2021」は、「さぬきのめざめ」に比べ萌芽する力が強く、収穫量の増大が期待されます。さらに、工夫を凝らした栽培方法により、作物の健全な生育が促進されるとともに、台風や強風などの自然災害からの被害軽減にも寄与します。

今後の展開としては、「さぬきのめざめ」の次世代系統や、茎枯病に強く露地栽培に適応する系統など、新たな品種の開発を目指しています。

NNハウスの内観・寸法(※令和3年3月撮影)
図1 NNハウスの内観・寸法(※令和3年3月撮影)
(出典:香川県「建築足場資材を用いた片屋根新型ハウス(2連棟タイプ)の開発」)
NNハウスの外観・寸法
図2 NNハウスの外観・寸法
(出典:香川県「建築足場資材を用いた片屋根新型ハウス(2連棟タイプ)の開発」)

脚注
(注)一つの品種や系統の評価には約5年から10年を要する。

出典・関連情報

関連記事