大阪国際空港および関西国際空港の浸水被害対策
関西エアポート株式会社
業種:サービス業(他に分類されないもの)
| 掲載日 | 2025年8月27日 |
|---|---|
| 適応分野 | 自然災害・沿岸域 / 国民生活・都市生活 / 産業・経済活動 |
会社概要

関西エアポート株式会社は、2016年4月にコンセッション方式(注1)により、政府100%出資の新関西国際空港から空港運営権を引き継ぎ、関西国際空港および大阪国際(伊丹)空港の運営を行っている。民間ならではの知見を活用し、安全安心な空港運営、快適なサービスの提供などに取り組んでいる。
気候変動による影響
大阪国際空港とその周辺地域では、大阪国際空港の滑走路、エプロン(注2)などの拡張や猪名川流域の宅地開発によって雨水流出量が増大している。そのため、集中豪雨(1994年、1997年、1999年)が生じた際には、空港ターミナル施設及び空港周辺住宅地が浸水するなど甚大な被害が度々発生した。また、関西国際空港においては、2018年の台風21号によって生じた高波などによる浸水被害は、空港運営に大きな影響を与えた。
気候変動による大雨、短時間強雨の発生頻度、及び大型台風の発生は増加しているため、浸水被害リスクへのさらなる対策が必要である。
気候変動リスクに関する取組
関西エアポート株式会社は、安全性への取り組みの一環として、大阪国際空港及び関西国際空港において、集中豪雨等への対策を実施している。
【大阪国際空港】
⚫︎集中豪雨対策
浸水被害を軽減するため、排水能力(1時間で49㎜)を超える必要水量を一時的に貯留する雨水貯留管施設(図1)の整備を国及び大阪府によって2007年に完了している。本施設は、貯留管の内径が約5.8m、全長は約1.8kmあり、約45,000㎥の水を溜めておくことができる。水路の水位が上がると、雨水が本施設へ流れ込み、溜まった水は幹線排水路の水位が下がるのを待ってポンプで水を汲み出し、幹線排水路へ流す仕組みとなっている。また、さらなる対策として、新たに緊急放水路等の整備を2021年5月に完了させた(図2)。緊急放水路は、内径が1.2m、全長は約460mあり、流入した水は道路・駐車場エリアよりも広いエプロンエリアへ流す仕組みとなっている。緊急放水のアラートは、路内の水位を監視して自動的に発信し、アラートに基づいて旅客ターミナルビル等における止水対策を迅速に実施している。
これらにより、1時間に133.5mmの既往最大クラスの豪雨の際に旅客ターミナルビルが浸水するリスクを解消した。
【関西国際空港】
⚫︎集中豪雨対策
雨水をスムーズに海へ流出させるため、雨水用の排水ポンプを2001年頃から順次設置を進め2005年6月に10箇所すべての設置を完了させた。さらに、2018年の台風21号来襲時に排水施設が被災したことを受けて、空港機能の早期復旧を可能とするため、排水ポンプの電源設備のシェルター化や大型ポンプ車の導入、移動電源車の導入を2019年に実施した。
⚫︎台風による越波防止対策
大阪湾で記録が残っている最高の潮位(第2室戸台風を想定)の際に、50年に一度に相当する高波が来襲しても、護岸を越える波が抑えられるような高さまでの嵩上げを実施した(図3)。その後、2018年台風21号による浸水被害状況を含む近年の気象変化等や空港島の沈下量を踏まえ、設計波(50年確率波)を見直した上での高潮・高波に対する護岸の嵩上げの実施と、護岸の前面で波を砕く機能を発揮させる消波ブロックの設置を2021年10月に完了させた(図4)。
⚫︎その他浸水対策
重要な空港機能の維持・確保を図るため、電源設備等の地上化や止水板の設置、水密扉の設置等も実施している。
効果/期待される効果等
空港という社会インフラ機能を強化することで、豪雨や大型化した台風等の気候変動により受ける影響を軽減し、災害発生時の関西経済への影響を最小限に抑えることが期待されている。




脚注
(注1) 利用料金の徴収を行う公共施設について、施設の所有権を公共主体が有したまま、施設の運営権を民間事業者に設定する方式のこと。(出典:内閣府「公共施設等運営事業(コンセッション事業)」)
(注2) エプロン:旅客の乗降、貨物の積み降ろし、燃料補給及び整備点検等の航空機が駐機するための施設。
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