茨城県の新しい高温耐性米「ふくまるSL」
| 掲載日 | 2026年5月18日 |
|---|---|
| 分野 | 農業・林業・水産業 |
| 地域名 | 関東(茨城県) |
気候変動による影響
茨城県では、近い将来において水稲の収量が大きく減少する地域は予測されていない一方、白濁した白未熟米の増加といった品質の低下が既に発生しつつあり、更なる発生率の増加が懸念されています。とりわけ内陸にあたる県西部ではその発生確率が高くなると予想されています。
取り組み
近年、茨城県では、各地で高温耐性品種の開発が進み、奨励品種への採用が進んでいます。その中、高温耐性を有する品種の一つとして「ふくまる」が平成23年から準奨励品種に指定されていました。
一方で、県内では平成25年頃からイネ縞葉枯病の発生が目立つようになり、被害面積は26,400ha(平成30年)に及んでいます。防除対策として抵抗性品種の利用が有効ですが、茨城県の主要な主食用品種は抵抗性を持っていませんでした。そこで、県オリジナル品種「ふくまる」にイネ縞葉枯病抵抗性を導入した「ふくまるSL」を育成しました。「ふくまるSL」はイネ縞葉枯病多発ほ場においても発病が極めて少なく、罹病性の「ふくまる」と比べ、減収しないことから、10a当たりの販売額は6,750円多く、「コシヒカリ」からの転換では18,000円程度多くなります。また、イネ縞葉枯病はヒメトビウンカ(注1)により媒介されますが、イネ縞葉枯病抵抗性品種をまとまって作付けすることでヒメトビウンカがイネ縞葉枯病を保毒している割合の低減効果も期待されます。
「ふくまるSL」の育成経過や特性は以下の通りです。
「ふくまるSL」の育成経過
「ふくまるSL」は、「ふくまる」を母、極早生でイネ縞葉枯病抵抗性の「一番星」を父とする雑種第1代に、「ふくまる」を2回戻し交雑することにより育成した品種です。DNAマーカー(注2)を活用することで、イネ縞葉枯病抵抗性遺伝子を持ち、それ以外の染色体領域がほぼ「ふくまる」となった系統を効率的に短期間で選抜しました(図1)。
「ふくまる」と変わらない生育特性
「ふくまるSL」の生育は、元品種の「ふくまる」と同じです。出穂期・登熟期は1日早い、または同じ早生熟期であり、稈長(注3)や穂数などの生育量も同程度です。収量、玄米品質や食味は「ふくまる」とほぼ同じですが、玄米千粒重は0.4~0.7g重くなります。
イネ縞葉枯病の発病が極めて少ない
「ふくまるSL」は、イネ縞葉枯病の抵抗性遺伝子を持っています。このため、イネ縞葉枯病の多発ほ場においても、「ふくまるSL」の発病は極めて少なくなります。また、減収もほぼありません(図2)。 「ふくまるSL」は、令和3年から「ふくまる」に代わり、イネ縞葉枯病の発生地域を含む県内全域で普及しています。
効果/期待される効果等
現在茨城県では、高温耐性を有する奨励品種として、「ふくまるSL」及び「にじのきらめき」、認定品種として「一番星」を指定しています。
高温耐性品種の導入によって、高温による品質低下が著しい地域では、夏季の高温が常態化する環境下においても品質の低下が抑えられ、安定して高い1等米比率を確保する効果が確認されています。
具体的には、令和7年の高温下における「コシヒカリ」の1等米比率が46.1%であった一方で、「ふくまるSL」では80.1%、「一番星」では76.4%、「にじのきらめき」では62.7%といずれも高い品質を維持しています(注4)。

(出典:茨城県農業総合センター生物工学研究所 「イネ縞葉枯病抵抗性品種「ふくまるSL」の育成」)

(出典:茨城県農業総合センター生物工学研究所 「イネ縞葉枯病抵抗性品種「ふくまるSL」の育成」)
脚注
(注1) ヒメトビウンカとは、イネの吸汁性害虫であり、イネ縞葉枯病(イネしまはがれびょう)ウイルスを媒介する昆虫をいう。
(注2) DNAマーカーとは、遺伝子の有無を判別できる特異的なDNA配列のこと。
(注3) 稈長(かんちょう)とは、地面から穂の付け根(穂首)までの茎の長さをいう。
(注4) 農林水産省公表「米穀の農産物検査結果」より令和8年3月31日現在のデータを引用。
出典・関連情報