成果報告 0-3

国立公園等の生態系及び生態系サービスへの気候変動影響に関する調査及び適応策の検討

対象地域 全国
調査種別
分野 農業・林業・水産業
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※調査結果を活用される際には、各調査の「成果活用のチェックリスト」を必ず事前にご確認ください。

概要

「平成31年度地域適応コンソーシアム全国運営・調査事業委託業務報告書」より抜粋

自然保護区4地域(陸域:白神山地世界遺産地域及び妙高戸隠連山国立公園、海域:足摺宇和海国立公園及び奄美群島国立公園)における生態系及び生態系サービスを対象に、気候変動による影響評価を実施し、実現可能な適応策を具体的に検討した。適応策の検討にあたっては、環境省・国立環境研究所が2019年に発行した「国立公園等の保護区における気候変動への適応策検討の手引き」のフロー図を参考にした。各地域における対象及び予測結果に基づく適応オプションは以下の通りである。

〇白神山地世界遺産地域
ブナ及びシカ食害の分布変化予測・・・ブナ生残域の保全策提案(例:シカ食害防止)
紅葉時期変化予測・・・観光利用変化にともなう対策提案(例:観光時期・場所の変更)
〇妙高戸隠連山国立公園
高山植生の分布変化予測・・・存続可能性に基づく保全策提案(例:入域規制)
紅葉時期変化予測・・・観光利用変化にともなう対策提案(例:観光時期・場所の変更)
〇足摺宇和海国立公園
大型藻類及びサンゴの分布変化予測・・・サンゴ北上域の保全・利用策提案(例:利用促進にともなう養殖業とのコンフリクト調整)、サンゴ生残域の保全策提案(例:オニヒトデ駆除)
〇奄美群島国立公園
サンゴの分布変化予測・・・サンゴ生残域の保全策提案(例:オニヒトデ駆除、陸域対策)
サンゴの島嶼間ネットワーク解明・・・サンゴ幼生供給域の保全策提案(例:オニヒトデ駆除、陸域対策)

背景・目的

近年、国立公園等の自然保護区における生態系及び生態系サービスへの気候変動による深刻な影響が観測されている。本業務は、自然保護区4地域(陸域:白神山地世界遺産地域及び妙高戸隠連山国立公園、海域:足摺宇和海国立公園及び奄美群島国立公園)における生態系及び生態系サービスを対象に、気候変動による影響評価を実施し、実現可能な適応策を具体的に検討することを目的とした。

実施体制

本調査の実施者 国立研究開発法人国立環境研究所

本業務の実施体制図を以下に示す。

本業務の実施体制
図 3.1-1 本業務の実施体制

実施スケジュール(実績)

H29年度
:各地域に関するヒアリングにより、評価対象(白神山地世界遺産地域:ブナ・シカ分布及び紅葉時期、妙高戸隠連山国立公園:ライチョウの生息する高山植生、足摺宇和海国立公園:サンゴ及び大型藻類、奄美群島国立公園:サンゴ)を決定するとともに、各地域の基盤情報の収集を行った。
H30年度
:各地域において、評価対象の情報(生態特性、利用・管理状況・意識)の収集を行うとともに、将来予測の試行を行った。
H31(R1)年度
:提供された気候シナリオに基づき、各地域の評価対象の将来予測を行い、「国立公園等の保護区における気候変動への適応策検討の手引き」のフロー図を参考に適応オプションの検討を行った。
本業務における3年間のスケジュールを以下に示す。
3年間の実施スケジュール
図 3.1-2 3年間の実施スケジュール

気候シナリオ基本情報

本業務にて使用した気候シナリオの情報を表 3.1-1に示す。陸域では、ブナ・高山植生・紅葉に関して、2気候モデル×2RCPシナリオ×2予測期間の8パターンの予測を行った。海域では、サンゴ及び大型藻類に関して、1気候モデル×2RCPシナリオ×1予測期間の2パターンの予測を行った。

表 3.1-1 使用した気候シナリオ一覧
項目 陸域 海域
気候シナリオ名 農環研データセット by SI-CAT 海洋近未来予測力学的ダウンスケーリングデータ by SI-CAT ver.1
気候モデル MIROC5, MRI-CGCM3 MRI-CGCM3
気候パラメータ 日平均気温、日最高・最低気温、降水量 水温、流速(海表面)
排出シナリオ RCP2.6、RCP8.5 RCP2.6、RCP8.5
予測期間 21世紀中頃、21世紀末 21世紀末
バイアス補正の有無 有り 有り

気候変動影響予測結果の概要

白神山地世界遺産地域

ヒアリング調査や文献調査、現地視察の結果、本地域を代表するブナ原生林とそれに関連する紅葉という生態系サービスを評価対象として選定した。影響予測の結果、白神山地では将来的な温暖化に伴って次世代を担うブナの稚樹が分布できる領域が減少し、さらにブナの更新を阻害しうるニホンジカの分布が拡大することが予測された。また紅葉のシーズンは21世紀末には現在より1ヶ月ほど遅れる事が予測された。

(a) 白神山地におけるブナ稚樹の将来分布予測

白神山地におけるブナ稚樹の分布予測の結果、現在白神山地およびその周辺域において広くブナ稚樹の潜在分布域が広がっているのに対し、将来予測においてはこの潜在分布域が縮小していくことが予測された。この潜在分布域の縮小はMRI-CGCM3よりもMIROC5の予測結果において顕著であり、MIROC5のRCP8.5シナリオにおける21世紀末の予測では、白神山地の領域内においても高標高域においてのみブナ稚樹の潜在分布域が残る結果となった。

白神山地における現在・将来のブナ稚樹分布ポテンシャルマップ
図 3.1-3 白神山地における現在・将来のブナ稚樹分布ポテンシャルマップ
(b) 白神山地におけるニホンジカの将来分布予測

現在、白神山地域にはニホンジカの分布は形成されていないが、気候条件とニホンジカの分布拡大スピードを考慮したニホンジカの分布モデル(Ohashi et al. 2016)を使った将来分布予測の結果、21世紀中期からすでにニホンジカの侵入が生じ、21世紀末にはニホンジカの分布は全域に広がる結果となった。

白神山地におけるニホンジカの将来分布ポテンシャルマップ
図 3.1-4 白神山地におけるニホンジカの将来分布ポテンシャルマップ
(c) 白神山地におけるブナ紅葉の将来予測

白神山地におけるブナ紅葉最盛日のモデル予測の結果として、現在気候下では10月中下旬頃に紅葉最盛日が予測されているが、将来的な温暖化によって紅葉最盛日は遅くなることが予測された。紅葉の遅延はMRI-CGCM3よりもMIROC5での予測結果において大きく、RCP8.5シナリオでの21世紀末の予測ではMRI-CGCM3で11月下旬頃、MIROC5で12月上旬頃になると予測された。なお現在の年々の温度条件による変化でも20日ほどのばらつきがあるが、予測された温暖化影響はこの年々変動による紅葉最盛日の変化幅を上回るものであった。

白神山地におけるブナ紅葉最盛日の現在および将来変化予測マップ
図 3.1-5 白神山地におけるブナ紅葉最盛日の現在および将来変化予測マップ

妙高戸隠連山国立公園

ヒアリング調査や文献調査、現地視察の結果、本地域では希少種であるライチョウにとって重要な高山植生と落葉樹林における紅葉という生態系サービスを評価対象として選定した。影響予測の結果、妙高戸隠では将来的な温暖化に伴って高山植生は大きく減少する事が予測された。また落葉樹林の紅葉シーズンは21世紀末には現在より1ヶ月ほど遅れる事が予測された。

(a) 妙高戸隠における高山植生の将来分布予測

妙高戸隠連山国立公園において、保全対象、観光資源およびライチョウの生息環境として重要である、高山植生の気候変動に関する適応策の検討を行うため、高山植生および高山植生と競合する可能性のあるササ群落・亜高山帯森林植生の将来予測モデルの高度化を行った。

将来予測の結果、雪田草原は面積を半分程度に減らすものの火打山頂では存続し、ハイマツを含む高山低木群落は消失、亜高山帯森林植生が、特にRCP8.5の2100年では顕著に高山帯に侵入することが予測された(図 3.1-6、図 3.1-7)。

雪田草原・高山低木群落の現在・将来分布予測
図 3.1-6 雪田草原・高山低木群落の現在・将来分布予測
ササ・亜高山森林群落の現在・将来分布予測
図 3.1-7 ササ・亜高山森林群落の現在・将来分布予測
(b) 妙高戸隠の落葉樹における紅葉の将来予測

妙高戸隠におけるブナなど落葉樹林の紅葉最盛日のモデル予測の結果として、現在気候下では11月中旬頃に紅葉最盛日が予測されているが、将来的な温暖化によって紅葉最盛日は遅くなることが予測された。紅葉の遅延はMRI-CGCM3よりもMIROC5での予測結果において大きく、RCP8.5シナリオでの21世紀末の予測ではMRI-CGCM3で12月上旬頃、MIROC5で12月中旬頃になると予測された。なお現在気候下(1981-2000)の年々の温度条件による変化でも16日ほどのばらつきがあるが、予測された温暖化影響はこの年々変動による紅葉最盛日の変化幅を上回るものであった。

妙高戸隠におけるブナ紅葉最盛日の現在および将来変化予測マップ
図 3.1-8 妙高戸隠におけるブナ紅葉最盛日の現在および将来変化予測マップ

足摺宇和海国立公園

文献調査からは、区域内の南北勾配や県・市町村によって、サンゴおよび海藻の利用・保全についての位置付け・認識・対策が多様であり、観光利用や保全努力は愛南町以南のサンゴ群集に集中していることが分かった。ヒアリング調査からは、藻場の衰退とサンゴの増加は認識されているが、公園内では藻場が積極利用されていないためか、藻場の衰退やサンゴへの置き換わりについての懸念は少なく、また分布拡大するサンゴを観光に利用するなど関心も伴っていないことがわかった。影響予測を行った結果、高温ストレスの増大や食害生物の分布北上によって藻場・サンゴ群集の生息適性が低下し、とくにRCP8.5シナリオのもとでは公園内に生息適地がほとんど残らないと予測された。

(a) 足摺宇和海国立公園における藻場・サンゴ群集の将来分布予測

RCP2.6シナリオの将来水温における予測では、アイゴの採食目安およびオニヒトデの生存可能域が約50 km北上して瀬戸内海へ到達、さらにコンブ類の生存南限とオニヒトデ繁殖目安の限度は約70 km北上する予測となった。一方、RCP8.5の将来水温のもとでは、足摺宇和海国立公園の全海域がアイゴの採食目安およびオニヒトデの生存可能域、オニヒトデの繁殖可能域となり、さらには同国立公園の全海域がサンゴの白化域となる予測となった(図 3.1-9)。

足摺宇和海の藻場・サンゴ群集における主要種の分布範囲の将来予測
図 3.1-9 足摺宇和海の藻場・サンゴ群集における主要種の分布範囲の将来予測(上段:2月、下段:8月)

現在およびRCP2.6とRCP8.5シナリオの21世紀末における結果。サンゴの低温生存目安14°C、オニヒトデの低温生存目安およびアイゴの採食目安15°C、コンブ類の高温生存・オニヒトデの繁殖目安28°C、サンゴの高温生存目安30°Cの等温線を赤色で示した。

奄美群島国立公園

文献調査からは、サンゴ礁を中心とした生態系が重要な観光資源であるため、サンゴ食害生物の駆除や陸域負荷の軽減に取り組んでいることが分かった。ヒアリング調査からは、水深の浅い礁池内のサンゴ白化が多くの島々で目立っているが、地域規模の負荷は島によって異なる認識であることが分かった。サンゴ群集の存続性への影響予測を行った結果、サンゴ幼生の加入・供給関係は概ね保持されるものの、高温ストレスの増大による白化の頻発化が予想された。

(a) 奄美群島国立公園におけるサンゴ群集の将来分布予測

奄美群島国立公園においては、2000年代は低白化率と高加入率により良好に保全されるが、奄美大島において総合スコアにバラツキが見られた(図3.1-9)。RCP2.6では奄美大島において高白化率・低加入・供給の海岸で総合スコアが上昇、RCP8.5では特に全体的な白化率の上昇による総合スコア低下が見られたが、一方で奄美大島に比較的低リスクの海岸が残った(図 3.1-10)。

奄美群島におけるサンゴの白化、幼生供給、幼生加入の確率の積を保全適地の総合スコアとして用いた総合評価
図 3.1-10 奄美群島におけるサンゴの白化、幼生供給、幼生加入の確率の積を保全適地の総合スコアとして用いた総合評価

現在および21世紀末のRCP2.6とRCP8.5シナリオにおける結果。

活用上の留意点

本調査の将来予測対象とした事項

ブナ稚樹分布
:気候値に対するブナ稚樹の分布応答
ニホンジカ分布
:気候値および土地利用に対するニホンジカの分布応答および5kmメッシュにおけるニホンジカの分布拡大スピード
高山植生の分布
:気候値および地形・地質に対する高山植生の分布応答
ブナおよび落葉樹林の紅葉
:衛星観測による色づきの時空間変化における気温応答

足摺宇和海国立公園及び奄美群島国立公園においては、気候変動による海水温上昇が温帯性・熱帯性の海藻およびサンゴの分布に与える影響を対象とした。また、奄美群島国立公園については、海流流速を用いたサンゴ幼生の加入・供給関係(コネクティビティ)のシミュレーションを行った。

本調査の将来予測の対象外とした事項

分布予測結果においては、細かい立地条件や他種による競争排除や生育促進といった種間相互作用を考慮できていない点は注意する必要がある。また紅葉に関しては、衛星観測データを使用しているため、大気影響などにより地上での色づきの変化とは若干のズレがある可能性があり、さらに気温以外の気象要素(日射量など)との関連や細かな種間・個体間差は考慮できていない。ブナ稚樹および高山植生の分布に関しては、種子の散布距離や実際に分布が消失するまでにかかる時間など、生態的なプロセスに関する挙動に関しては予測の対象外としている。

海域で対象としたサンゴや海藻の分布を決める環境要因のうち、気候変動に伴い変化する環境要因としては海水温や流速以外にも、海洋酸性化や濁り・栄養塩などの影響が考え得る。また、他の種との種間関係など、生態的なプロセスに関する挙動に関しては予測の対象外としている。

その他、成果を活用する上での制限事項

あくまで本業務で使用したモデルに基づく予測結果であり、現地で起こる変化とは違ってくる可能性がある。この不確実性を十分に考慮して、モニタリングを伴いつつ10年や20年など定期的にモデルの改善を図り、順応的に活用する必要がある。

海域の気候変動影響予測は暫定版の将来気候モデルSI-CAT02 ver.1に基づく。また、生物の分布長期変化を予測する上では、過去数十年間の気候(過去再現実験)と生物分布変化の対応関係に基づく必要があるが、十分な期間の過去再現実験値が提供されていない。また気候モデルのバイアス補正に必要な20~30年分の過去再現実験値も得られておらず、バイアス補正も不十分である。このため、将来の生物分布変化の成果については予測精度に限界があり、今後の生物モニタリングの拡充と共に利用可能な最新の将来気候モデルを用いた定期的なアップデートが必要である。

適応オプション

本事業によって得られた成果を基に、白神山地と妙高戸隠、足摺宇和海国立公園、奄美群島国立公園における適応オプションを下記の表にまとめた。

表 3.1-2 白神山地における適応オプション一覧
適応オプション 想定される実施主体 評価結果
現状 実現可能性 効果
行政 事業者 個人 普及状況 課題 人的側面 物的側面 コスト面 情報面(知見/経験/データなど) 効果発現までの時間 期待される効果の程度
ニホンジカの駆除 普及が進んでいない ニホンジカ侵入の検出と初動計画の策定 N/A
防鹿柵の設置 普及が進んでいない 保全優先性・実現可能性が高くシカ影響の強い場所の選出 短期
更新施行によるブナ個体群維持 普及が進んでいない 現状ブナの更新は天然状態でも十分 長期
紅葉予報システムの導入 普及が進んでいない 現在ある全国スケールの予測は認知度が低い 短期
表 3.1-3 白神山地における適応オプションの考え方と出典
適応オプション 適応オプションの考え方と出典
ニホンジカの駆除 コア地域での実施は困難を極めるため周辺地域でいかに止めるかが肝要。(参考:環境省 2016)
防鹿柵の設置 面積が限定的なため、場所の選定が重要。(参考:自然環境保全センター 2011)
更新施行によるブナ個体群維持 当地での技術的検討が必要だが、将来ブナ稚樹の生育が困難になる前に施行する。(参考:森林総合研究所2011)
紅葉予報システムの導入 最適な観光利用の時期・場所を検討。民間予報との連携可能性。効果的なモニタリング体制の構築とセット。
表 3.1-4 妙高戸隠における適応オプション一覧
適応オプション 想定される実施主体 評価結果
現状 実現可能性 効果
行政 事業者 個人 普及状況 課題 人的側面 物的側面 コスト面 情報面(知見/経験/データなど) 効果発現までの時間 期待される効果の程度
ライチョウの域内保全 普及が進んでいない 効果検証 長期
侵入植生の駆除など 普及が進んでいない 効果検証および面的な展開 長期
紅葉予報システムの導入 普及が進んでいない 現在ある全国スケールの予測は認知度が低い 短期
表 3.1-5 妙高戸隠における適応オプションの考え方と出典
適応オプション 適応オプションの考え方と出典
ライチョウの域内保全 雪田植生残存域の入山規制や、高山植生(特にハイマツ)の代替検討など、ソフトな対策も検討の余地あり。(参考:環境省長野自然環境事務所2014)
侵入植生の駆除など ライチョウにとって特に重要な場所において、イネ科草本やササ、亜高山帯森林の植生の駆除などを検討。
紅葉予報システムの導入 最適な観光利用の時期・場所を検討。民間予報との連携可能性。効果的なモニタリング体制の構築とセット。
表 3.1-6 足摺宇和海国立公園における適応オプション一覧
適応オプション 想定される実施主体 評価結果
現状 実現可能性 効果
行政 事業者 個人 普及状況 課題 人的側面 物的側面 コスト面 情報面(知見/経験/データなど) 効果発現までの時間 期待される効果の程度
保護区の設定・公園範囲の見直 普及が進んでいない 効果に関する科学的知見はまだ少ない N/A 長期
食害生物の個体数管理 普及が進んでいる 潜水作業が可能な人手不足と資金不足により普及はごく一部に限定される。高齢化、過疎化による後継ぎ不足 短期
生物適応の補助(分布北上・温度耐性) 普及が進んでいない 人為的な生息域外導入や生物操作に関する科学的知見はまだ少ない 長期
漁獲対象種の変化に応じた漁業形態・対象種の再検討 普及が進んでいない 見慣れない漁種に対する抵抗(流通、商品価値、漁法の対応)、地域をまたいだ漁獲物のシェアなど社会経済学的過大が大きい 長期
ダイビング・観光船の拡充等による生態系利用 普及が進んでいる 普及はごく一部の民間業者に限られる。漁業者との潜在的コンフリクト、理解が得られにくい 長期
表 3.1-7 足摺宇和海国立公園における適応オプションの考え方と出典
適応オプション 適応オプションの考え方と出典
保護区の設定・公園範囲の見直し 海洋保護区が気候変動影響を和らげる効果が解析的論文により示されている。(Bates et al. 2014)
食害生物の個体数管理 食害生物の個体数管理は直接的な効果が数多く示されており、国内の先行事例も豊富。ただし、効果的な管理のためには、密度目標を設定し、重点海域への努力量集中を行う必要性がある。(岡地ほか2019)
生物適応の補助(分布北上・温度耐性) 生物自体の適応能力を向上させる方法、サンゴで取り組みが始まっており、国内でも沖縄県事業などで進行中。
漁獲対象種の変化に応じた漁業形態・対象種の再検討 未利用漁種への対応は生態系の個体数管理に繋がる。藻場の食害生物の多くは漁獲が可能であり、それらについては直接的な効果も期待できる。国内数例の地域的取り組みの例がある。
ダイビング・観光船の拡充等による生態系利用 漁業価値がない目新しい生物が観光資源としての経済的付加価値を持つようになり、また海中観察機会の増加は生態系保全の意識向上が期待される。
表 3.1-8 奄美群島国立公園における適応オプション一覧
適応オプション 想定される実施主体 評価結果
現状 実現可能性 効果
行政 事業者 個人 普及状況 課題 人的側面 物的側面 コスト面 情報面(知見/経験/データなど) 効果発現までの時間 期待される効果の程度
陸域負荷の軽減 普及が進んでいる 主な負荷源である農業・畜産からの土砂流出への対策は個々の事業者の負担が生じるため、資金的・労力的な課題がある。 N/A 長期
食害生物の個体数管理 普及が進んでいる 潜水作業が可能な人手不足と資金不足により普及は一部に限定される。 N/A 短期
生物適応の補助(分布北上・温度耐性) 普及が進んでいない 人為的な生息域外導入や生物操作に関する科学的知見はまだ少ない N/A 長期
幼生供給源海域の保全による幼生加入の確保 普及が進んでいない 地域をまたぐ広範囲を保全する必要がある。また幼生の供給・加入ネットワークは年変動が大きいため効果が予想しにくい N/A 長期
表 3.1-9 奄美群島国立公園における適応オプションの考え方と出典
適応オプション 適応オプションの考え方と出典
陸域負荷の軽減 サンゴへの直接負荷の軽減や食害生物の発生抑制に貢献するため重要だが、地域流域や海流の特性とも関連するため効果の定量化は困難。(金城2017)
食害生物の個体数管理 食害生物の個体数管理は直接的な効果が数多く示されており、国内の先行事例も豊富。ただし、効果的な管理のためには、密度目標を設定し、重点海域への努力量集中を行う必要性がある。(岡地ほか2019)
生物適応の補助(分布北上・温度耐性) 生物自体の適応能力を向上させる方法、サンゴで取り組みが始まっており、国内でも沖縄県事業などで進行中。
幼生供給源海域の保全による幼生加入の確保 サンゴは広範囲で幼生の供給・加入ネットワークが構成されるため、広域の総合的な対策が必要。(山野2017)
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