令和7年度 気候変動適応の研究会 気候データ・シナリオ分科会 ダウンスケーリングワーキンググループセミナーを開催しました。
| 開催日 | 2025年10月30日(木) |
|---|---|
| 開催地 | 国立環境研究所、オンライン |
| 参加者 | 160名程度(国の研究機関・大学等:100名程度、地域気候変動適応センター等:25名程度、企業37名程度) |
気候変動適応の研究会 気候データ・シナリオ分科会 ダウンスケーリングワーキンググループ(以下、ダウンスケーリングWG)とは
気候変動適応の研究会は国の21研究機関により構成される気候変動適応に関する研究機関連絡会議のもと、地域での気候変動適応の実践(社会実装)に向けて研究者と実務者が具体的な連携を模索することを目標に活動しています。
また、国立環境研究所と気象研究所は2025年3月25日に基本協定を締結し、その取組みの一つとして気候変動の影響評価・適応に関する知見の深化を進めています。
ダウンスケーリングWGは、この協定と、研究会の4つの分科会の一つである「気候データ・シナリオ分科会」の活動の一環として、研究者同士の交流を主な目的として、今年度より活動を開始しました。
ダウンスケーリングWGセミナーについて
全球気候モデルによる気候予測を気候変動影響評価や適応策検討に利用する際は、ダウンスケールという処理が必要です。本セミナーでは専門家によるダウンスケーリングの最近の情報や動向に関する講演会と、データ開発者と利用者(地域気候変動適応センター 以下、LCCAC)によるパネルディスカッションを実施しました。
「気候変動影響評価と適応策検討のためのダウンスケール・バイアス補正に関する理論・技術・システムの最前線」
■当日のプログラム
| プログラム | 登壇者 | |
|---|---|---|
| 開会、趣旨説明、ダウンスケーリングとは | 高薮出 氏(WG座長) | |
| 第1部 ダウンスケーリングのシステム・データの最前線について | ||
| 1. | 日本の気候変動予測のためのダウンスケーリングシステムの構築とイベント・アトリビューションへの活用 | 川瀬宏明 氏(気象研究所) 野坂真也 氏(気象研究所) |
| 2. | アクショナブル都市気候情報:課題と展望 Actionable Climate Information for Cities: Challenges and Opportunities |
Doan Quang Van氏 (筑波大学) |
| 3. | AI技術とダウンスケーリング | 関山剛 氏(気象研究所) |
| 4. | ダウンスケール・バイアス補正の使える技術 | 西森基貴 氏(農業・食品産業技術総合研究機構) |
| 5. | 統計的ダウンスケーリングによる気候シナリオは信頼できるのか? | 石崎紀子(国立環境研究所) |
| 第2部 気候シナリオの利用者とのパネル討論 | |
| 全体討論 | 【パネラー】
|
※セミナー資料およびプログラムの詳細はこちらをご覧ください。
「気候変動影響評価と適応策検討のためのダウンスケール・バイアス補正に関する理論・技術・システムの最前線」
第1部:「ダウンスケーリングのシステム・データの最前線について」
はじめに、高薮座長よりダウンスケーリングの基礎と必要性について説明があり、その後の講演へと続きました。
気象研究所、筑波大学、農研機構、国立環境研究所といった各機関の第一線で活躍されている専門家から、統計的な手法から最先端の力学的手法・AIを活用したデータ駆動的手法まで、スーパーコンピューターを駆使する手法からExcelで実施可能な手法まで、多様な講演がありました。会場からは技術的な質問に加え、今後の展望に関する意見や要望も寄せられ、非常に活発な質疑応答が展開されました。

第2部:気候シナリオの利用者とのパネル討論
第1部の講演者に加え、業務で気候シナリオや予測データを活用しているLCCACにご所属の3名の利用者にもご参加いただき、パネル討論が行われました。
利用者の皆さんが現場でデータをどのように利用しているのか、利用に伴う課題や要望、必要とされる解像度などについて意見交換が行われ、開発者にとっては、利用者の視点からの率直な意見や要望を直接伺える貴重な場となりました。
討論の中では、各データの特性(長所や短所)の整理や、用途に応じた使い分けのヒントが示されているとありがたい、という意見も寄せられました。
今後も双方のコミュニケーションは不可欠であり、利用者のノウハウも取り入れながら、ニーズに応じた手法や解釈の提案につなげていくことが重要である、と、開発者と利用者の相互理解を深める貴重な機会となりました。

終わりに
地方公共団体、研究機関、企業と多くの皆様にご参加いただき、気候シナリオやダウンスケーリングへの関心の高さをあらためて実感する機会となりました。会場にも多数の方に足をお運びいただき、対面ならではの活発なコミュニケーションや熱量を感じることができました。本会が開発者と利用者の関係を探るきっかけになると幸いです。
以下に、参加者の皆様にご協力いただいた事後アンケートの集計結果の一部をご報告します。
いただいた貴重なご意見を踏まえ、今後もより充実した研究会活動となるよう事務局一同努めてまいります。
セミナーの満足度(回答数=57)

ご意見、ご感想など(一部抜粋・改変)
- 研究と実務の両方の観点からの意見、議論が参考になった。
- ダウンスケーリングやバイアス補正について、背景から最先端の情報まで幅広い知見を得ることができた。
- AIの思考パターンを解析する研究が進んでいる点、気象要素により傾向が異なる点が非常に興味深かった。
- 気象学とAIの現在地が良く分かった。アトリビューションへの活用という視点も新しく感じた。
- AIの活用は便利である一方、この分野に限らずブラックボックス化によって検証が難しくなる懸念があるため、慎重に取り扱っていきたい。
- 従来の物理シミュレーションと機械学習の違いが明確になり、提示された計算機スペックの例は必要なリソースを把握するうえで非常に有用だった。
- 直観的に理解しやすい統計的手法は今後も欠かせない手法だと感じた。
- データの使用目的に応じて必要となる補正手法を一覧化し、あわせて推奨手法を示していただけるとより有用である。
- 企業の気候変動リスク評価においては4℃シナリオが不可欠であり、SSP5-8.5またはSSP3-7.0のダウンスケーリングを実施してほしい。
出典・関連情報