NbS 自然と適応データベース
~自然の機能を活用した気候変動適応策に関する研究・実践事例集~

このデータベースは、気候変動に伴う社会課題の解決と自然資本保全を両立させる取り組み、および自然の機能を活用した分野横断・部局横断的な気候リスク対策の取り組みを促進することを目指し、基礎的な情報提供を行うことを目的に作成しております。

地域で実践されている自然の機能を活用した気候変動適応策や関連研究の情報を整理・収集したものです。実践事例だけでなく研究プロジェクトや情報基盤、緩和策を含む適応策を掲載しています。また気候変動適応への効果が期待される分野(農林水産業、水環境、防災、暑熱・健康など)に応じた検索も可能です。

研究機関や自治体、企業、個人など、気候変動適応や自然資本の保全に取り組むすべての方々に向けた基礎的な情報提供ツールとして、分野横断的な連携や実践の促進に貢献することを目指しています。

※気候変動適応の研究会「NbSと気候変動適応分科会」の活動の一環として、自然の機能を活用した気候変動適応の地域の取り組み事例および関連研究情報をデータベースとしてまとめました。
今後も継続的に更新していく予定です。
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No 事例名称 実施場所
(都道府県)
実施場所
(特定地域)
事例の種類 概要 気候変動適応への効果が期待される分野(◎、 ○) 気候変動適応以外の効果/キーワード 出典 事例の主体
農林水産業 水環境・水資源 自然生態系 防災 健康・暑熱
1 生態系保護のための狩場山周辺の保護林拡充 北海道 狩場山周辺 実践 北海道南部狩場山周辺における保護区見直し 林野庁ウェブサイト「狩場山周辺の保護林拡充について」 林野庁北海道森林管理局等
2 クモヘリカメムシの分布域の実態把握とモニタリング体制の整備 宮城県 実証・研究 クモヘリカメムシは登熟初期の加害はしいなや不稔粒を、登熟中期以降の加害は斑点米を発生させるため、多発した場合に被害が増大する恐れがある。太平洋側におけるクモヘリカメムシの生息北限は宮城県南部とされていたが、温暖化の影響による分布拡大が懸念されていたため、県北部も含めて県内におけるフェロモントラップ調査を行い、発生実態を確認した。調査の結果、仙台市沿岸及び、厳寒期の気温から発生の可能性が低いと想定されていた北部の内陸部(大崎市・栗原市)に分布域を拡大していた。また、クモヘリカメムシ多発ほ場における特徴として、水田内に越冬世代成虫が侵入した後に幼虫の発生が見られ、8月下旬~9月中旬に第1世代成虫が発生していた。 宮城県ウェブサイト「令和4年版宮城県環境白書資料編~本編第2部第5章、すべての基盤となる施策関係資料~P166」 宮城県古川農業試験場
3 温暖化によるイネ紋枯病の被害予測と被害軽減対策 宮城県 実証・研究 温暖化により今後被害の増加が懸念されるイネ紋枯病について、1kmメッシュ気象情報とイネ紋枯病シミュレーションモデル(BLIGHTAS)を利用してほ場の発病株率を面的に推定することにより、迅速かつ広範囲に防除要否を判断できる防除技術を開発した。また、2℃気温上昇を想定した処理を行い、高温条件下での紋枯病発病程度を確認し、防除体系について検討を行った。調査の結果、生育初期から高温で経過した場合、イネ紋枯病は初発期から発病株率が高くなり、収量が低下することを確認した。1kmメッシュ気象情報とBLIGHTASを組合せることで、紋枯病の発病株率を概ね予測できることを確認した。紋枯病を対象とした殺菌剤を育苗箱処理した場合の発病株率を予測する推定式を明らかにし、これらを組み込んだ新しい防除体系の考え方を提案した。 宮城県ウェブサイト「令和2年版宮城県環境白書 資料編~本編第3部第5章 すべての基盤となる施策 関係資料~P166」 宮城県古川農業試験場
4 海岸防災林の防風や防潮、生物多様性の向上等への貢献 宮城県 仙台市 実践 東日本大震災の津波によって失われた海岸林に対し、さまざまな関係機関が再生に向けた取り組みを進めている。海岸防災林は、津波被害軽減だけでなく、日常の風や飛砂の軽減といった生活環境保全に役立っており、台風等気象災害発生時における防風や防潮のほか、生物多様性の向上等への効果が期待される。 環境防災教育 宮城県仙台市
5 気仙沼湾における藻場モニタリング 宮城県 気仙沼湾 実証・研究 宮城県では、海藻群落の衰退(磯焼け)が生じ、海藻を餌料とするウニ、アワビの身入りに深刻な影響を与えている。気仙沼湾の一部の漁場でも同様の問題を抱えており、地元漁業者から藻場や底生生物の分布を把握する調査への要望が挙がっている。そこで、AI画像認識技術を用いた調査方法の確立に取組み、磯根対策やウニ蓄養事業を行う漁業者に画像・映像を使用したモニタリング手法の普及を図ることで、磯根資源回復に係る取組を推進する。 磯焼け、AI 宮城県ウェブサイト「宮城県水産試験研究令和4年度成果要旨集」 宮城県水産技術総合センター気仙沼水産試験場
6 高水温耐性ワカメ開発事業 宮城県 実証・研究 近年の秋季の海水温低下の遅れにより、ワカメ養殖期間の短縮による生産量の減少が懸念されている。このことから、生産現場からは高水温耐性のある種苗等が求められている。宮城県内の高水温・低栄養塩濃度となる環境下に生息していた天然ワカメからフリー配偶体を採取し、交配種苗を作出して培養試験に供したところ、高水温および低栄養塩濃度への耐性を持つことが認められた。また、この高水温耐性系統に、優れた生長を示す別系統を交配することで、交配種苗の生長が改善されることが示唆された。今後は漁場での養殖試験を実施し、種苗の性質と実用性について検証を進める。 高温耐性、育種、養殖 宮城県ウェブサイト「宮城県水産研究報告 第24号」 宮城県水産技術総合センター気仙沼水産試験場
7 海水温上昇に対応した持続的養殖探索事業 宮城県 実証・研究 宮城県沿岸域において海水温の上昇傾向が明瞭になっている。このため、新たな養殖種(ヒジキ・アカモク等)の量産化の可能性を探るとともに、ブルーカーボン効果に資するための海藻類(アラメ等)の増養殖技術開発を行う。 海水温上昇 宮城県ウェブサイト「宮城県水産試験研究令和4年度成果要旨集」 宮城県水産技術総合センター、宮城県水産技術総合センター気仙沼水産試験場
8 持続可能なみやぎの養殖振興事業 宮城県 実証・研究 海象・気象が著しく変動する環境下において、安定した生産体制と生産物の高品質化による収益性の高い養殖経営の実現に向けた取組を推進する。 海象・気象変動、高温耐性種、新養殖種 宮城県ウェブサイト「宮城県水産試験研究令和4年度成果要旨集」 宮城県水産技術総合センター、宮城県水産技術総合センター気仙沼水産試験場
9 持続可能なみやぎの漁場環境づくり推進事業(漁場環境保全対策) 宮城県 実証・研究 海水温の顕著な上昇傾向などに起因する斃死等の原因究明や対策に迅速に対応できるように、水質・底質等の漁場環境の継続的な把握を行い、本県沿岸漁業の健全かつ持続的な発展を図るもの。また、東日本大震災による漁場環境への影響も長期的に把握し、適正な漁場環境の保全に資する。 海水温上昇、貝毒 宮城県ウェブサイト「宮城県水産試験研究令和4年度成果要旨集」 宮城県水産技術総合センター、宮城県水産技術総合センター気仙沼水産試験場
10 水産環境整備事業 宮城県 実証・研究 近年、宮城県沿岸では、海水温の上昇やウニ類の食害等による「磯焼け」が認められ、エゾアワビをはじめとする磯根資源の減少が懸念されており、分布状況の把握が不可欠である。エゾアワビについては、平成 29 年度から放流が再開され、令和 2 年度から漁獲対象として加入していると考えられるため、放流効果の基礎データ収集を目的として調査を行う。また、干潟造成にかかる事業効果を確認するため、造成干潟におけるアサリ生息密度調査を実施する。 磯焼け 宮城県ウェブサイト「宮城県水産試験研究令和4年度成果要旨集」 宮城県水産技術総合センター、宮城県水産技術総合センター気仙沼水産試験場
11 漁場探索・海洋観測調査事業 宮城県 実証・研究 近年、宮城県海域では親潮の北偏傾向、黒潮系暖水の強い波及など海流の変化による海況変動が著しく、秋季のサンマ、イカ、春季のコウナゴ及びオキアミなど、冷水性の重要魚種の漁獲量が著しく減少している。一方でこれまでほとんど水揚げのなかったタチウオ、アカムツ等の暖水性魚種は増加傾向にあるが、これら新たな魚種の漁場形成に関する知見は乏しく、効率的な操業のためには調査と情報提供が必要である。また、近年資源が比較的安定しているマイワシ、カタクチイワシシラス等の漁場探索調査について、漁船漁業者から強い要望があるため、宮城県漁業調査指導船「みやしお」及び「開洋」により実施する。 暖水性魚種、冷水性魚種、未利用魚 宮城県ウェブサイト「宮城県水産試験研究令和4年度成果要旨集」 宮城県水産技術総合センター
12 大崎耕土の伝統的水管理システムと居久根の生物多様性基盤としての機能 宮城県 大崎市 実践 宮城県大崎地域の1市4町の農地は「大崎耕土」として、季節風「やませ」による冷害や洪水、渇水対策のため、ため池や遊水地の整備や農業における水管理の工夫が受け継がれている。「蕪栗沼・周辺水田」やため池は、水源保全と治水の両面に役立つだけでなく、マガンの越冬や希少な淡水魚類などの生息地としても機能している。この地域の屋敷林である「居久根」は防風林や食材の供給点としての機能だけでなく、生物多様性を支える基盤としての機能も有している。 農業振興 宮城県大崎市
13 久慈川水系流域治水プロジェクト ~本川及び支川の河道掘削、堤防整備、霞堤整備等により、令和元年東日本台風に対する再度災害を防止~ 栃木県・茨城県・福島県 久慈川 実践 久慈川水系は、上流部は山間狭窄部、下流部は河岸段丘沿いに氾濫原が広がる特性を踏まえ、河道や霞堤の整備、ダム事前放流、土地利用・住まい方の工夫の他、流域の流出抑制対策などの取組を一層推進することにより、流域における浸水被害の軽減を図る。久慈川流域には奥久慈県立自然公園や5つの県立自然公園が指定されており、山間渓谷や崖地の間を蛇行し、連続した瀬と淵、砂礫河原や河口の汽水域を形成して流れ、多様な魚類や昆虫等が生息するなど次世代に引き継ぐべき豊かな自然環境が多数存在している。久慈川水系では、流域の水辺環境と自然地・農耕地等の自然環境が有する多様な機能を活かすグリーンインフラの取組を推進している。 国土交通省ウェブサイト 流域治水プロジェクト「久慈川水系流域治水プロジェクト」 国土交通省関東地方整備局
14 那珂川流域における霞堤を利用した治水対策プロジェクト 栃木県・茨城県・福島県 那珂川流域 実践 那珂川流域では、令和元年東日本台風を踏まえた那珂川緊急流域治水対策プロジェクトの一環として、霞堤が新設されることとなっており、現在設置工事が進行中である。これにより、洪水発生時の遊水・貯留機能の確保・向上を図っている。なお、本計画は住民の家屋移転等、立地適正化を伴う計画となっている。 国土交通省関東地方整備局ウェブサイト「那珂川緊急治水対策プロジェクト」 国土交通省関東地方整備局
15 小貝川・母子島遊水地の整備と集団移転と遊水地内の観光資源としての活用 茨城県 母子島遊水地 実践 昭和61年台風10号による豪雨被害を機に遊水地が整備された。母子島遊水地の整備にあたり建設に伴い、地区内の計109戸が遊水地に隣接する高台(新規造成)に移転し、遊水地内には初期湛水池と周辺をめぐる遊歩道が整備され、魅力的な風景が形成された。 H25年度「住まいのまちなみ賞」受賞 国土交通省関東地方整備局ウェブサイト「小貝川激特事業起工30年 ~これまで、そしてこれから~」 国土交通省関東地方整備局下館河川事務所
16 耕作放棄水田の湿地化による流域治水 千葉県 印旛沼流域 実証・研究 河川流域内で洪水を水路から周辺に溢れやすくする(河川周辺を湿地化する)ことの効果を洪水氾濫モデル(RRIモデル)用いてシミュレーションし、効果的な場所を選定した。その結果、耕作放棄地が多い河川上流部や、河川の合流地点付近等の湿地化の有効性が示唆された。また河川上流域での湿地化は、富栄養化対策や生物多様性保全にも効果をもつことが示された。印旛沼流域(千葉県)の河川をモデルとした研究。 環境研究総合推進費_2-2001「気候変動に対応した持続的な流域生態系管理に関する研究」 国立研究開発法人国立環境研究所
17 東京湾における貧酸素水塊発生頻度の栄養塩負荷量別将来予測 東京都 東京湾 実証・研究 数値モデルを用いた将来予測実験の結果、2100年の東京湾において底層溶存酸素濃度がシロギス卵の貧酸素耐性閾値を下回る日数は、温暖化によって現在の5倍に増加する。ただし東京湾の栄養塩負荷量を現在の半分に削減できた場合には、2100年の東京湾において底層溶存酸素濃度がシロギス卵の貧酸素耐性閾値を下回る日数は現在の30%に削減できることがわかった。将来の温暖化を食い止められなかった場合にも、栄養塩負荷量の制御によって沿岸域への温暖化影響の一部を削減できることが定量的に示された。 環境研究総合推進費 終了研究成果報告書「2-2007 海洋酸性化と貧酸素化の複合影響の総合評価」JPMEERF20202007) 国立研究開発法人水産研究・教育機構
18 水害を契機とした新潟県見附市の田んぼダムへの取組支援 新潟県 見附市、刈谷田川土地改良区 実践 新潟県見附市では、平成16年7月の集中豪雨により大きな水害に見舞われ、防災を主眼に置いたまちづくりの推進に舵を切る。農業分野における防災への貢献として見附市、刈谷田川土地改良区、新潟大学が協力し、田んぼダムの普及に着手。導入当初は調整管の購入費や設置費、維持管理費等を市が負担し、現在は「多面的機能支払交付金事業」等も活用しながら田んぼダムへの取組支援を実施中。令和6年度の普及率は96.4%。 A-PLATインタビュー「水害を契機とした新潟県見附市の田んぼダムへの取組支援」 新潟県見附市
19 シンビジウムの夏季高温下における開花遅延や花飛びを起こす要因 山梨県 実証・研究 シンビジウムは夏季に高標高地域への山上げ栽培を行っているが、温暖化に伴い、山上げ株でも高温障害と思われる開花遅延や花飛びが発生し問題となっている。そこで本試験では、要因解明を目的として、県内で広く生産されている品種の中で花飛びしやすい2品種を用いて、夏季における昼夜の高温条件や高温遭遇時の花茎の長さが花飛びや開花遅延へ及ぼす影響を検討する。 山梨県ウェブサイト「シンビジウムの夏季高温下における開花遅延や花飛びを起こす要因」 山梨県総合農業技術センター・高冷地野菜花き振興センター八ヶ岳試験地
20 ふじさんアジサイ鉢花栽培の高温環境下における赤色化促進技術 山梨県 実証・研究 ふじさんアジサイは開花後、時間の経過とともに花色が徐々に白から赤に変わり、赤色化したアジサイは秋色アジサイとして流通している。しかし、開花初期にあたる7~8月の高温条件が赤色化の遅延や緑色化症状を誘発していると考えられ、特に平坦地で問題となっている。また、一般的に高温対策として用いられる強遮光資材下では緑色化症状が助長される傾向がある。そこで、ふじさんアジサイの鉢花栽培での高温条件下における赤色化促進技術を確立する。 山梨県ウェブサイト「ふじさんアジサイ鉢花栽培の高温環境下における赤色化促進技術」 山梨県総合農業技術センター・高冷地野菜花き振興センター花き・応用育種科
21 シクラメン栽培における高透光・遮熱資材を用いた高温対策技術 山梨県 実証・研究 近年、温暖化に伴い県産鉢花で高温障害が発生しており、シクラメンでは商品性の低下が問題となっている。特に花芽分化期にあたる7~9月の長期高温条件が花数の減少や開花遅延を誘発していると考えられる。そのため現地では高温対策として強遮光資材を使用しているが、一方で光量不足に起因する品質低下が懸念されている。そこで、高温条件下における適正な温度、光管理による高品質生産技術の確立を図る。 山梨県ウェブサイト「シクラメン栽培における高透光・遮熱資材を用いた高温対策技術」 山梨県総合農業技術センター・高冷地野菜花き振興センター花き・応用育種科
22 ニホンジカとその個体数管理が森林限界・樹木限界に及ぼす影響の解明 山梨県 研究 ニホンジカの高山帯への進出は、その摂食により森林限界や樹木限界のような自然生態系の成立過程に大きな影響を及ぼす可能性がある。また、ニホンジカの個体数管理は、ニホンジカの行動を変化させその分布域をより奥地化させる可能性がある。そこで本研究では、ニホンジカとその個体数管理が森林限界・樹木限界に及ぼす影響を、以下の2つの点を明らかにすることで評価し、今後の高標高域におけるニホンジカ管理への提案を行う。
① ニホンジカの森林限界・樹木限界への影響はあるか?
② 低標高でのニホンジカ捕獲圧の強弱はニホンジカの高標高での分布に影響しているか?
「ニホンジカとその個体数管理が森林限界・樹木限界に及ぼす影響の解明」課題番号20K06136(KAKEN:科学研究費助成事業データベース(国立情報学研究所)) 山梨県森林総合研究所
23 夏秋トマトの簡易雨除け栽培における斜め誘引による裂果抑制および増収効果 山梨県 実証・研究 夏秋トマトは夏季冷涼な高冷地で栽培されている。近年、簡易雨除け栽培における「桃太郎」栽培において放射状裂果が多発し、品質・秀品収量の低下が問題となっている。そこで、裂果を抑制する栽培管理方法を確立し、裂果率の減少および秀品収量の増加を図り、桃太郎ブランドの維持向上を目指す。 山梨県ウェブサイト「夏秋トマトの簡易雨除け栽培における斜め誘引による裂果抑制および増収効果 山梨県総合農業技術センター・高冷地野菜花き振興センター・野菜作物科
24 夏秋トマトの簡易雨除け栽培で裂果が少ない桃太郎系大玉品種「桃太郎ワンダー」 山梨県 実証・研究 夏秋トマトは夏季冷涼な高冷地で栽培されているが、近年は異常高温等が続いており、 以前は発生が少なかった放射状裂果が多発し、品質・秀品収量の低下を招いている。県内 では簡易雨除け栽培における「桃太郎」で特に裂果が激しく問題となっている。そこで、 裂果の少ない桃太郎系大玉品種を選定し、裂果率の減少および秀品収量の増加を図り、桃 太郎ブランドの維持向上を目指す。 山梨県ウェブサイト「夏秋トマトの簡易雨除け栽培で裂果が少ない桃太郎系大玉品種『桃太郎ワンダー』」 山梨県総合農業技術センター・高冷地野菜花き振興センター・野菜作物科
25 水稲の高温登熟年におけるケイ酸資材施用による収量・品質への効果 山梨県 実証・研究 地球温暖化の影響により県内においても高温障害が発生しており、高温耐性が低い「農林 48号」や平坦地で栽培される「コシヒカリ」は特に高温障害が発生しやすく、等級の低下が問題となっている。そこで、ケイ酸含有量が低い圃場において、両品種へのケイ酸資材の施用量・施用時期の違いが収量、品質に与える影響を明らかにする。 山梨県ウェブサイト「水稲の高温登熟年におけるケイ酸資材施用による収量・品質への効果」 山梨県総合農業技術センター・栽培部・作物特作科
26 多収・高品質・良食味で高温耐性に優れる水稲粳品種「にじのきらめき」 山梨県 実証・研究 県内では良食味を追い求める傾向から主食用水稲奨励品種「コシヒカリ」が広く栽培されているが、平坦地を中心に高温登熟障害による検査等級の低下が問題となっている。そこで、食味・外観品質が良好で高温耐性に優れる有望品種「にじのきらめき」の特性を明らかにする。 山梨県ウェブサイト「多収・高品質・良食味で高温耐性に優れる水稲粳品種『にじのきらめき』」 山梨県総合農業技術センター・栽培部・作物特作科
27 狩野川塚本地区 河川防災ステーションの多面的活用 静岡県 狩野川塚本地区 実践 狩野川河川沿いに作られた施設で、万一の災害時には、災害復旧の拠点「防災ステーション」となり、平常時は狩野川の水辺の自然を活かした「憩いの場」となる。高水敷がドッグランや多目的広場として整備されている。 環境教育 狩野川塚本地区 河川防災ステーション川の駅伊豆ゲートウェイ函南 静岡県田方郡函南町
28 海岸防災林を活用した浜松市沿岸域防潮堤による津波対策 静岡県 浜松市 実践 静岡県浜松市の沿岸域に造られた全長約17.5kmの防潮堤。整備後は、津波による宅地の浸水面積を約8割低減し、宅地の浸水深2m以上のエリアを98%低減した。海岸防災林内の防潮堤整備に適用性が高い「土堤+CSG工法」を採用し、覆土をしたうえでクロマツによる防災林を再生した。 環境教育
29 麻機遊水地(静岡市)での多面的利活用 静岡県 麻機遊水地 実践 麻機遊水地(静岡市)では、県が管理する遊水地内に市が管理する公園区域が設定され、非常時は治水に、平常時は市民の利用(福祉活動など)に貢献する場が設けられている。氾濫原であった立地条件より多くの絶滅危惧動物やトンボ類の生育場所となっており、公園内では市民が手作業で湿地を整備する活動が行われ、絶滅危惧種の生育環境が維持されている。 自然環境教育
  • 西廣淳(2023) 麻機遊水地における健康・福祉・教育を重視した湿地利用. 日本湿地学会(監修)水辺を活かす―人のための湿地の活用.朝倉書店.(分担執筆)
  • あさはた緑地ウェブサイト
静岡県
30 京都市 雨庭整備事業 京都府 京都市 実践 近年、ヒートアイランド現象や豪雨などによる水害が問題となっている。ヒートアイランド現象は、郊外に比べ、都市部での気温が高くなる現象で、都市部では暖められたアスファルトなどによる空気の加熱、建物などからの排熱などにより、昼夜を通して気温が高い状態が続く。また、近年の豪雨は下水道の処理能力を超え、河川への排水ができずに各地で冠水などの被害をもたらすことが珍しくなくなってきている。以上のような問題を解決する一つの雨庭は、水が浸透しない道路などの舗装された場所に降った雨水を集め、一時的に貯める浅い窪地などを備え、土壌にゆっくりと浸透させる仕組みを持っている。 グリーンインフラ
庭園文化
京都市ウェブサイト「京都市情報館」 京都市 建設局みどり政策推進室
31 雨水貯留浸透機能を備えた植樹帯を整備し、冠水被害を軽減 大阪府 JR久宝寺駅・JR八尾駅周辺地区 実践 雨水貯留浸透機能を有する植樹帯等を整備することで、豪雨時の雨水流出の抑制に寄与し、冠水被害を軽減することが期待される。また、防災面以外として、樹木の緑陰や蒸発散効果により冷涼で快適な歩行空間が形成され、回遊性の向上に寄与することも期待される。 大阪府八尾土木事務所
32 円山川水系流域治水プロジェクト ~山から海までコウノトリ羽ばたく円山川流域をみんなで治める流域治水対策~ 兵庫県 円山川 実践 流域面積の8割以上が山地の円山川水系の事前防災対策を進め、堤防や遊水地の整備、森林整備、河道掘削、防災情報提供や防災学習の支援等に国、県、市が連携して取り組み、流域の浸水被害軽減を図る。円山川下流部はヨシ原や干潟などの湿地環境が多く残され、ラムサール条約湿地に登録されるなど、コウノトリ野生復帰に向けた取組が流域全体に広がっている。コウノトリ生息時の多様な生態系再生を目指し、中郷遊水地整備とあわせて湿地環境を創出することで動植物生息・生育・繁殖環境の保全・再生に取り組むなど、自然環境が有する多様な機能を活かすグリーンインフラの取組を推進する。 国土交通省ウェブサイト 流域治水プロジェクト「円山川水系流域治水プロジェクト」 国土交通省近畿地方整備局
33 アマモ場の再生およびブルーカーボンとしての環境への貢献 岡山県 備前市日生町 他 実証・研究 アマモは魚の産卵・稚魚の成育の場として重要。岡山県備前市日生町では、漁協が中心となってアマモ場の再生・拡大を長年継続し、良好な漁場が回復。また、カキ養殖を行いカキとアマモ場を共生させることで、夏場の植物プランクトンの異常発生(赤潮)や酸素不足(カキのへい死)を防ぎ、より強靭な生態系(里海)を作り出している。さらに近年、藻場は吸収源(緩和策・ブルーカーボン)としての効果も期待。このほか、静岡県横浜市(金沢湾)の例などでは、海岸浸食の抑制(防災)の効果も指摘されている。 緩和(ブルーカーボン)、環境教育 岡山県備前市日生町
34 上西郷川の多自然川づくりによる魚種数の増加 福岡県 福津市 実践 福岡県福津市では住宅地の区画整理事業とあわせて実施された河川の拡幅と河川の整備事業において、石や間伐材を用いた自然環境を豊かにする川づくりが行われ、魚種数の増加などが確認されている。上西郷川では、地域の方々、九州大学、福津市とで話し合いをしながら、多様な主体で協働した川づくりに取り組んでいる。 市民参加 ウェブサイト「福岡 上西郷川 環境と生き物」 福津市、九州大学
35 樋井川の流域一体における雨水貯留・浸透などの取組 福岡県 樋井川 実証・研究 流域全体(各家、集合住宅、学校、病院など)で雨水の貯留・浸透に取組むとともに、自然環境の保全を図る取組が行われている。貯留した雨水を緊急時の水源として活用する工夫もとられている。 教育・普及活動 環境省生物多様性ウェブサイト「生態系を活用した気候変動適応策(EbA)計画と実施の手引き」(2022)P36.に掲載 市民、学識者(樋井川流域治水市民会議)
36 椎茸に対する適応策-大分県における地球温暖化対策の推進- 大分県 実践 温暖化や降水量の変動など気象条件の変化に伴い、しいたけ発生期間が短くなっていることに加え、気温上昇により害虫・害菌が増加し、原木椎茸の収量が低下している。適応策として、害菌やキノコバエの増加に対し、迅速な現地調査を実施し被害軽減方法を指導、農林水産研究指導センター林業研究部きのこグループで実施している固定品種の発生調査を継続実施する。気象環境の変化に対応できる栽培体系を確立し、打木処理などの発生操作技術を普及する。また、暑熱対策や高温耐性品種等に関する試験研究を実施する。 林産物 大分県
37 海洋環境の変化を踏まえた貝毒低減等安全性向上に係る技術開発、検証 実証・研究 近年、貝類採捕漁業者や養殖業者にとって切実な問題として、海洋環境の変化による麻痺性・下痢性貝毒の発生が広域化・長期化し、出荷自粛 を余儀なくされる状況が拡大している。従来の貝毒モニタリングによるリスク管理に加え、貝毒の原因とな るプランクトンの発生の抑制等、根本的な対策が求められている。 有毒植物プランクトン 農林水産省ウェブサイト:実施中の試験研究課題(短期課題解決型研究)「海洋環境の変化を踏まえた貝毒低減等安全性向上に係る技術開発、検証」 農林水産省消費・安全局 畜水産安全管理課 水産安全班
38 漁港漁場施設の設計手法の高度化検討調査 実証・研究 気候変動による影響の緩和のため、浅海域に形成される藻場が担う炭素固定・貯留の役割が期待されるなか、藻場造成機能が備わった漁港施設である「自然環境調和型漁港施設」として挙げられている具体的な構造形式に対し、漁港施設としての本来機能である防災機能を明示するため、水理模型実験を実施して機能検証を行う。 高潮、高波 水産庁ウェブサイト「令和 5 年度 水産基盤整備調査委託事業 漁港漁場施設の設計手法の高度化検討調査」 水産庁漁港漁場整備部
39 海水温上昇に対応した藻場整備における検討調査 実証・研究 南日本海域における磯焼けの主因の一つである植食魚のノトイスズミを対象に、その海域において環境DNAサンプルを取得するとともに、水産技術研究所で開発してきた定量PCR分析系の環境DNAサンプルに対する汎用性を調べ、植食魚のモニタリングにおける環境DNA分析の有効性を検証する。さらに環境DNA分析の結果と水温などの環境データを組み合わせることにより、ノトイスズミの食害について予測可能か検証する。 磯焼け、植食魚 水産庁ウェブサイト「令和5年度 水産基盤整備調査委託事業 海水温上昇に対応した藻場整備における検討調査」 水産庁漁港漁場整備部
40 厳しい環境条件下におけるサンゴ礁の面的保全・回復技術開発実証 実証・研究 本事業では、沖縄沿岸海域を中心に、これまで得られた知見・技術を活用し、サンゴ幼生供給基盤を核とした周辺への幼生供給効果の検証、サンゴの初期生残を高める基盤の開発、高温耐性型サンゴの種苗生産技術を開発し、サンゴ礁の面的保全・回復を目指す。 サンゴ礁、国土保全 水産庁ウェブサイト「厳しい環境条件下におけるサンゴ礁の面的保全・回復技術開発実証委託事業(平成30年度~)」 水産庁漁港漁場整備部
41 優良品種作出と種苗供給の安定化による国産ワカメ養殖のレジリエンス強化と生産増大 実証・研究 ワカメ有用株のブランド化のため、ワカメの品種登録に必要な優良特性・形質の評価手法の開発を行う。応用ステージにおいて、フリー配偶体の交雑により作出した高温耐性株の品種登録のための特性評価を行うとともに、新たに現場ニーズの高い有用株(優良な色調・食感を持つ)を1株ずつ作出し、同様に評価を行う。またゲノム情報を活用した識別から、効率的な交雑育種技術を確立する。新たな技術(LED、ファインバブル、陸上育苗技術等)を種苗生産・育苗過程に適用して効率化・システム化をはかり、種苗生産の短期化(1カ月程度)をはかるとともに、近年のワカメ養殖の生産のボトルネックとなっていた種苗供給不足の完全解消をはかる。さらに、食害魚の出現と環境要因との関係解明から、発生の予測による食害回避技術を開発する。また、水温観測システムを改良して、現地映像のリアルタイム現場監視技術を開発する。予測・監視技術と、防除技術要素を組み合わせた実効的な食害対策技術を確立し、普及のためのガイドラインを作成する。 高温耐性 生物系特定産業技術研究支援センターウェブサイト【令和3年度 イノベーション創出強化研究推進事業 開発研究ステージ 現場課題解決型】30015BC2「優良品種作出と種苗供給の安定化による国産ワカメ養殖のレジリエンス強化と生産増大優良品種作出と種苗供給の安定化による国産ワカメ養殖のレジリエンス強化と生産増大」 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 生物系特定産業技術研究支援センター
42 地球温暖化に適応したノリ養殖技術等の開発 実証・研究 水産庁事業等で高水温条件での選抜を進め、高水温耐性育種素材等の選抜株を育成してきた。これら選抜株の培養での高水温耐性は明らかになってきているが、実用に向けては適水温等での生長性を確認する必要がある。また、個体間に生長や葉形等の違いが大きい場合もみられる。そこで、培養により適水温等で選抜株を培養し、生長性を明らかにするとともに、必要に応じ選抜や単藻化を行い、形質の向上と安定化を進めていく。また、野外養殖試験又は野外培養試験等で栽培された育成株等の葉状体の遊離アミノ酸組成を分析し、呈味成分から見た養殖品種としての適性を調査する。 高温耐性、育種 農林水産省ウェブサイト 農林水産技術会議「高水温に適応した養殖ノリの育種技術」 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 生物系特定産業技術研究支援センター
43 クルマエビ資源の減少原因の解明にむけた毒性学・病理学・環境学的要因の統合的考察 実証・研究 クルマエビを対象として、気候変動に伴う水温上昇、病原ウイルス (WSSV)、沿岸域に流入する農薬(フィプロニル)などの人為活動由来化学物質の複合的な影響について調べた。水温の上昇に伴い、フィプロニルおよびWSSVの複合暴露による死亡率も上昇し、化学物質やその他の因子との複合影響が顕著に発現することが明らかとなった。 農薬(fipronil)、ウイルス (WSSV)、水温上昇 Triple jeopardy: the combined effects of viral、 chemical、 and thermal stress on kuruma prawn (Penaeus japonicus) juveniles. Science of the Total Environment 952 (2024) 175934 国立研究開発法人水産研究・教育機構 環境保全部
44 魚介類養殖における気候変動にも左右されない強力な赤潮対応技術の開発 実証・研究 本研究では、1.へい死及び抵抗性に関わる分子プロセスの特定;2.鰓と赤潮プランクトンの相互作用の解明;3.赤潮抵抗性を向上させる飼育条件の特定;4.クロマグロの赤潮被害を軽減する方法の確立;5.選抜育種による赤潮抵抗性家系の作出技術の開発により、ブリやクロマグロを対象に、赤潮による養殖魚のへい死のメカニズム解明およびそれに基づく養殖魚の赤潮抵抗性を向上させる技術の開発を目的とする。 赤潮、養殖 農林水産省ウェブサイト 令和4年度 農林水産研究の推進(委託プロジェクト研究)「魚介類養殖における気候変動に左右されない強力な赤潮対応技術の開発」 農林水産省農林水産技術会議事務局
45 藻場の増設による日本沿岸域の酸性化影響緩和の可能性 実証・研究 日本沿岸の5海域においてpHの通年連続観測を行った結果、現在の日本沿岸域におけるpHの年平均値は十分高い値を示しているが、降雨直後を中心とした数日〜数週間スケールの短期的なpH低下現象が頻発しており、この期間中は沿岸生物への酸性化影響発現閾値を下回るpHが出現することがわかった。この短期的なpH低下現象の発生機構を詳しく調べた結果、降雨によって増水した河川から供給される粒子状有機物が短期的な酸性化に寄与しているケースが多いことがわかった。河口域にアマモ場等を増設して河川から供給される粒子状有機物をトラップすることにより、その外側の沿岸域における短期的なpH低下現象を緩和できる可能性が示された。 EGU Biogeosciences「Short-term variation in pH in seawaters around coastal areas of Japan: characteristics and forcings」 国立研究開発法人水産研究・教育機構等
46 気候変動影響に対するアマモの生態・生理的反応と遺伝子発現の実験的検証 実証・研究 日本国内の3地域のアマモ個体群を対象に、海水温及び淡水流入の実験操作に対する種子の発芽および成長期における生態・生理的反応と遺伝子発現を計測し、その緯度・環境勾配に沿った特性を明らかにする。 アマモ場 「気候変動影響に対するアマモの生態・生理的反応と遺伝子発現の実験的検証」課題番号22K12470(KAKEN:科学研究費助成事業データベース(国立情報学研究所)) 科学研究費助成事業(科研費)
47 黒潮流域の魚類生態系サービスの緯度間比較と温暖化影響の評価 実証・研究 近年の温暖化に伴い、熱帯域では熱帯種の減少による生態系サービスの減少が、温帯域では温帯種の減少と熱帯種の移入によるサービスの質の変化が予想される。本研究では既存データの各魚種の密度と生態系サービスにおける人気度ランクを乗じて、フィリピンから日本のサンゴ群集域において漁業、観賞、 ダイビングといった魚類生態系サービスの供給可能量を算出し、緯度勾配を求める。さらに既存データと現在の野外調査の結果を比較し、過去10~15年間の変化を明らかにする。 サンゴ礁、魚類、生態系サービス 「黒潮流域の魚類生態系サービスの緯度間比較と温暖化影響の評価」課題番号20K20011 (KAKEN:科学研究費助成事業データベース(国立情報学研究所)) 科学研究費助成事業(科研費)
48 亜寒帯浅海生態系における気候変動の影響予測と同海域における持続可能な水産業を実現するための適応策の提示 三陸沿岸 実証・研究 三陸沿岸の浅海域における海洋環境を把握すると共に、環境と生物の相互作用の理解を深め、漁業生産の変動機構の評価に資するための研究開発を行う。特に気候変動、海洋酸性化等が主要な魚介類や海藻類の生産に及ぼす影響について解明を進める。 磯焼け、海洋酸性化 国立研究開発法人水産研究・教育機構沿岸生態システム部ウェブサイト 国立研究開発法人水産研究・教育機構 沿岸生態システム部
49 気候変動に伴う環境変化が有明海の二枚貝類に及ぼす影響評価 有明海 実証・研究 気候変動に伴う環境変化に対応した二枚貝類の機能の将来予測や増養殖場の選定に資するため、有明海において二枚貝類に影響を及ぼすと想定される環境要因を抽出し、選定した対象種について飼育実験等から環境要因の影響を評価することで、環境変化に対する二枚貝類の応答を明らかにする。 降水量増加の影響 水産研究・教育機構沿岸生態システム部ウェブサイト 国立研究開発法人水産研究・教育機構 沿岸生態システム部
50 沿岸域における漁場環境及び生物生産の変動機構の解明と適応策の検討 実証・研究 瀬戸内海等の沿岸域において、魚介類や海藻類などの水産生物の生息環境や生産力を把握し、気候変動や人間活動等に伴う環境変化が生態系や生物生産に及ぼす影響を評価するとともに、環境変化への適応策に繋げるための調査・実験・データ解析等による技術開発に取り組む。 栄養塩管理 水産研究・教育機構沿岸生態システム部ウェブサイト 国立研究開発法人水産研究・教育機構 沿岸生態システム部
51 河川合流周辺の農地は高い水害抑制機能を持つ -防災と生物多様性保全の両立に貢献- 実証・研究 日本全国の市区町村を対象に、洪水発生頻度と河川合流周辺の農地との関係を統計モデルによって検討・分析を行った結果、河川合流の周辺に存在する農地が洪水の発生抑制に大きく貢献している可能性を示した。河川合流の周辺は良好な自然環境が維持されていることが多く、この場所に存在する農地を積極的に保全することで、高い防災効果と生物多様性の保全が両立できる可能性がある。この結果は、水害に強く、人間の居住域と良好な自然環境が両立できる土地利用を考える上で重要な指針になると期待できる。 Eco-DRR、洪水被害軽減、ネイチャーポジティブ 東京都立大学報道発表(2024.11.19)
【研究発表】河川合流周辺の農地は高い水害抑制機能を持つ -防災と生物多様性保全の両立に貢献- Takeshi Osawa(2024)Agricultural land around river confluences could strongly suppress floods occurrences、 Environmental and Sustainability Indicators、 InPress
東京都立大学大学院 都市環境科学研究科
52 水稲および麦類奨励品種の生育ステージ予測技術の改良 実証・研究 山梨県では、農耕地の標高差が大きいことや近年の温暖化により、これまでの経験則から水稲や麦類の生育ステージを予測することが難しく、各ステージに応じて行う追肥や病害虫防除、収穫等の作業を適期に行うことが困難となっている。このため、水稲および麦類の奨励品種について、作期や栽培場所の違うデータを用いて生育ステージを予測するモデルを改良する。 山梨県ウェブサイト「水稲および麦類奨励品種の生育ステージ予測技術の改良」 山梨県総合農業技術センター・栽培部・作物特作科
53 スギ花粉症対策苗木等への植替えや花粉症対策品種の開発等による花粉発生源対策の推進 実践 平成30(2018)年4月に改正した「スギ花粉発生源対策推進方針」に基づき、地方公共団体、林業関係者等と一体となった花粉発生源対策の推進を図った。具体的な取組としては、森林所有者に対する花粉症対策苗木等への植替えの働き掛けを支援するとともに、花粉発生源となっているスギ・ヒノキ人工林の伐採とコンテナを用いて生産された花粉症対策苗木等への植替え、広葉樹の導入による針広混交林への誘導等を推進した。また、花粉飛散量予測のためのスギ・ヒノキ雄花の着花量調査に加え、スギ花粉症対策品種の開発の加速化や、花粉飛散防止剤の実用化を推進し、これらの成果等の関係者への効果的な普及を行った。さらに、花粉症対策に資する苗木の安定供給体制の構築を図るため、採種園等の整備や技術研修等の取組を推進した。 花粉症 林野庁ウェブサイト「スギ花粉発生源対策推進方針」 林野庁森林整備部森林利用課花粉発生源対策企画班
54 気候変動に適応し、花粉発生源対策にも資する品種を開発するための育種技術の開発 実証・研究 気候変動や花粉発生源対策を想定した新たなスギ品種の開発 育種 森林総合研究所ウェブサイト「気候変動に適応し、花粉発生源対策にも資する品種を開発するための育種技術の開発」 国立研究開発法人森林総合研究所 林木育種センター
55 EGAO技術による植物の環境ストレス耐性強化 実証・研究 近年の気候変動は、環境ストレス(高温や干ばつなど)の発生頻度を増加させ農作物の収量を低下させている。我々は低濃度のエタノール水溶液を植物に投与することで環境ストレス耐性(高温・乾燥・高塩など)が強化できることを見出しこの技術をEthanol-based Global Agricultural Optimization (EGAO)と名付けた。EGAO技術をさまざまな農作物に展開し、気候変動下における農作物の安定的な栽培の確立に取り組んでいる。 環境ストレスによる被害の軽減、農作物の安定供給、循環型農業、カーボンニュートラル 理化学研究所 環境資源科学研究センターウェブサイト 国立研究開発法人理化学研究所 環境資源科学研究センター 植物ゲノム発現研究チーム
56 ネイチャーポジティブな循環型社会を創る!発電型のバイオ炭生産技術
-熱電変換ユニット搭載型の小型炭化炉から効率的にバイオ炭を生産
実証・研究 バイオ炭は大気中CO2を長期間固定するネガティブエミッション技術である。本研究ではバイオマス炭化炉に熱電変換ユニットと断熱材を組み合わせ熱マネジメントすることで、バイオ炭生産性向上と共に未利用廃熱を回収し発電を行うシステムの設計コンセプトを確立した。この電源で木材1093 kgからバイオ炭生産した場合7.4 kWhの電力回収が可能で、電力インフラ整備が難しい山間部利用にも有望であり、生産バイオ炭は916 kg-CO2の長期的固定能力がある。各地の未利用バイオマスを有効活用し、地域分散型エネルギー生産・炭素隔離の同時実現により、持続可能な地域循環型エコシステム構築とネイチャーポジティブな取組の推進に貢献する。 緩和(ネガティブエミッション技術)、地域循環型エコシステム 産業技術総合研究所ウェブサイト「 ネイチャーポジティブな循環型社会を創る!発電型のバイオ炭生産技術」 国立研究開発法人産業技術総合研究所省エネルギー研究部門・ゼロエミッション国際共同研究センター
57 ニホンジカの森林下層植生食害により発生する災害リスクへの対策 実証・研究 昨今、日本全国の山林において、ニホンジカによる森林下層植生等の食害が発生している。下層植生の衰退は、森林の災害防止機能を減衰させ、災害発生リスクを高める可能性がある。本研究は、まずニホンジカの森林下層植生食害による災害発生リスクの変化を調査するとともに、それに対応した対策を考案し、試行することを目的としている。 野生動物 防災科学技術研究所 令和6年度成果発表会研究紹介ポスター「獣害が山地災害発生に及ぼす影響解明パイロットプロジェクト」 国立研究開発法人防災科学技術研究所
58 山地・森林等の植生及びニホンジカ等の生態系における気候変動影響への適応に向けた広域アクションプラン 情報基盤 中国山地や四国山地などの高標高域では、高標高域の植生や希少植物の分布適域が気温上昇に伴って減少する可能性や、ニホンジカの生息域拡大によって、植生等への被害が発生することが指摘されている。これらは、自然生態系への影響だけでなく、各地域の観光や林業等の産業、防災等にも関わる重要な課題であり、関係する都道府県等の区域を越えた広域的かつ共通的な課題であることから、気候変動影響や適応策に関する情報を収集し、アクションプランを策定。 生物多様性 A-PLATウェブサイト.気候変動適応における広域アクションプラン策定事業 中国四国地域「山地・森林等の植生及びニホンジカ等の生態系における気候変動影響への適応」広域アクションプラン(令和4年度事業報告) 気候変動適応中国四国広域協議会
59 アーバンフォレスト 実践 森林による、冷却・省エネ・大気浄化・雨水流出量抑制・野生生物の生息空間などの生態系サービスを提供する、都市および都市近郊の包括的な樹林の概念。それらの生態系サービスによる便益を高めることにより、ヒートアイランドや都市洪水などの都市災害回避、人々の屋外活動の促進及びコミュニティの育成、生物多様性の確保などの効果があり、都市社会の心理的・社会学的・経済的に安心な環境がより促進される。対象は街路樹や都市公園の樹林、都市林、工場の林地など、公共や民間の区別なく、また都市から離れた森林を含む場合もある。 都市空間の森林活用・健全化 一般社団法人 街路樹診断協会ウェブサイト 科学研究費助成事業(科研費)
60 生活空間における平地林(屋敷林、里山林等)の気象緩和効果と維持管理 実証・研究 公園や街路樹といった公共緑地のほかに、生活空間に近い緑地として平地林や屋敷林、里山林等がある.これらはかつて、農用林や薪炭林として、燃料や肥料、木材の供給源等需要な働きをしたが、化石燃料の急速な普及や化学肥料の使用、さらには外材の輸入等によって存在価値は急速に低下した。そのため、多くは伐採され宅地化等が進んだが、残存する平地林も、管理不足により粗放な状態となっている場合が多い。しかし、気象災害が頻発・激甚化する近年、こうした平地林のような既存緑地による気象緩和や気象災害の軽減といった効果は重要であり、その保全や適正な維持管理に向けた取り組みが求められる。
  • 菊地 立.「屋敷林をもつ農家における冬季の気温と風速の日変化特性」季刊地理学 51 (4)、 306-315、 1999
  • 奥敬一.「里山林の生態系サービスを発揮するための課題と農村計画の役割」農村計画学会誌2013 年 32 巻 1 号 p. 20-23
  • 「グリーンインフラとしての屋敷林「居久根(いぐね)」の多面的機能性に関する研究」東京農業大学農学集報紀要論文巻 65、 号 1、 p. 9-18、 発行日 2020-06-29
  • 「グリーンインフラとしての平地林による防災機能 -災害現場で確認された農業気象災害軽減事例-」 防災科学技術研究所 研究報告 号 88、 p. 33-44、 発行日 2023-12-08
61 間伐による多様な森林への誘導と森林における生物多様性の保全と持続可能な利用の調和 実践 健全な森林育成のための間伐はもとより、長伐期林、育成複層林、針広混交林、広葉樹林等多様で健全な森林への誘導に向けた効率的な整備を推進した。具体的には、一定の広がりにおいて様々な生育段階や樹種から構成される森林がモザイク状に配置されている状態を目指し、自然条件等を踏まえつつ、育成複層林への移行や長伐期化等による多様な森林整備を推進した。その際、国有林や公有林等において、育成複層林化等の取組を先導的に進めるとともに、効率的な施業技術の普及、多様な森林整備への取組を加速するためのコンセンサスの醸成等を図った。さらに、原生的な森林生態系、希少な野生生物の生育・生息地、渓畔林等の水辺森林の保護・管理及び連続性の確保、シカ被害対策の実施等について、必要に応じて民有林と国有林が連携して進めるほか、森林認証等への理解の促進等、森林における生物多様性の保全と持続可能な利用の調和を図った。 生物多様性 森林研究・整備機構ウェブサイト「生物多様性に配慮した森林管理テキスト」 国立研究開発法人森林研究・整備機構 森林総合研究所
62 森林は激しい雨のときにより多くの雨水を蒸発させる 実証・研究 森林に降った雨水の一部が蒸発する遮断蒸発と呼ばれる現象が、激しい雨のときにより盛んになり、蒸発する雨水の割合がより大きくなることを明らかにした。激しい雨の際に森林内の地面に達する雨水の割合が減少するので、その分だけ洪水発生時の河川流量が減る可能性がある。過去研究で、遮断蒸発は雨の強さに比例して多くなることが知られていたが、本研究ではスギ林で精密な測定を行い、1時間当たり20mm以上の激しい雨のときにはその比例の度合いが大きくなることを新たに発見した。これは激しい雨のときに雨滴が枝や葉に衝突してできる飛沫が特に多くなり、飛沫の蒸発が増えるためと考えられる。今後、樹種や森林管理方法の異なる森林でもこの現象を検証する必要があるが、植栽する樹種の選択や森林の管理によって遮断蒸発を増やせることが明らかになった場合、その知見を活用して森林の洪水緩和機能を増強できる可能性を示している。 遮断蒸発、大雨時河川流入量削減 森林研究・整備機構 森林総合研究所ウェブサイト プレスリリース2024「森林は激しい雨のときにより多くの雨水を蒸発させる」 国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所
63 TSUNAG(優良緑地確保計画認定制度) 情報基盤 国土交通省は、「まちづくりGX」の一環として、都市緑地法に基づき、①気候変動への対応、②生物多様性の確保、③Well-beingの向上などに貢献する、民間事業者等による良質な緑地確保の取組を評価・認定する「優良緑地確保計画認定制度」を創設した。申請者は緑地計画の詳細がわかる設計図・植栽図等の書面提出が必要で、 緑地による温室効果ガスの吸収量、生物の良好な生息・生育環境形成に資する取組、緑地における人々の交流・滞在促進に資する取組等を制度事務局・審査委員会が評価して認定する。 緑地、気候変動(緩和)、地域コミュニティ、Well-being 国土交通省ウェブサイト「TSUNAG」 国土交通省 都市局 都市環境課
64 みどりの食料システム戦略 情報基盤 日本の食料・農林水産業は、大規模な自然災害や地球温暖化、生産者の減少といった生産基盤の脆弱化や地域コミュニティの衰退、新型コロナウイルスによる生産・消費の変化など、さまざまな政策課題に直面している。将来的な食料の安定供給を確保するためには、災害や温暖化に対する強化策、生産者の減少やポストコロナを見据えた農林水産行政の推進が必要とされている。
一方で、健康的な食生活の促進や持続的な生産・消費の活性化、ESG投資市場の拡大が進んでおり、海外でも環境や健康に関する戦略が策定される動きが見られる。今後、SDGsや環境を重視する国内外の動きがさらに加速すると見込まれる中で、日本の食料・農林水産業においてもこれらの動向に対応し、持続可能な食料システムの構築が急務となっている。
このため、農林水産省では、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立を目指す「みどりの食料システム戦略」を策定している。
情報流通・可視化 農林水産省ウェブサイト「みどりの食料システム戦略とは」 農林水産省大臣官房みどりの食料システム戦略グループ
65 農産物の環境負荷低減の「見える化」 情報基盤 農林水産省は「みどりの食料システム戦略」に基づき、持続可能な食料システムを構築するため、食料システム全体での環境負荷低減に取り組んでいる。また、国民の理解を深めるために、環境負荷低減の取り組みを「見える化」することを推進している。具体的には、ガイドラインに基づき、「温室効果ガス削減への貢献」や「生物多様性の保全」に関する取り組みを等級ラベルで分かりやすく表示する。これにより、生産者の環境負荷低減の努力を消費者に伝え、農産物を選択する際の判断材料として提供する環境を整えている。 情報流通・可視化 農林水産省ウェブサイト「見つけて!農産物の環境負荷低減の取組の「見える化」 ~温室効果ガス削減への貢献と生物多様性保全への配慮~」 農林水産省大臣官房みどりの食料システム戦略グループ
66 bosaiXview(防災クロスビュー)におけるEbA等を活用した防災情報の発信と流通 実践 防災科学技術研究所では、広く一般の方が閲覧できる防災情報発信サイト:bosaiXview(防災クロスビュー)を用い、暑さ指数(WBGT)や熱中症警戒アラート等の暑熱の情報をはじめ、気象情報や洪水浸水・土砂災害リスク等の情報を発信している。各情報は、防災科学技術研究所が生成したものだけではなく、あらゆる組織・機関が発信する情報も取り扱う。今後EbA研究が推進されていく中で、防災に関連した情報群を掲載することも可能である。 情報流通・可視化 防災科学技術研究所防災クロスビュー 国立研究開発法人防災科学技術研究所
67 水害リスクマップ 研究成果 気候変動の影響による豪雨の激甚化・頻発化に対応するには、水害リスクを踏まえた土地利用の促進など流域治水の取組を推進することが求められる。そのためには、比較的発生頻度が高い降雨規模も含めた複数の確率規模の降雨によって想定される浸水範囲や浸水深を明らかにし、浸水の生じやすさや浸水の発生頻度を示す新たな水害リスク情報を公表することが重要である。そのため、洪水浸水想定区域図の作成等を行ってきた技術の蓄積を踏まえ、所与の浸水深になると想定される浸水範囲の浸水頻度を示した地図(以下「水害リスクマップ」という。)の作成に関する、基本的な考え方や標準的な手法等を整理し、「多段階の浸水想定図及び水害リスクマップの検討・作成に関するガイドライン」としてとりまとめた。 水害リスク情報・可視化 国土交通省 国土技術政策総合研究所河川研究部 水害研究室ウェブサイト「多段階の浸水想定図及び水害リスクマップの検討・作成に関するガイドライン」 国土交通省国土技術政策総合研究所
68 流域治水デジタルテストベッド 研究プロジェクト 水災害の頻発・激甚化を踏まえ、広大な流域において流域治水を進めるには、多様な関係者間での合意形成(リスクコミュニケーション)や事前の防災体制の構築が必要である。多様な関係者間での合意形成には水災害リスク・対策効果の「見える化」技術が、事前の防災体制構築には「予測」技術がそれぞれ必要となる。そのため、国総研では、気候変動による水災害の頻発・激甚化への備えとして、国として必要な洪水予測の高度化等のための技術開発の促進や流域治水対策の立案を支援するため、サイバー空間に流域を再現(デジタルツイン)した実験場(デジタルテストベッド)の整備を行っている。(令和7年度運用開始予定) デジタルツイン・技術開発・可視化 国土技術政策総合研究所 水循環研究室ウェブサイト「流域治水デジタルテストベッドWEBページ」 国土交通省国土技術政策総合研究所
69 気候変動が電力システムや設備に及ぼす影響 実証・研究 電力中央研究所では、事業者の気候変動対策支援の観点から、最新の気候予測データを活用し、発電・送配電・需要の各セクターにおいて気候リスクに繋がる直接要因の将来変化を分析している。今後、これら気候変動影響情報の的確な共有・発信に関するプラットフォーム開発も進めていく予定。 電力需給・再生可能エネルギー 電力中央研究所ウェブサイト「電気新聞ゼミナール 2023/3/1掲載  気候変動が電力システムや設備に及ぼす影響は?」 一般財団法人電力中央研究所