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- イラストで分かりやすい適応策
洪水
影響の要因
気候変動により、極端な大雨の発生頻度や雨量が増加し、治水施設の整備水準を超える規模の洪水により被害を生じさせる可能性がある。
現在の状況と将来予測
近年、毎年のように日本各地で、これまで経験したことのないような豪雨により、深刻な水害が発生している(気候変動を踏まえた治水計画に係る技術検討会2021)。
将来、気候変動および人口動態も考慮した洪水被害予測の研究によると、洪水による全国の被害額は、人口減少を考慮すると今世紀末には多くの地域で減少する見込みであるが、1人当たりの損害コストは増加すると予測されている(Yanagihara et al. 2024)。
洪水被害コストの将来予測
気候変動適応センターにて和訳追記
適応策
近年の水災害による甚大な被害を受けて、気候変動により施設能力を超過する洪水が発生することを前提に、流域の全員が協働して流域全体で行う治水対策である「流域治水」を加速化・深化させる。突発的に発生する激甚な災害に対して行政の防災対策だけでは限界がある事から、住民自身も防災意識を高め防災対策を強化し、自助・共助・公助で連携して対策を進めていく事が重要である。
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■防災情報の利活用
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■ ■避難場所の確保
公共施設に加え民間施設も活用
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■要配慮者への支援
「災害派遣福祉チーム」の組成、「災害福祉支援ネットワーク」の構築
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■ ■効果的なダムの運用
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■流域の持つ保水・遊水機能の確保
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■河道の強靭化
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■輪中堤等の整備
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■不動産取引時の情報提供
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■条例等による規制
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■移転
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■広域連携
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■水害保険や金融商品の活用
事前の備えにより復旧・復興を迅速化
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■生活再建マニュアル
適応策
*適応策の詳細は自然災害・沿岸域分野の「内水」参照。
事前にタイムライン(時系列の防災行動計画)を策定し、災害時に迅速かつ連携した対策がとれるよう準備をしておく。
- 気象庁「洪水キキクル」は、危険度の高まりを5段階で色分けした地図情報を提供している(3時間先まで予測)。危険度の高まりをプッシュ型通知するサービスも行われている。
- 2026年5月出水期から、5段階の警戒レベルと防災行動との関係を明確化する新しい防災気象情報の運用が予定されている(水管理・国土保全局、気象庁2026年2月)。
公共施設の指定だけでは十分な避難場所確保が困難な場合、民間施設等を活用する事も有効であり、災害時に避難施設として使用する為の協定締結の事例等が各地で見られる。また都市の再開発事業においては、避難スペース等の整備を計画段階から誘導し、災害対策を施した街づくりを進めることが有効である。
災害時要配慮者に対する福祉支援を行う「災害派遣福祉チーム」の組成や、避難所派遣等の支援を目的とした「災害福祉支援ネットワーク」の構築等について示す『災害時の福祉支援体制の整備に向けたガイドライン』が整備され、各地で活動が進められている。
- 事前放流:国土交通省と全てのダム管理者及び関係利水者との間で治水協定を締結し(全国1,444ダム(令和5年3月時点))、洪水が予測された際に利水容量を事前に放流する取組が実施されており、水位低減効果などの治水効果が確認されている。
- 流域全体で遊水の貯留能力を高める為に、従来から行われている遊水地・調整池の整備推進、田んぼ、多目的遊水地(道路や公園等)の活用等が進められている。
- 遊水地や河道の掘削形状を工夫して生物の生息・生育・繁殖の場となる湿地環境を保全・創出し、生態系ネットワークの形成を図る取組も進められている (国土交通省 参照 2025年12月3日)。
氾濫水を減らす為に、河川管理者による粘り強い堤防(越流しても決壊しにくい堤防)整備、河道掘削や引堤等、従来からの取組の更なる強化が進められている。
従前より行われてきた輪中堤(ある特定の区域を洪水の氾濫から守るために、その周囲を囲むようにつくられた堤防)や二線堤(本堤の背後に作られ、万一本堤が決壊した場合に被害の拡大を防ぐ)等の整備により氾濫水を制御し、浸水範囲を特定の区域外に限定する。
不動産取引時に、宅地建物取引業者がハザードマップにおける取引対象物件の所在地(水害リスク情報)を説明することが重要事項説明の対象項目として追加、義務化されている(国土交通省 参照2025年12月3日)。
水害リスク低減の為に、各種法律において建築に関する規制や勧告、誘導等の制度が整備されているほか、市町村等独自で条例に基づき対策を講じている事例(滋賀県等)も見られる(国土交通省2020)。
既に水災害リスクの高い地域では、防災・減災対策を実施したとしても一定のリスクが残る場合や、移転等の取組を促進する方が適切な場合も想定される(「水災害対策とまちづくりの連携のあり方」検討会 2020)。平時から移転の取組を進めていく防災移転や、まちづくりの一環としての移転の促進という軸足に立った「防災移転まちづくり」が進められている(国土交通省 都市局 都市安全課 2025)。
平時より流域治水協議会や大規模氾濫減災協議会等を活用し、災害時における防災行動とその実行主体を時系列で整理するタイムラインを広域で作成すると共に、災害時は関係者が連携し、TEC-FORCE活動等の支援も含め迅速に復旧・復興活動を行う。
全国一律であった水災料率*について、水災リスク**に応じて5区分に細分化された。この区分により、地域間の水災リスクの違いにより保険料に差を生じることになった。
*火災保険料を計算するにあたって、水災リスクを保険料に織り込むためのもの。**河川氾濫、内水氾濫、土砂災害などのリスクを別々に見込んだうえで、水災リスクとして一つにまとめたもの。
(以上、損害保険料算出機構 2023)
実際に水災害にあった場合に必要な手続きや片づけ方法等をまとめたマニュアルが公開されている(震災がつなぐ全国ネットワーク・編等)。事前に目を通す事で、万一の被災時の初動や生活再建を早める事が出来ると考えられる。
中・長期(ハード対策)
中・長期(ハード対策)
*【ダムの区分と目的】治水ダム:洪水調節 利水ダム:流水の正常な機能の維持、農業用水、都市用水、発電 多目的ダム:治水、利水の目的を兼ねる
人口減少や産業構造の変化に伴う水需要の変化や、カーボンニュートラルやネイチャーポジティブの実現など社会経済情勢が大きく変化していることに加え、気候変動の影響による水災害の激甚化・頻発化や渇水リスクの増大、水インフラの老朽化など、対応すべき課題は多様化かつ深刻化(国土審議会・社会資本整備審議会2025より引用)しており、流域全体で俯瞰的視点をもって連携した取組を進めることが重要と考えられる。
進め方
【気候変動を考慮した考え方】 気候変動の影響により激甚化・頻発化する水災害に対応するため、流域の関係者全員が協働して、①氾濫をできるだけ防ぐ対策、②被害対象を減少させるための対策、③被害の軽減、早期復旧・復興のための対策を総合的かつ多層的に取り組む「流域治水」を加速化・深化させる。(以上国土審議会・社会資本整備審議会2025より引用)
【気候変動を考慮した準備・計画】 気候変動の影響を踏まえ、河川整備基本方針や河川整備計画の見直しを進め、計画に位置づけられた対策を着実に進める。特定都市河川においては、流域水害対策計画に位置づけられた河川整備、雨水貯留浸透施設の整備などの対策を着実に進める。 (以上国土審議会・社会資本整備審議会2025より引用)
