秋田県の高温耐性水稲品種「サキホコレ」の栽培

掲載日2026年5月19日
分野農業・林業・水産業
地域名東北(秋田県)

気候変動による影響

秋田県の年平均気温は、100年当たり(1883年から2020年まで)で約1.5℃上昇しています。また、今後秋田県の年平均気温は、20世紀末(1980年から1999年まで)から21世紀末(2076年から2095年まで)までの約100年間で、パリ協定(注1)の目標が達成された場合は約1.4℃、追加的な緩和策をとらなかった場合は約4.6℃気温が上昇すると予測されています。 こうした中、米生産においては、気温の上昇に伴い作期が前進するとともに、出穂後に高温となる影響により、米の品質低下が懸念されています。

取り組み

秋田県農業試験場では、「コシヒカリを超える極良食味品種」をコンセプトに、食味と高温登熟性の強化を目標として「秋系821」を育成しました。

「秋系821」は、いもち病(注2)に強く良食味の「中部132号」(愛知県育成)と、穂いもち(注3)に強く大粒で良食味の「秋田97号」を平成22年に人工交配し、交配から9年目の平成31年に「秋田米新品種デビュー推進会議」において新品種候補に決定され、令和2年に名称公募により「サキホコレ」と命名されました。令和3年には秋田県の水稲栽培における奨励品種として採用され、同年にプレデビューを果たし、令和4年の本格デビューに至りました。

「サキホコレ」には以下のような特徴があります。

  • 「あきたこまち」と比べ、出穂期は6日、成熟期は9日遅い(図1)
  • 稈長(注4)、穂数は「あきたこまち」並で、穂長はやや長い(図1、図2)
  • 収量や玄米の大きさ、玄米品質は「あきたこまち」並だが、玄米タンパク質含有率は低い(図1)
  • 登熟期が高温条件でも玄米の品質が低下しにくい

秋田県では、「サキホコレ」の品種特性を適切に発揮し、確かな品質で安定供給できる生産体制を確立するため、『 「サキホコレ」 高品質・良食味栽培の手引き』を作成し、生産者に配布しています。手引きの中では、品種の概要や栽培のポイント、作付推奨地域、現地事例紹介等が掲載されています。

効果/期待される効果等

秋田県では、水稲の気候変動適応策として「高温登熟耐性品種の育成」を掲げています。「サキホコレ」は、従来品種よりも成熟期が遅く真夏のピークを避けて登熟できる利点に加え、高温耐性そのものが強いため、白未熟粒の発生などによる品質低下を抑制する効果があります。 実際に、令和4年の本格デビュー以降、(一財)日本穀物検定協会の食味ランキングでは連続して最高評価の「特A」を獲得しており(注5)、秋田県産米のフラッグシップとして、産地全体を牽引することが期待されています。

サキホコレとあきたこまちの成熟期の草姿
図1 サキホコレとあきたこまちの栽培特性
(出典:秋田県農林水産部農林政策課研究推進班 「研究スポット No.42」(2023年3月)
サキホコレとあきたこまちの成熟期の草姿
図2 サキホコレとあきたこまちの成熟期の草姿
(出典:秋田県農林水産部農林政策課研究推進班 「研究スポット No.42」(2023年3月)

脚注
(注1)2020年以降における気候変動問題に関する国際的な枠組み。
(注2)いもち病は、イネの重要な病害の一つで、病原菌は糸状菌(かび)の仲間。
(注3)穂に発生するいもち病を穂いもちと呼ぶ。
(注4)稈長(かんちょう)とは、地面から穂の付け根(穂首)までの茎の長さをいう。
(注5)日本穀物検定協会の食味ランキング試験では、炊飯した白飯を試食して評価する食味官能試験に基づき実施しています。複数産地のコシヒカリのブレンド米を基準米とし、基準米よりも特に良好なものを「特A」と評価しています。

出典・関連情報

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