「気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)」は、気候変動による悪影響をできるだけ抑制・回避し、また正の影響を活用した社会構築を目指す施策(気候変動適応策、以下「適応策」という)を進めるために参考となる情報を、分かりやすく発信するための情報基盤です。

National Grid Gas
ナショナル・グリッド・ガス

ガス輸送・ガス配給に係る主要な設備及び、業務活動ごとの気候変動影響のリスク評価

掲載日 2016年12月2日
分野 自然災害・沿岸域 / 産業・経済活動 / 国民生活・都市生活

会社概要

ナショナル・グリッド・ガスは、英国において電力・ガスのインフラ事業を行うナショナル・グリッド・グループの中核企業である。ガス輸送及びガス配給を主な事業活動としており、英国内のおよそ130万世帯・学校・オフィスにガスを供給している。

ナショナル・グリッド・ガス

適応に関する取組の概要

気候変動影響のリスク評価の手法

気候変動影響のリスク評価にあたっては、英国気候予測2009(UK Climate Projection 2009:UKCP09)の2080年までの最悪シナリオの予測結果を使用している。また、雷や強風、雪などの事業活動に影響を与える可能性がある気象現象等を考慮して、気象局(Met Office)の気候変動リスク評価結果や、自社の技術者の知見・経験に基づき、以下のようにシナリオが設定されている。

【UKCP09のシナリオ】

  • 夏季の平均気温が2080年までに最大で8℃上昇
  • 強雨の頻度が2080年間までに最大で3.5倍増加
  • 海面水位が2080年までに最大で43cm上昇

【気象局のシナリオ】

  • 雷の頻度の増加
  • 強風の頻度の増加
  • 雪や雹、凍結の頻度の増加
  • 洪水の頻度の増加

【自社の技術者が設定したシナリオ】

  • 沿岸浸食の増加
  • 地盤沈下の増加

リスク評価は、これらのシナリオが、以下のような、事業活動であるガス輸送とガス配給に関連する主要な施設に与える影響と、主要な日常業務に与える影響に対して行われている。

【ガス輸送に関連する主要な施設】

  • ガス輸送設備(配管)
  • ガス輸送設備のうち、河川を横断する設備
  • ガスターミナル
  • コンプレッサー・ステーション
  • 液化天然ガス貯蔵施設
  • 地表設備

【ガス配給に関連する主要な施設】

  • 地域のガス輸送システム
  • 配給システム
  • ガス圧縮装置
  • 管理システム及び遠隔モニタリングシステム

【主要な日常業務】

  • 緊急時の対応
  • メンテナンス
  • 投資及び修理
  • 管理センターの運営
  • 事務所内の従業員(問い合わせ窓口を含む)

気候変動影響のリスク評価結果及び、結果の取りまとめ方法

リスク評価の結果は、下表のように取りまとめられている。表中、「緑はリスクがない」、「黄色は一定のリスクが確認できる」、「橙色は情報が不足しており、評価ができない」、「赤色は重大なリスクがある」事象を示している。

表1. リスク評価結果の取りまとめ表(ガス輸送業務の例)
表1. リスク評価結果の取りまとめ表(ガス輸送業務の例)
縦は関連する主要な施設及び主要な業務、横はUKCP09のシナリオ、気象局のシナリオ、自社設定のシナリオを示している。

評価の結果、ガス輸送、ガス配給共に、重大なリスクがある事象はなかったが、一定のリスクが確認できる事象としては、以下が挙げられている。

【ガス輸送に関して特定されたリスク】

  • 沿岸浸食の増加により、ガスの輸送に必要な設備、特に配管設備に影響を与えるリスク
  • 気温上昇により、ガス供給の安全性に影響を与えるリスク。特に、コンプレッサー・ステーションは、気温上昇状態での運用が想定されずに設計されている。
  • 洪水の増加により、コンプレッサー・ステーションに被害を与え、ガス輸送に障害が及ぶリスク

【ガス配給に関して特定されたリスク】

  • 沿岸浸食の増加により、地域の配管に影響を与えるリスク。配管に障害が生じ、ガスが放出されたり、地域のガス供給に影響を与える可能性がある。
  • 洪水の増加により、ガス圧縮装置や管理システムに影響を与え、供給ロスにつながるリスク
  • 地盤沈下の増加により、ガスが放出されたり、ガス供給に影響を与えるリスク