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- イラストで分かりやすい適応策
マツ材線虫病
影響の要因
マツ材線虫病は明治末に西日本に侵入し、その後被害域が拡大。近年の気温上昇により、媒介昆虫であるマツノマダラカミキリが成虫となるのに必要な気温日数を満たす地域が増えてきている。
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現在の状況と将来予測
全国的なマツ材線虫病被害量(被害材積)は減少傾向にあるが、東北地方や高標高域、北海道におけるマツ材線虫病被害の危険度が高くなっている(現在、46都道府県で被害が発生)
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将来は気温が約3度上昇すると、北海道もマツ材線虫病被害の危険度が高くなると予測されている。
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適応策
マツ材線虫病から松林を保全し、松林として維持するにはコストがかかる。保全すべき松林への感染を重点的に予防し、それ以外は樹種転換していく適応策が考えられる。
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(可能な場合)
(予防伐倒)
健全なマツの幹下部にあらかじめ薬剤を注入し、マツノザイセンチュウの増殖を防ぐ事で感染を予防する(感 染木には適用不可)。薬剤散布よりもコストがかかる為、保全すべき松林の中でも面積を限って対象林(有名な観光資源等)を選ぶ必要あり
空中や地上から健全なマツに 薬剤を散布し、枝を食害するマツノマダラカミキリの成虫を駆除する事で被害を予防する。道からの距離や面積に応じて地上散布→無人ヘリ→有人ヘリを選択できる。
被害木を伐採した後、薬剤によるくん蒸(丸太を集積・シートで覆 いくん蒸)、破砕、木質バイオマスとしての利用等を実施する事で、 樹体内のマツノマダラカミキリ幼虫を駆除し、健全木への被害を防ぐ。
保全すべきマツ林以外の周囲のマツ林は、将来的な感染源となるのを防ぐため伐採してマツ以外の樹種に転換する。
【保全すべき松林】マツ材線虫病に対する抵抗性品種のマツ苗木を植栽する。
【保全すべき松林以外】 マツ以外の樹種を植栽し、森林成立を早める事で森林機能を維持する。周囲に母樹となる広葉樹が多くみられる場合は天然更新による広葉樹林化も考えられる。
【冬】
マツノマダラカミキリ成虫が羽化する2~3ヶ月前に注入しておき 、 松全体に薬剤を行き渡らせる
【5-7月頃】
マツノマダラカミキリ成虫がマツから羽化脱出する直前に散布
【秋-春】
マツノマダラカミキリ幼虫が成虫となり羽化脱出する前に実施。
被害地域及び周辺地域はマツノマダラカミキリが羽化脱出する 6-9月を避ける。その他の地域 は通常の施業。
樹種に応じて適切な植栽時期を選定する(マツの場合は根の活着や植栽後の成長を 考慮すると春植えが望ましい)。
1回の注入で1〜7年程度効果が持続(仮道管の目詰まりを防ぐ為、 注入位置を変えながら2〜3回を限度とする)。
散布は毎年必要。被害発生段階が軽微(侵入初期)な場合も、感染木の伐倒駆除と組合せて拡散防止する。
伐倒木内の幼虫に対して駆除効果が高く、適切な方法・時期に実施された場合の駆除効果はほぼ100%
(方法・時期を誤ると効果はない)。
感染源となる樹木が無くなる為、 効果は高い
マツ材線虫病の対象木が無くなる為、効果は高い。
薬剤1本2500円程度(出典:四国森林管理局(令和2年4月1日以降))。
胸高直径10〜15cmで1本、胸高直径25〜30cmで3〜4本程度必要(薬剤により異なる、別途諸経費等必要)
5〜15万円程度/ha
(コストは有人ヘリ<無人ヘリ<地上散布)
(出典:農薬の空中散布検討連絡会議2011)
約9万円/10本(出典:長野県林務部森林づくり推進課 2018)。
伐採木のサイズが大きい程、処理に時間を要する
通常の施業と同様
通常の施業と同様
サイズや施工条件等にもよるが、1例として2分半〜3分程度/薬剤1本(1~2人で作業)
(出典: 石川県農林総合研究センター林業試験場2017)
地上散布は約3ha/日
無人ヘリは約16ha/日
有人ヘリは無人より広範囲
(出典:秋田県農林水産部森林整備2005)
サイズにより異なるが、枯損木伐倒 は生立木より時間を要する傾向。
通常の施業と同様
広葉樹造林の例:歩掛約20~30人/ha程度(1000~3000本/ha)
(出典:東京都農林水産振興財団 2021)
適応策の進め方
【現時点の考え方】
マツ材線虫病は広域で被害が発生している一方、その原因及び対策に関して多くの知見が蓄積されている。特に被害拡大の最前線である東北北部及び高標高域に残されたマツ林の保全が重要。 既被害地では、被害発生段階や森林の目的に応じて対策の選択・継続を進める事が望ましいと考えられる。
【気候変動を考慮した考え方】
マツノマダラカミキリは越冬後の日平均気温11~13°Cの日が積算200日を超えると成虫になる事が知られている(通常は1年1代)。今後の気温上昇に伴い200日を超える地域が更に北上・ 高標高域化すると想定されている。
【気候変動を考慮した準備・計画】
各都府県でマツ材線虫病に対する方針や防除マニュアル等が策定されており、それらが対策の基本となる。マツ材線虫病の被害は年間数km拡大する為、既存の対策協議会等を活用して引き続き情報共有に努め、基本的には被害エリアが近接してきたら準備を始める事が考えられる。一方、偶発的に車等で運ばれ、2km以上離れている地域で散発的にマツ材線虫病が発生する事例も見られる事から、積算200日を超えているエリアは注意が必要である。また、寒冷地では積算200日を超えていても成虫になるのに2年を要する場合があり、被害拡大スピードも温暖域に比べ落ちる事から、同じ県内でも監視体制の強弱をつけ効率的な対策を行うことが考えられる。