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- イラストで分かりやすい適応策
藻場*
*藻場:沿岸の浅海域において海藻あるいは海草が繁茂している場所あるいはそれらの群落や群落内の動物を含めた群集のこと(水産庁 2021)。
影響の要因
海水温の上昇は、藻場における藻類の種構成、現存量や藻場面積を変化させるほか、植食動物の摂食活動の活発化も藻類を減少させる。また、暴風雨の激化は、藻類の芽生えを阻害すると共に、藻体を流出させる。
現在の状況と将来予測
現在、水温の上昇による藻類の生産力への直接的な影響と、植食動物(ウニ、魚等)の摂食活動の活発化による間接的な影響によるものと考えられる藻場の減少や構成種の変化が各地で生じており、藻場面積の減少が進んでいる。
将来、海水温の上昇に伴い、温帯性の海藻の分布域縮小や北上、及び南方系の種への遷移が予測されている。
適応策**
早くから植食性魚類の食害が顕在化し、藻場回復の為の対策を実施してきた南西海域の知見を他地域でも共有し、今後も予想される海水温上昇に対して長期的な視点で適応策を講じる事が考えられる。
**複数ある藻場の衰退要因のうち、ここでは水温上昇と植食動物の影響に対する適応策について記載。
状態
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食害対策により海藻群落の回復を助ける
■ウニ対策
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■魚対策
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■利活用
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藻場の状態に応じた増殖対象種を選定・供給し、再生産できる藻場(成熟藻体)の成立を目指す
■母藻や種苗の利用
母藻の採取・設置スポアバッグ(開放型)

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■種苗・藻体の移植
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■適地の探索、高水温耐性種の選定
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「四季藻場」を藻場回復の最終目標とする場合が多いが、藻場の状態に応じ、回復しやすい目標を設定する事が考えられる
■南方系種を活かす
(春藻場)
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■小型海藻藻場の活用
植食動物による摂食の影響がみられる藻場では、ウニ対策を実施し、魚類の影響が出たら魚対策も実施する。平行して海藻の増殖を行い、藻場の再生に取り組む。
近年南方系ホンダワラ類の確認・繁茂例がみられる地域が広がっている。この春藻場はウニには弱いが魚や高水温には比較的強い特徴があり、四季藻場の再生が困難な水域でも磯焼け対策の目標に設定され、藻場の造成が進められている地域がある。
植食性魚類の被害や高水温の影響が大きく、在来の大型海藻の再生が困難な場合、高水温や魚類の食害に強いとされる小型海藻藻場(アミジグサ類等)の造成を目的とした整備が行われている地域もあり、その機能等の研究も進められている。
植食動物の侵入防止と除去が基本となる 。
①侵入防止(フェンス)
ウニフェンスは、一枚網を立てるタイプが主流になっている。時化などによる破損や流出の可能性があるため、定期的な管理が必要である。
②除去
素潜りやスクーバ潜水により、ハンマーや鉤を用いてウニを潰す方法が一般的である。ウニの生息密度は、磯焼け発生時(作業開始時)の約10分の1を目標値として設定する。1回の除去では密度がすぐに回復することがあるため、継続的な除去が重要である。
①侵入防止
小規模範囲に設置する「カゴ付き藻場礁」や小湾や港の入り口を網で仕切る「仕切り網」などが用いられる。これらは通年設置する場合と秋から初夏の限定した期間に設置する場合がある。いずれも定期的なメンテナンスが不可欠であり、特に破網による魚の侵入を防ぐことが重要である。
②除去
魚類の生態に応じて、除去手法や除去範囲を決める。除去対象となる魚の行動範囲や、い集する場所・時期を事前に把握しておくことが重要である。生態情報は「磯焼け対策ガイドライン(水産庁2021)」を参考にするとよい。刺網が一般的だが、混獲が生じない海藻を餌としたはえ縄や、養殖いけすを改良した漁具なども活用されている。
③漁業との連携
植食性魚類は定置網等でも漁獲されることから、海に戻さず水揚げしてもらう仕組みづくりが重要である。壱岐では植食性魚類の買い取り制度が設けており、除去活動の促進につながっている。
除去したウニを水槽などで畜養し、食材として利用する取組みが行われている。また、植食性魚類についても食材や加工品としての活用が注目され始めている。
海藻の新規加入等が難しい場合、人為的に海藻のタネを供給する。
①母藻利用
母藻を採取して海底に設置し、タネ(生殖細胞)の自然放出と自然着生を行うのが一般的な方法となる。
②種苗利用
人工種苗:一般的に種糸や基質に海藻が付着したものを現場へ移植する。種苗が生長し、成熟してからタネが拡散する。
天然採苗した種苗:母藻群落の直下~周辺に海藻の種を着生させる基質を設置し、自然放卵による採苗(天然採苗)を行う。
海水温が上昇する環境下でも、在来種の藻場を回復させるため、夏季の水温が低い適地(深場、河口や湧昇流の影響がある沿岸域)を探索し、藻場造成の候補地とすることが検討されている。
夏季の水温が生育限界を超える場合は、高水温耐性がより高い種を選定し、藻場造成に利用する。この場合、生態系保全の観点から周辺海域にすでに生息しているものの中から選定する。
*長崎県水産部(2018)、水産庁(2021) 及び水産庁漁港漁場整備部(2024) 参照
藻場は、アワビやイセエビなどの水産生物にとって、生息環境の提供や餌の供給源として重要である。また、生物多様性の維持に寄与するほか、窒素やリンなどの栄養塩の吸収(水質浄化作用)や二酸化炭素の吸収・貯蔵(ブルーカーボン)など様々な機能があり、重要な生態系サービスを提供していると考えられている。
進め方
【現時点の考え方】 藻場造成に当たっては、現地の状況に応じ、高水温耐性種を含めた対象種の播種・移植を行うほか、整備実施後は、海藻の繁茂状況、植食性動物の動向等についてモニタリングを行い、状況に応じて植食性魚類の除去などの食害生物対策等を実施するなど、順応的管理手法を導入したより効果的な対策を推進する(農林水産省2023より引用) 。
【気候変動を考慮した考え方・準備・計画】 各海域の藻場分布状況や磯焼け要因を踏まえて、高水温等の環境変化に対応した海藻種を用いた藻場造成手法を開発する(農林水産省2023)。
