成果報告 1-4

気候の変化や極端な気象現象による観光業への影響に関する調査

対象地域 北海道・東北地域
調査種別 先行調査
分野 産業・経済活動
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※調査結果を活用される際には、各調査の「成果活用のチェックリスト」を必ず事前にご確認ください。

概要

「平成31年度地域適応コンソーシアム北海道・東北地域事業委託業務報告書」より抜粋

本調査では、21世紀末における気候の変化が札幌市のイベント(さっぽろ雪まつり、さっぽろオータムフェスト等)に与える影響について評価を行い、イベントを継続実施するために有効な適応オプションを検討した。

まず、気候の変化や極端な気象が札幌市で開催されるイベントに与える影響について定性的な評価を行った。その結果、さっぽろ雪まつりにおける雪不足と強風・強雨によるさっぽろオータムフェストの中止を対象に、経済影響評価を実施した。

さっぽろ雪まつりについては、21世紀末降雪量の減少により、現在と同等規模の雪像制作を行うには遠方で採雪を行う必要があり、採雪コストが2.2倍程度増大するという予測結果となった。適応オプションとしては、遠方での採雪により雪の不足分を補う方法や、雪室等に雪を保管しておき不足分を補う方法等が挙げられる。

さっぽろオータムフェストについては、21世紀末強雨が増加し、休日の2日間イベントを中止すると仮定すると、直接的・間接的な経済損失は約30億円(観光客による直接的な消費額の減少17億円と間接的な消費額の減少13億円)になるという予測結果となった。適応オプションとしては、タイムライン作成や関係者間の連携構築による体制整備などが挙げられる。

背景・目的

北海道札幌市は、年間1300万人以上が訪れる国内有数の観光都市であり、北海道観光の拠点としての性格も有している。そのため、道内の観光や地域経済の活性化に寄与するべく、年間を通じて様々なイベントが市内で開催されている。一方、気候変動による降雪量の変化や台風等の極端な気象の到来により、地域のイベントにおいても経済損失をはじめとする影響が生じることが懸念されている。

本調査では、気候変動がさっぽろ雪まつり、さっぽろオータムフェストを中心とする札幌のイベントに与える影響について整理し、経済的影響を評価し、自治体の適応オプションの検討を目的に調査・検討を行った。

実施体制

本調査の実施者 日本エヌ・ユー・エス株式会社
アドバイザー 札幌国際大学 教授 河本 光弘
北海道大学 准教授 佐藤 友徳
協力・連携 札幌市環境局、札幌市経済観光局
データ・情報提供 さっぽろ雪まつり実行委員会、さっぽろオータムフェスト実行委員会
実施体制
図 4-1 実施体制図

実施スケジュール(実績)

3ヶ年の実施スケジュールを図 4-2に示す。1年目の平成29年度は、気候の変化や極端な気象がイベントに与える影響を整理するとともに、各影響の定性評価を実施し、次年度以降の経済影響評価を行うべきイベントを抽出した。平成30年度は、気候変動影響定性予測の結果に基づき、地域にとって優先度の高い気候変動影響を抽出し、経済評価手法の検討及び経済影響評価を実施した。平成31年度は、経済影響評価の実施結果に基づき適応オプションの検討を行った。

調査実施スケジュール
図 4-2 調査実施スケジュール

気候シナリオ基本情報

本調査で使用した気候シナリオの基本情報は、表 4-1のとおりである。

表 4-1 使用した気候パラメータに関する情報
項目 地域にとって優先度の高い気候変動影響の選定 さっぽろ雪まつりにおける雪不足 強雨・強風によるさっぽろオータムフェストの中止
気候シナリオ名 NIES統計
DSデータ
気象研究所2㎞力学的DSデータ
by創生プログラム
気候モデル MRI-CGCM3
MIROC5
MRI-NHRCM02
気候パラメータ 降水量
風速
気温
積雪深
積雪水量
降水量
風速
排出シナリオ RCP2.6 RCP8.5 RCP8.5
予測期間 21世紀中頃
21世紀末
21世紀末 21世紀末
バイアス補正の有無 あり(全国) あり(地域) あり(全国)

気候変動影響予測結果の概要

地域にとって優先度の高い気候変動影響の選定

札幌市等にヒアリングを実施した結果、以下のことが分かった。

  • 札幌市においては様々なイベントが開催されているが、最も懸念される気候変動の影響は、①さっぽろ雪まつりにおける雪不足、②強雨・強風によるさっぽろオータムフェスト等の屋外イベントの中止、の2点である(図 4-3)。

降水量と平均気温、風速について、定性的な気候変動影響予測を実施した結果、以下のことが分かった。

  • 冬季の札幌市中心部では、MRI-CGCM3において、RCP8.5シナリオの21世紀中頃・21世紀末に強い降水(50㎜/day以上)の発生頻度が減少する(図 4-4)。
  • 夏季の札幌市中心部において、MRI-CGCM3及びMIROC5の双方において、RCP8.5シナリオの21世紀中頃・21世紀末に気温上昇が見られる(図 4-5)。
  • 夏~秋季の札幌市中心部における日平均風速は、MRI-CGCM3とMIROC5いずれにおいてもRCP8.5シナリオの21世紀中頃・21世紀末で大きな変化は見られない(図 4-6)。
札幌市のイベントで懸念される気候変動の影響(ヒアリング結果)
図 4-3 札幌市のイベントで懸念される気候変動の影響(ヒアリング結果)
冬季の日降水量の頻度分布(札幌市中心部、左:MRI-CGCM3、右:MIROC5)
図 4-4 冬季の日降水量の頻度分布(札幌市中心部、左:MRI-CGCM3、右:MIROC5)
夏季の日平均気温頻度分布(札幌市中心部、左:MRI-CGCM3,右:MIROC5)
図 4-5 夏季の日平均気温頻度分布(札幌市中心部、左:MRI-CGCM3,右:MIROC5)
夏~秋季の日平均風速分布(札幌市中心部、左:MRI-CGCM3,右:MIROC5)
図 4-6 夏~秋季の日平均風速分布(札幌市中心部、左:MRI-CGCM3,右:MIROC5)

さっぽろ雪まつりにおける雪不足

さっぽろ雪まつり実行委員会へのヒアリング及び文献調査を実施した結果、採雪のための諸条件や採雪に要するコスト(採雪地の条件別)が分かった(表 4-2)。

積雪深と積雪水量に関する定量的な気候変動影響予測と採雪コスト計算モデルを用いた経済経済影響評価を行った結果、以下のことが分かった。

  • 21世紀末の札幌近郊における積雪深は、30㎝以上となる地域が大幅に減少し、雪まつりに必要な量の雪の確保が困難になる可能性がある(図 4-7)。
  • 21世紀末の積雪深分布、ヒアリングで得た採雪条件等に基づいて新たな採雪地を設定すると、約100km遠方まで採雪に行く必要が生じ(表 4-3)、現在との比較で2.2倍の採雪コストを要する(表 4-26)。
  • 21世紀末の積雪深が将来予測に比べて10%多いと仮定した場合の採雪コストは現在と比較して2.1倍、10%少ないと仮定した場合の採雪コストは2.5倍になる(図 4-28)。
表 4-2 さっぽろ雪まつりにおける雪像制作のための採雪の諸条件
項目 条件
採雪量
  • 48,000m3(重機圧縮後の体積、2018年実績)
  • 重機で圧縮後の雪密度:700kg/m3(文献調査結果)
採雪方法
  • 採雪においては除雪車等を利用する。
  • なるべく綺麗な雪を確保するため、採雪時に土砂が混入しないよう、地面から10cm以上雪を残して採雪する。
  • そのため、積雪深が30cm以上であることが望ましい。
採雪地
  • 採雪地の分類及び採雪量の割合は以下のとおりである(2018年実績)。
    • 道路(冬期閉鎖または未除雪の農道など):約34%
    • 施設等(ゴルフ場の駐車場、霊園、レジャー施設等):約62%
    • 削り雪(会場にて雪像制作のために削った雪を他の雪像に回すもの):約4%
単価 以下の項目ごとにヒアリング等で情報を得た。
  • トラックの借り上げ料
  • 燃料代
  • 除雪車の借り上げ料
  • 有料道路の利用料
1日あたりのトラック往復回数
  • 20km未満:4往復
  • 20km以上~40km未満:3往復
  • 40km以上:2往復
注:特記以外の情報はさっぽろ雪まつり実行委員会へのヒアリングで得た情報である。
さっぽろ雪まつりの採雪期間中(1/5~1/27)の積雪深と現在の主要採雪地
図 4-7 さっぽろ雪まつりの採雪期間中(1/5~1/27)の積雪深と現在の主要採雪地
(21世紀末の予測はRCP8.5シナリオ、使用モデルはMRI-NHRCM02)
注:星印は現在の主要採雪地、左図は現在での積雪深の分布、右図は21世紀末の気候での積雪深の分布を示す。
出典:日本エヌ・ユー・エス(株)が作成.地図情報:国土交通省国土政策局「国土数値情報(行政区域データ・平成30年)」(http://nlftp.mlit.go.jp/ksj/)
表 4-3 札幌近郊における将来の採雪候補地
No. 自治体 採雪候補地 片道道路
距離(km)
土地の用途
1 倶知安町 倶知安町農道など 97.9 道路
2 札幌市 定山渓自然の村 29.6 採雪が大規模に行える施設
(施設内道路+駐車場)
3 当別町 道民の森(神居尻地区) 64.1
4 当別町 道民の森(牧場南地区) 78.3
5 真狩村 羊蹄山自然公園 82.8
6 札幌市 札幌テイネGC 15.8 採雪が小規模となる施設
(駐車場のみ)
7 小樽市 小樽市望洋サッカー・ラグビー場 34.1
8 小樽市 札樽ゴルフ倶楽部 39.4
9 小樽市 おたる自然の村(キャンプ場) 41.0
10 喜茂別町 喜茂別市ヶ原パークゴルフ場 60.6
11 夕張市 丁未風致公園 71.5
12 喜茂別町 泉川ルスツリゾートG72 71.8
13 喜茂別町 ウェスティンルスツリゾートG72 71.9
14 京極町 京極スリーユーパークキャンプ場 77.7
15 京極町 ふきだし公園 77.7
16 赤平市 エルム高原リゾート(オートキャンプ場) 92.5
さっぽろ雪まつりの採雪期間中(1/5~1/27)の積雪深と将来の採雪候補地
図 4-8 さっぽろ雪まつりの採雪期間中(1/5~1/27)の積雪深と将来の採雪候補地
(21世紀末の予測はRCP8.5シナリオ、使用モデルはMRI-NHRCM02)
注:ピンク色の星印は現在の主要採雪地、赤色の星印は新たな採雪候補地、左図は現在での積雪深の分布、右図は21世紀末の気候での積雪深の分布を示す。
出典:日本エヌ・ユー・エス(株)が作成.地図情報:国土交通省国土政策局「国土数値情報(行政区域データ・平成30年)」(http://nlftp.mlit.go.jp/ksj/)
さっぽろ雪まつりの採雪コストの比較
図 4-9 さっぽろ雪まつりの採雪コストの比較

強雨・強風によるオータムフェストの中止

さっぽろオータムフェスト実行委員会等へのヒアリング及び文献調査では、以下のことが分かった。

  • さっぽろオータムフェストは秋季約1か月間にわたって準備・開催を行っており、21世紀末においては台風等の強風及び強雨による中止が懸念される。
  • さっぽろオータムフェストの中止により、経済的影響が生じることが懸念される。
  • 経済的影響を定量化する際には、波及効果を考える必要があり、その際には産業連関表を用いることが望ましい。ただし、産業連関表の選び方によっては、波及効果が過小評価される可能性があるため注意が必要である。

降水量と風速に関する気候変動影響予測と、産業連関表を用いた定量的な経済影響評価を行った結果、以下のことが分かった。

  • さっぽろオータムフェスト開催期間中の札幌中心部において、強風日は減少するものの、強雨日は増加し、少なくとも強雨によってイベントを中止せざるを得ない場合が増えると見込まれる(図 4-10)。
  • さっぽろオータムフェストの開催中止を休日の2日間と仮定した場合、直接的な経済的損失(消費額の減少)は約17億円と予測された。また、間接的な経済的損失(二次的・三次的な消費額の減少)は13.0億円、所得形成効果で7.0億円の低下、111.2人の雇用が減少する予測結果となった(用語については表 4-4を参照)。業種別では、飲食サービス、食品飲料、卸売り、小売り、鉄道輸送の順に経済的損失額が大きく、飲食サービスの損失額は5.5億円程度となる可能性がある(図 4-13)。
さっぽろオータムフェスト準備・開催期間(9/8~10/5)における日平均風速及び日降水量の基準値を上回る日の年間平均出現回数の比較(日/年)
図 4-10 さっぽろオータムフェスト準備・開催期間(9/8~10/5)における日平均風速及び日降水量の基準値を上回る日の年間平均出現回数の比較(日/年)
(21世紀末の予測はRCP8.5シナリオ、使用モデルはMRI-NHRCM02)
さっぽろオータムフェストの中止によって生じる直接的な消費額減少の考え方
図 4-11 さっぽろオータムフェストの中止によって生じる直接的な消費額減少の考え方
さっぽろオータムフェストの中止に伴う経済波及効果(減少額)の計算過程
図 4-12 さっぽろオータムフェストの中止に伴う経済波及効果(減少額)の計算過程
表 4-4  経済波及効果計算に関する用語集
用語 説明(出典)
産業連関表
  • 一定地域(本調査においては札幌市)において一定期間(通常は1年間)に行われた財貨・サービスの産業間の取引、各産と最終需要者(家計など)の間の取引及び地域間の取引(移輸出入)を一覧表にしたもの。
最終需要
  • 需要のうち、生活のうえでの個人消費(家計消費)や、建物、機械などの設備投資等が最終需要になる。本調査は観光を対象にしており、最終需要は、個人消費のみと考えられる。
  • 原材料などとして他の商品の生産のために加工、消費されるものが中間需要である。
生産誘発額
  • 最終需要が直接・間接に地域内において誘発した生産額をいう。
  • 観光によって支払われたお金が、札幌市内において直接・間接に生産に結び付いた額となる。
  • 一次効果・二次効果を考える際に、札幌市外から移輸入された財・サービスに支払われた金額は除外している。
所得形成効果
  • 最終需要の変化によってもたらされる雇用者の所得額の変化。
雇用者誘発数
  • 最終需要の変化によってもたらされる雇用者の数。
財、サービス
  • 産業連関表で扱っている商品(生産物)は、大きく財とサービスに分けられる。
  • 財は、消費者にわたる有形の商品をいい、サービスは役務の提供などの無形の商品をいう。
注1:本表の説明は、本調査における分析の理解を促すために出典の説明をベースに相当程度簡略化している。学術的な定義は専門書を確認すること。
和歌山県:https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/020300/sangyo/h12/syosai/index_d/fil/s3_2.pdf
富山県:http://www.pref.toyama.jp/sections/1015/lib/renkan/_rep23/report2_04.pdf
注2:本調査では「2日間の中止」を仮定しているが、産業連関表の考え方から、生産誘発・所得形成・雇用者誘発は、長期的な連鎖の中で生起するものであり、イベントを中止した2日間でこれらの変化が起こることを意味するものではない。
さっぽろオータムフェストの一部中止に伴う業種別生産波及効果(減少額)
図 4-13 さっぽろオータムフェストの一部中止に伴う業種別生産波及効果(減少額)

活用上の留意点

本調査の将来予測対象とした事項

【地域にとって優先度の高い気候変動影響の選定】

札幌市において開催されている様々なイベントを対象に、定性的評価の対象としたが市内全てのイベントや事象等を網羅しているとは限らない。

【さっぽろ雪まつりにおける雪不足】

降雪量(降雪深)に関する定量的な気候変動影響予測、また、その影響下で生じる採雪に関する定量的な経済影響評価を対象とした。

【強雨・強風によるさっぽろオータムフェストの中止】

強雨・強風に関する気候変動影響予測、また、その影響下で起こり得るオータムフェストの中止に関する経済影響評価を対象とした。なお、経済影響評価の仮定条件はエラー! 参照元が見つかりません。を参照のこと。

本調査の将来予測の対象外とした事項

経済影響評価を行うにあたり、物価及び人件費の変動の影響は考慮していない。

【さっぽろ雪まつりにおける雪不足】

採雪期間中の気温上昇による雪質の変化9) 、さっぽろ雪まつり開催期間の気温上昇による雪像への影響、土地利用の変化は考慮していない。

【強雨・強風によるさっぽろオータムフェストの中止】

さっぽろオータムフェストの中止による経済影響の波及効果を評価するにあたって、雇用者数・消費支出等の変動、生産技術の変化(技術革新による生産性の向上等)、観光客の札幌市外における経済活動(例えば、道外からの観光客が新千歳空港等にて土産を購入する際に、その土産が札幌市内で生産されている場合など)は考慮していない。

9) ただし、気温上昇によって雪の密度が変化する点は考慮されている。

その他、成果を活用する上での制限事項

【地域にとって優先度の高い気候変動影響の選定】

地域にとって優先度の高いイベントを選定するため、札幌市において開催されている様々なイベントについて定性的な気候変動影響予測を行ったものであり、定量的な予測を行ったものではない。

【さっぽろ雪まつりにおける雪不足】

成果を活用する上での制限事項はない。

【強雨・強風によるさっぽろオータムフェストオータムフェスト中止】

強雨と強風によるイベント中止の基準はそれぞれ日降水量50mm以上、日平均風速6.9m/s以上と本調査独自に定められたものであることに留意が必要である。

さっぽろオータムフェストの中止による経済影響評価において、波及効果の計算に産業連関分析を行っているが、分析の前提条件や係数の設定によって、分析結果は異なることに留意が必要である。

適応オプション

さっぽろまつり雪まつりにおける雪不足

さっぽろ雪まつりにおける雪不足に対する適応オプションについては、①現在と同じ雪像の規模(大きさ・数)で開催する場合(表 4-5)と、②規模や内容、場所を変更して開催する場合(表 4-7)、の2つの観点から整理を行った。

表 4-5 さっぽろ雪まつりにおける雪不足に対する適応オプション
(①現在と同じ雪像の規模(大きさ・数)で開催する場合)
適応オプション 想定される実施主体 評価結果
現状 実現可能性 効果
行政 事業者 個人 普及状況 課題 人的側面 物的側面 コスト面 情報面 効果発現までの時間 期待される効果の程度
遠方からの採雪 普及が進んでいない 採雪コストが増大する 短期
人工降雪機・造雪機等の利用 普及が進んでいない 自然雪と性質がことなるため、雪像に不向き 短期
雪蔵・雪室等の活用 普及が進んでいない
  • 工程が増えることにより、雪に不純物が混じる可能性がある
  • 貯蔵温度によっては雪質に変化が生じる可能性がある
N/A 短期
少ない雪で作れるような工法の工夫(大雪像) 普及が進んでいない 実現可能性は不明 N/A 短期
開催時期の変更 普及が進んでいない
  • 春節時期とずれる場合、来場者数が減少する可能性がある
  • 他イベントとの調整が必要
N/A 短期
  • 普及状況については、さっぽろ雪まつりとして普及が進んでいるかどうかを示す
  • 情報面については、さっぽろ雪まつりとして知見があるかどうかを示す
  • 効果については、現在の雪まつりの規模やクオリティを保つための効果について示す
表 4-6 さっぽろ雪まつりにおける雪不足に対する適応オプションの考え方
(① 現在と同じ雪像の規模(大きさ・数)で開催する場合)
適応オプション 適応オプションの考え方と出典
遠方からの採雪 コスト面:採雪コストが2.2倍になるという計算をもとに△とした
現在のさっぽろ雪まつりの雪像の数や規模、クオリティを保った状態での開催のために比較的実現可能性が高い
人工降雪機・造雪機等の利用
  • 課題:製造方法によっては雪質の変化が速くなるとの指摘あり(「人工雪種及び人工雪製造方法」 https://patents.google.com/patent/JPH0827112B2/ja)
  • コスト面:人工造雪機を使用する場合、氷の単価:11万円/t、人工造雪機レンタル単価:56万円/台・日かかるとし、仮に必要な雪の10%を造雪機で賄う場合氷代だけでも3億7000万円かかるため△とした(参考:https://event21.co.jp/mat608_snow.htm, http://www.ohtakeya.sakura.ne.jp/1.html)
雪蔵・雪室等の活用
  • 普及状況:雪室を利用して食品を保存・熟成する手法は全国的に普及しつつあるが、雪像制作に関する実績についての情報はなかったため、「普及が進んでいない」とした
  • 効果:雪質が変化する可能性が考えられることから、パウダー状の自然雪を利用している現在に比べて雪像の強度等クオリティが下がる可能性があるとして中とした
少ない雪で作れるような工法の工夫(大雪像) 物的側面、情報面:現在大雪像は土台も全て雪を利用して作られている。土台を雪以外の物に代える方法は、強度や耐久性を確保するために技術開発が必要であり、実績もないため△とした
開催時期の変更 効果:開催時期をずらす場合、時期以外は現在と同じ条件、規模で開催での開催が期待できるため高とした
表 4-7 さっぽろ雪まつりにおける雪不足に対する適応オプション
(②現在と異なる雪像の規模(大きさ、数)、内容、場所で開催する場合)
適応オプション 想定される実施主体 評価結果
現状 実現可能性 効果
行政 事業者 個人 普及状況 課題 人的側面 物的側面 コスト面 情報面 効果発現までの時間 期待される効果の程度
氷像による代替 普及が進んでいない
  • 一般市民・自衛隊の、制作への参加が困難
  • 形状によって、溶けてパーツごと落下する可能性がある
  • 氷の大量生産が必要
N/A 短期
雪まつりを盛り上げる代替手段(有名人の招聘、プロジェクションマッピング) 普及が進んでいる 特になし 短期
開催地を山間部に変更 普及が進んでいない
  • 会場への交通手段を整備する必要がある
  • アクセスのしにくさによって来場者数が減少する可能性がある
N/A 短期
  • 普及状況については、さっぽろ雪まつりとして普及が進んでいるかどうかを示す
  • 情報面については、さっぽろ雪まつりとして知見があるかどうかを示す
  • 効果については、現在の雪まつりの規模やクオリティを保つための効果について示す
表 4-8 さっぽろ雪まつりにおける雪不足に対する適応オプションの考え方
(② 現在と異なる雪像の規模(大きさ、数)、内容、場所で開催する場合)
適応オプション 適応オプションの考え方と出典
氷像による代替 効果:氷像の制作・展示は現在の雪まつりでも行われているが、ここでは雪像の不足分を氷像に代えることを想定している。雪まつりのシンボルである雪像の数や規模の縮小を伴うため中とした
雪まつりを盛り上げる代替手段(有名人の招聘、プロジェクションマッピング) 効果:プロジェクションマッピングや有名人の招へいは現在の雪まつりでも行われているが、ここでは雪像の不足分を補うためのコンテンツとしての利用を想定している。雪まつりのシンボルである雪像の数や規模の縮小を伴うため中とした
開催地を山間部に変更
  • 効果:現在と同程度の雪量を確保でき、かつクオリティの保持も期待できるが、開催場所が市街中心部から離れることにより、来場者数の減少とともにさっぽろ雪まつりの規模も縮小する可能性があるため、中とした
  • コスト面:採雪コストを抑えられる可能性がある一方、来場者のための交通手段の整備が必要になる。必要なコストは開催場所にもよるため、N/Aとした

強雨・強風によるさっぽろオータムフェストの中止

さっぽろオータムフェスト期間中における極端な気象の発生に対する適応オプションは、強雨・強風などの極端な気象が現在よりも頻発すると仮定した場合、急遽キャンセル等による経済的損失を最小にするという観点で整理を行った。詳細を表 4-9に示す。

表 4-9 さっぽろオータムフェストの中止に対する適応オプション
適応オプション 想定される実施主体 評価結果
現状 実現可能性 効果
行政 事業者 個人 普及状況 課題 人的側面 物的側面 コスト面 情報面 効果発現までの時間 期待される効果の程度
極端な気象発生時の体制整備(基準整備/情報共有/連携の構築等) 普及が進んでいる 関係者間の連携システムの構築が必要 短期
屋内での開催 普及が進んでいない
  • 規模、開催期間、集客の縮小の可能性がある
  • 他イベントとの調整が必要
N/A 短期
雨用の大型テントの導入 普及が進んでいない 極端な気象の場合には実施不可能 短期
  • 普及状況については、さっぽろオータムフェストとして普及が進んでいるかどうかを示す
  • 情報面については、全国のイベントとして知見があるかどうかを示す
  • 効果については、経済的損失を最小にする効果について示す
表 4-10 さっぽろオータムフェストの中止に対する適応オプションの考え方
適応オプション 適応オプションの考え方と出典
極端な気象発生時の体制整備(基準整備/情報共有/連携の構築等) オータムフェストは屋外で開催するため、極端な気象現象が発生した場合のキャンセルは免れない。しかし、例えばオータムフェスト独自のタイムラインを作成するなど事前に体制を整えておくことで、計画的なキャンセルが可能になる。(国土交通省HP http://www.mlit.go.jp/river/bousai/timeline/index.html#know)
屋内での開催 効果:さっぽろオータムフェスト全期間を通じて屋内施設で開催することを想定である。天候に左右されず安定して開催できるため、高とした
雨用の大型テントの導入 効果:屋外で開催し、一部に雨除けのテントを設置することを想定。通常の降水でも開催を継続できるが、極端な気象現象が発生した場合にはイベント自体のキャンセルは免れないため、中とした
 
【参考】

本ウェブページの本文中に記述のある「表4-26」及び「図4-28」は、本ウェブページで抜粋の対象とする「概要」にあたる箇所には登場しないため、「平成31年度地域適応コンソーシアム北海道・東北地域事業委託業務報告書」オリジナル版から抜粋したものを欄外に掲載する。

表 4-26 採雪コストの比較

 

 

2018年実績

21世紀末
(積雪深が10%多い場合)

21世紀末

21世紀末(積雪深が10%少ない場合)

単位

トラック借り上げ料(民間)

単価

60

60

60

60

千円/台

延べ借り上げ台数

421

1,256

1,278

1,419

台/全期間

コスト

25,260

75,360

76,680

85,140

千円

輸送関連費(公共)

軽油総使用量

30,000

49,995

51,629

53,125

L/全期間

軽油単価

127

127

127

127

円/L

コスト

3,804

6,339

6,547

6,736

千円

採雪地での採雪関連費用

近接地

一箇所あたり費用

550

550

550

550

千円/台

採雪地点

31

4

3

3

箇所/全期間

コスト

17,050

2,200

1,650

1,650

千円

遠方地

一箇所あたり費用

700

700

700

700

千円/台

採雪地点

4

22

24

30

箇所/全期間

コスト

2,800

15,400

16,800

21,000

千円

コスト
(近接地+遠方地)

19,850

17,600

18,450

22,650

千円

高速道路使用料

 

0

5,011

5,319

7,271

千円/全期間

コスト合計

48,914

104,310

106,996

121,797

千円

コスト増加分

55,396

58,082

72,883

千円

注1:近接地/遠方地の区別は片道距離30km未満/以上とした。
注2:総移動距離50kmを超え、かつ、高速道路が利用可能な場合は高速道路を使用するものとした。
注3:軽油単価は2018年1月における軽油平均単価を用いた。
 
さっぽろ雪まつりの採雪コストの比較
図 4-28 さっぽろ雪まつりの採雪コストの比較
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