スジアオノリの陸上養殖

株式会社南伊勢マリンバイオ

業種:漁業

掲載日2026年5月22日
適応分野農業・林業・水産業

会社概要

株式会社南伊勢マリンバイオは、2020年4月に三重県南伊勢町にスジアオノリの陸上養殖工場として創立した。当社では、海面養殖から陸上養殖への養殖方法の変更だけにとどまらず、陸上で養殖することの利点を生かして、”冷風乾燥による香り、色差計の管理による色彩、塩分を控えたノリの味”でトリプルAの品質を目指すとともに、食品メーカーに原料を供給するサプライヤーとしての工場運営を基本に掲げている。

気候変動による影響

近年、スジアオノリは、海面養殖の海苔(黒海苔、アオサ)と同様に、気候変動に伴う海水温の上昇や栄養源の不足から、生産量が激減している。このため、最盛期には国内生産量が年間150トン以上出荷されていたと言われる天然スジアオノリも、近年では30~40トンまで激減している。また、収穫量が減少したことで価格が高騰し、食品メーカーなどでは代替品、或いは輸入品へのシフトも始まっている。

適応に関する取り組み

当社では、気候変動等の影響を受けにくい地下海水を利用した陸上養殖によってスジアオノリの養殖を行っている。当社の陸上養殖では、以下のような取組を実施している。

・養殖情報のモニタリング

スジアオノリの育成に必要な育成環境データ管理として水槽の種類ごとの給水・排水温度データ、累積水温データ、気温、湿度、日射量、累積日射量データを常時監視し、クラウドモニタリングシステムによりデータ管理を行っている(図1)。本データは、季節や気候に応じ、きめ細かなオペレーションを行うために活用している。

加えて、品質向上と安定的な生産に向け、地下海水の水質(pH、塩分、電気伝導率(EC)、全窒素、全リン、鉄、マンガン、一般細菌、大腸菌等)、水槽水の栄養要素の濃度確認など、様々なデータ管理で養殖場の運営を行っている。

・品質管理

当社では、スジアオノリ本来の香りと味を顧客に知ってもらうために、客観的な社内の管理項目とその目標値を定め、出荷するノリが年間を通じ、一定の品質を保つように取り組んでいる。

①洗浄水塩分管理
スジアオノリは、香りと味が最大の特徴である。塩分による磯の香り・味ではない、スジアオノリの本来の香りと味覚を知ってもらうため、洗浄水(水道水)と地下海水の混合割合をデジタル流量計で管理している(図2)。具体的には、出来上がった海苔の溶出試験の値としてナトリウム1000㎎/L以下、塩素イオン4000㎎/L以下を目標値とし、海水が持ち込む塩分を管理している。また、年に3回以上は完成品の塩分濃度を計測している。

②乾燥後の水分量管理
スジアオノリ特有の豊潤な香りを大切にするため、乾燥の際は冷風乾燥を行っている。しかし、乾燥後にも多少の水分を含んでいる。必要以上に水分が含まれることによるスジアオノリの香り・色落ち防止のため、乾燥後の水分量を計測し、データ管理を行っている。当社では、乾燥後製品の水分含有量を10%以下にすることを目標値に設定している。

③製品の色彩管理
スジアオノリの商品価値を決める重要な要素として色味があり、色の濃淡が商品価値・市場価格に大きく影響する。そのため、乾燥後のスジアオノリは、色差計を用いて色彩を数値管理し、社内基準をクリアした製品を商品化している。色差計(コニカミノルタ製)を用い、色味が強い「緑~深緑(b<20)」を目標値に設定している。

④金属検出機による安全性確認
地下海水を用いた陸上養殖では、砂でろ過された海水を使用しているため、不純物や異物が混入することがほとんどない。特に釣り針などの金属が混入する可能性は極めて低いが、安全性を考慮して出荷する全ての製品を金属検出機でチェックしている。これにより、目視では見過ごす可能性のある小さな金属も検出し、安全性を確認している。

⑤養殖工程のトレーサビリティシステム
胞子を採るための母藻、培養シャーレ、成長段階に応じて移槽する各育成水槽に至るまでの全工程で、どのような環境で生育されたのかロット単位でデータを管理している。これは、万が一品質異常が発生した場合に、同じ生育環境にあった製品をいち早く特定し回収できる体制とするために行っている。

また、当社では、出荷梱包時に貼付する製品ラベルには全てQRコードによる識別番号を記している(図3)。異常時だけでなく製品個別のお問い合わせについても識別番号からデータに基づく情報提供ができるようにしている。

効果/期待される効果等

地下海水を利用した陸上養殖を行うことによって、気候変動による海水温上昇や栄養塩不足など、従来の海面養殖が直面するリスクを回避し、スジアオノリの安定生産を実現できる。これにより、国産品の価格が安定し、ユーザーのスジアオノリ離れを防止するとともに、香りの良いスジアオノリ文化を守っていくことが期待される。 また、データに基づいた品質管理とトレーサビリティシステムは、スジアオノリの安全性と信頼性を高めることに繋がっている。

モニタリングシステムのイメージ
図1 モニタリングシステムのイメージ
洗浄水(水道水)と地下海水の混合割合を計測するデジタル流量計
図2 洗浄水(水道水)と地下海水の混合割合を計測するデジタル流量計
出荷梱包時に貼付する製品ラベルとQRコード
図3 出荷梱包時に貼付する製品ラベルとQRコード
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