成果報告 2-4

気候変動による節足動物媒介感染症リスクの評価

対象地域 関東地域
調査種別 先行調査
分野 健康
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※調査結果を活用される際には、各調査の「成果活用のチェックリスト」を必ず事前にご確認ください。

概要

「平成31年度地域適応コンソーシアム関東地域事業委託業務業務報告書」より抜粋

背景・目的

気候変動に伴う気温上昇により、感染症を媒介する節足動物の分布可能域や活動期間が変化し、節足動物媒介性感染症のリスクを増加させる可能性がある。そのため、感染症を媒介する節足動物の生態に関わる地域の自然特性や社会特性等も考慮したリスク評価を行い、対策を検討することが必要となる。

本調査では、主にヒトスジシマカ成虫(デング熱やチクングニア熱を媒介)とアカイエカ成虫(ウエストナイル熱を媒介)を対象として、関東地域において大規模な産業区と居住区をあわせ持ち、また人の往来が活発な観光地を有する神奈川県をモデルとして、気候変動及び社会・経済条件の変化を踏まえた感染症媒介蚊の生息地域の評価とともに、適応策の検討を行った。また、マダニ等の媒介節足動物による感染症リスク評価の可能性について検討した。

実施体制

本調査の実施者 パシフィックコンサルタンツ株式会社
アドバイザー 国立感染症研究所 小林睦夫 名誉所員/昆虫医科学部 駒形修 主任研究官
神奈川県衛生研究所 稲田貴嗣
実施体制
図 4-1 実施体制

実施スケジュール(実績)

スケジュール
図 4-2 スケジュール

H29年度事業では、既存文献・専門家ヒアリングから感染症媒介蚊の生態的特性を整理し、生息期間・対策優先度の評価手法の検討をした。加えて、マダニによる感染症リスクの評価の可能性について、既往文献や専門家ヒアリングにより整理した。

H30年度事業では、H29年度に検討した評価手法に基づき、神奈川県の評価を試行的に行い、マップを試作した。

H31年度事業では、評価手法・マップの作成方法の精査を行い、神奈川県・関東地域を対象に評価を実施し、マップを作成した。また、神奈川県を対象に、適応策の検討を行った。

気候シナリオ基本情報

使用した気候シナリオに関する情報を下表に示す。

表4-1 気候シナリオ基本情報
項目 ヒトスジシマカ/アカイエカ成虫の生息期間
気候シナリオ名 NIES統計DSデータセット
気候モデル MRI-CGCM3、MIROC5
気候パラメータ 日平均気温
排出シナリオ RCP2.6、RCP8.5
予測期間 21世紀中頃/日別、21世紀末/日別
バイアス補正の有無 有り(全国)

気候変動影響予測結果の概要

本調査は、ヒトスジシマカ成虫とアカイエカ成虫を対象として行った。ヒトスジシマカ成虫とアカイエカ成虫は都市型の蚊であり、都市公園等の緑地を主な生息場所としている。また吸血源として人を好み、人に依存する蚊(人がいなければ生存が難しい蚊)である。

文献調査結果の概要
  • 主な感染症媒介蚊を対象に、生態的特徴(幼虫の主な発生場所/成虫の主な生息場所/吸血行動の特徴/活動時間/越冬の方法/媒介する主な感染症)を整理した。
表4-2 ヒトスジシマカ/アカイエカの生態的特徴
ヒトスジシマカ/アカイエカの生態的特徴
専門家へのヒアリング調査結果の概要
  • 気温が上昇することにより、蚊の発生時期が明らかに早期化・長期化することが想定される。人が蚊に接触する期間が長くなることで感染症リスクが増加するため、発生時期の変化を感染症リスクとして捉えることができる。
  • 蚊の生態特性として、ヒトスジシマカ成虫は移動範囲が狭いため(約100m)、局地的・スポット的に発生し、アカイエカ成虫は移動範囲が広いため(約1km)、広域的に発生する。
  • 蚊の生息は日長も関係するため、10月末頃には終息する。発生開始日の早期化は、生息期間の長期化を意味する。
  • ヒトスジシマカ成虫が媒介するデング熱は人→蚊→人で感染し、アカイエカ成虫が媒介するウエストナイル熱は鳥→蚊→人の感染経路で感染する。米国でウエストナイル熱が発生した際には、飛行機にウイルス感染した蚊が紛れ込んでいた可能性が指摘されている。その事例から、神奈川県内においては、成田空港や羽田空港、県内の港湾を経由して蚊が侵入することが考えられる。
  • 感染症が発生するもう一つの要因として、感染症患者の海外からの流入が挙げられる。蚊の移動範囲や侵入する個体数を考慮すると、感染症患者の流入の方が、より高リスクであると言える。感染症患者が流入すれば、その患者が蚊に吸血されることにより、その周辺地域で感染症が拡散する可能性がある。しかし、患者の移動の予測は困難であるため、国内のどの地域で感染症が発生するか予測することは困難である。
影響予測結果の概要

本調査では、気温が上昇することにより両蚊成虫の発生時期が早期化・長期化し、それにより人が両蚊成虫に接触する期間(吸血される期間)が長くなることで感染症リスクが増加し得る点に着目し、以下の2種類のマップを作成した。

  • 生息期間マップ:気温上昇に伴い、両成虫の生息期間がどれだけ長期化するかを評価したマップ
  • 対策優先度マップ:両蚊成虫の「生息ポテンシャル(生息期間と生息場所である緑地)」と両成虫と接触しうる「人口ポテンシャル」から、感染症媒介蚊対策を優先的に行う必要がある地域を評価したマップ

ヒトスジシマカ/アカイエカ成虫の生息期間

(1)ヒトスジシマカ成虫の生息期間:神奈川県

神奈川県内のヒトスジシマカ成虫の生息期間をMRI-CGCM3で予測した結果、現在では、多くの地域で4か月半~5か月であるが、RCP2.6では21世紀中頃から21世紀末にかけて5か月~5か月半の地域が増えると予測された。RCP8.5では、21世紀中頃に5か月~5か月半の地域が増え、21世紀末には6か月以上生息する地域があると予測された。

また、MIROC5で予測した結果、現在では、半分近い地域で4か月半~5か月であるが、RCP2.6では21世紀中頃に5か月~5か月半の地域が増え、21世紀末には5か月半~6か月の地域が増えると予測された。RCP8.5では、21世紀中頃に5か月半~6か月の地域が増え、21世紀末には6か月以上生息する地域があると予測された。

ヒトスジシマカ成虫の生息期間(神奈川県)(MRI-CGCM3)
図 4-3 ヒトスジシマカ成虫の生息期間(神奈川県)(MRI-CGCM3)
ヒトスジシマカ成虫の生息期間(神奈川県)(MIROC5)
図 4-4 ヒトスジシマカ成虫の生息期間(神奈川県)(MIROC5)
(2)アカイエカ成虫の生息期間:神奈川県

神奈川県のアカイエカ成虫の生息期間をMRI-CGCM3で予測した結果、現在では、半分程度が4か月~6か月であるが、RCP2.6では21世紀中頃から21世紀末にかけて6か月~6か月半の地域が増え、21世紀末には7か月~7か月半の地域もあると予測された。RCP8.5では、21世紀中頃に5か月~5か月半の地域があらわれ、21世紀末には7か月~7か月半生息する地域があると予測された。

また、MIROC5で予測した結果、現在では、半分近い地域で4か月~6か月であるが、RCP2.6では21世紀中頃に6か月半~7か月の地域があらわれ、21世紀末にかけて増えると予測された。RCP8.5では、21世紀中頃に6か月半~7か月の地域が増え、21世紀末には7か月~7か月半生息する地域があると予測された。

アカイエカ成虫の生息期間(神奈川県)(MRI-CGCM3)
図 4-5 アカイエカ成虫の生息期間(神奈川県)(MRI-CGCM3)
アカイエカ成虫の生息期間(神奈川県)(MIROC5)
図 4-6 アカイエカ成虫の生息期間(神奈川県)(MIROC5)
(3)ヒトスジシマカ成虫の生息期間:関東地域

関東地域のヒトスジシマカ成虫の生息期間をMRI-CGCM3で予測した結果、現在では、多くの地域で4か月~5か月であるが、RCP2.6では21世紀中頃から21世紀末にかけて5か月~5か月半の地域が増えると予測された。RCP8.5では、21世紀中頃に5か月~5か月半の地域が増え、21世紀末には5か月半以上生息する地域が増えると予測された。

また、MIROC5で予測した結果、現在では、半分以上の地域で4か月~5か月であるが、RCP2.6では21世紀中頃から21世紀末にかけて5か月~5か月半の地域が増え、21世紀末には5か月半~6か月の地域もあると予測された。RCP8.5では、21世紀中頃に5か月~5か月半の地域が増え、21世紀末には5か月半以上生息する地域が増えると予測された。

ヒトスジシマカ成虫の生息期間(関東地域)(MRI-CGCM3)
図 4-7 ヒトスジシマカ成虫の生息期間(関東地域)(MRI-CGCM3)
ヒトスジシマカ成虫の生息期間(関東地域)(MIROC5)
図 4-8 ヒトスジシマカ成虫の生息期間(関東地域)(MIROC5)
(4)アカイエカ成虫の生息期間:関東地域

関東地域のアカイエカ成虫の生息期間をMRI-CGCM3で予測した結果、現在では、多くの地域で5か月半~6か月であるが、RCP2.6では21世紀中頃から21世紀末にかけて6か月以上の地域が増えると予測された。RCP8.5では、21世紀中頃に6か月~6か月半の地域が増え、21世紀末には7か月~7か月半生息する地域も増えると予測された。

また、MIROC5で予測した結果、現在では、6か月以下の地域が多いが、RCP2.6では21世紀中頃に6か月~6か月半の地域が増え、21世紀末には6か月半~7か月の地域も増えると予測された。RCP8.5では、21世紀中頃に6か月~6か月半の地域が増え、21世紀末には7か月~7か月半生息する地域も増えると予測された。

アカイエカ成虫の生息期間(関東地域)(MRI-CGCM3)
図 4-9 アカイエカ成虫の生息期間(関東地域)(MRI-CGCM3)
アカイエカ成虫の生息期間(関東地域)(MIROC5)
図 4-10 アカイエカ成虫の生息期間(関東地域)(MIROC5)

ヒトスジシマカ/アカイエカ成虫の対策優先度

(1)ヒトスジシマカ成虫の対策優先度:神奈川県

神奈川県のヒトスジシマカ成虫の対策優先度をMRI-CGCM3で計算した結果、RCP2.6では人口の微減に伴い、現在から21世紀中頃、21世紀末にかけて対策優先度が高い地域が減少する。RCP8.5では、生息期間がより長期化するため、RCP2.6と比較すると対策優先度が高い地域の減少が少ない。

また、MIROC5で予測した結果、RCP2.6では、現在から21世紀中頃にかけて大きな違いは見えないが、21世紀末には対策優先度が高い地域が減少する。RCP8.5でも同様の傾向がみられる。

ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(神奈川県)(MRI-CGCM3)
図 4-11 ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(神奈川県)(MRI-CGCM3)
ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(神奈川県)(MIROC5)
図 4-12 ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(神奈川県)(MIROC5)
(2)アカイエカ成虫の対策優先度:神奈川県

神奈川県のアカイエカ成虫の対策優先度をMRI-CGCM3で計算した結果、RCP2.6では人口の微減に伴い、現在から21世紀中頃にかけて対策優先度が高い地域がわずかに減少し、21世紀末にかけてはさらに減少する。RCP8.5でも同様の傾向がみられる。

また、MIROC5で予測した結果、RCP2.6では、現在から21世紀中頃にかけて大きな違いは見えないが、21世紀末には対策優先度が高い地域が減少する。RCP8.5でも同様の傾向がみられる。

アカイエカ成虫の対策優先度(神奈川県)(MRI-CGCM3)
図 4-13 アカイエカ成虫の対策優先度(神奈川県)(MRI-CGCM3)
アカイエカ成虫の対策優先度(神奈川県)(MIROC5)
図 4-14 アカイエカ成虫の対策優先度(神奈川県)(MIROC5)
(3)ヒトスジシマカ成虫の対策優先度:茨城県

茨城県のヒトスジシマカ成虫の対策優先度をMRI-CGCM3で計算した結果、RCP2.6では、現在から21世紀中頃、21世紀末にかけて対策優先度が高い地域が増加するが、特に対策優先度が高い地域は減少する。RCP8.5では、21世紀中頃から21世紀末にかけて、対策優先度の高い地域が全体的に増加する。

また、MIROC5で予測した結果、RCP2.6では、現在から21世紀中頃にかけて対策優先度が高い地域が増加する。RCP8.5では、21世紀中頃から21世紀末にかけて、RCP2.6よりもさらに対策優先度が高い地域が増加する。

ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(茨城県)(MRI-CGCM3)
図 4-15 ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(茨城県)(MRI-CGCM3)
ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(茨城県)(MIROC5)
図 4-16 ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(茨城県)(MIROC5)
(4)アカイエカ成虫の対策優先度:茨城県

茨城県のアカイエカ成虫の対策優先度をMRI-CGCM3で計算した結果、RCP2.6では、現在から21世紀中頃にかけて対策優先度が高い地域がわずかに減少するが、21世紀末にかけては対策優先度が高い地域が増加する。RCP8.5では、21世紀中頃から21世紀末にかけて、対策優先度の高い地域が全体的に増加する。

また、MIROC5で予測した結果、RCP2.6では、現在から21世紀中頃、21世紀末にかけて対策優先度が高い地域が増加する。RCP8.5では、21世紀中頃から21世紀末にかけて、RCP2.6よりもさらに対策優先度が高い地域が増加する。

アカイエカ成虫の対策優先度(茨城県)(MRI-CGCM3)
図 4-17 アカイエカ成虫の対策優先度(茨城県)(MRI-CGCM3)
アカイエカ成虫の対策優先度(茨城県)(MIROC5)
図 4-18 アカイエカ成虫の対策優先度(茨城県)(MIROC5)
(5)ヒトスジシマカ成虫の対策優先度:栃木県

栃木県のヒトスジシマカ成虫の対策優先度をMRI-CGCM3で計算した結果、RCP2.6では、現在から21世紀中頃、21世紀末にかけて対策優先度が高い地域が減少する傾向がみられる。RCP8.5では、21世紀中頃から21世紀末にかけて、対策優先度の高い地域が増加する。

また、MIROC5で予測した結果、RCP2.6では、現在から21世紀中頃、21世紀末にかけて、特に対策優先度が高い地域が減少する。RCP8.5では、21世紀中頃から21世紀末にかけて、対策優先度が高い地域が増加する。

ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(栃木県)(MRI-CGCM3)
図 4-19 ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(栃木県)(MRI-CGCM3)
ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(栃木県)(MIROC5)
図 4-20 ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(栃木県)(MIROC5)
(6)アカイエカ成虫の対策優先度:栃木県

栃木県のアカイエカ成虫の対策優先度をMRI-CGCM3で計算した結果、RCP2.6では、現在から21世紀中頃にかけて対策優先度が高い地域が減少する傾向がみられる。RCP8.5では、現在から21世紀中頃にかけては対策優先度が高い地域が減少するが、21世紀末には増加する。

また、MIROC5で予測した結果、RCP2.6では、現在から21世紀中頃、21世紀末にかけて対策優先度が高い地域が増加する。RCP8.5では、21世紀中頃から21世紀末にかけて、RCP2.6よりもさらに対策優先度が高い地域が増加する。

アカイエカ成虫の対策優先度(栃木県)(MRI-CGCM3)
図 4-21 アカイエカ成虫の対策優先度(栃木県)(MRI-CGCM3)
アカイエカ成虫の対策優先度(栃木県)(MIROC5)
図 4-22 アカイエカ成虫の対策優先度(栃木県)(MIROC5)
(7)ヒトスジシマカ成虫の対策優先度:群馬県

群馬県のヒトスジシマカ成虫の対策優先度をMRI-CGCM3で計算した結果、RCP2.6では、現在から21世紀中頃、21世紀末にかけて対策優先度が特に高い地域が増加する。RCP8.5では、21世紀中頃から21世紀末にかけて、特に対策優先度の高い地域がさらに増加する。

また、MIROC5で予測した結果、RCP2.6では、現在から21世紀中頃、21世紀末にかけて、特に対策優先度が高い地域が増加する。RCP8.5では、21世紀中頃から21世紀末にかけて、対策優先度が特に高い地域がさらに増加する。

ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(群馬県)(MRI-CGCM3)
図 4-23 ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(群馬県)(MRI-CGCM3)
ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(群馬県)(MIROC5)
図4-24 ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(群馬県)(MIROC5)
(8)アカイエカ成虫の対策優先度:群馬県

群馬県のアカイエカ成虫の対策優先度をMRI-CGCM3で計算した結果、RCP2.6では、現在から21世紀中頃、21世紀末にかけて対策優先度が特に高い地域が減少する。RCP8.5では、21世紀中頃から21世紀末にかけて、特に対策優先度の高い地域が増加する。

また、MIROC5で予測した結果、RCP2.6では、現在から21世紀中頃、21世紀末にかけて、特に対策優先度が高い地域が減少する。RCP8.5では、21世紀中頃から21世紀末にかけて、対策優先度が特に高い地域が増加する。

アカイエカ成虫の対策優先度(群馬県)(MRI-CGCM3)
図 4-25 アカイエカ成虫の対策優先度(群馬県)(MRI-CGCM3)
アカイエカ成虫の対策優先度(群馬県)(MIROC5)
図 4-26 アカイエカ成虫の対策優先度(群馬県)(MIROC5)
(9)ヒトスジシマカ成虫の対策優先度:埼玉県

埼玉県のヒトスジシマカ成虫の対策優先度をMRI-CGCM3で計算した結果、RCP2.6では、現在から21世紀中頃にかけて対策優先度が高い地域がやや減少する。RCP8.5では、21世紀中頃から21世紀末にかけて、対策優先度の高い地域が増加する。

また、MIROC5で予測した結果、RCP2.6では、現在から21世紀中頃、21世紀末にかけて、対策優先度が高い地域が増加する。RCP8.5では、21世紀中頃から21世紀末にかけて、対策優先度が高い地域がさらに増加する。

ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(埼玉県)(MRI-CGCM3)
図 4-27 ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(埼玉県)(MRI-CGCM3)
ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(埼玉県)(MIROC5)
図 4-28 ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(埼玉県)(MIROC5)
(10)アカイエカ成虫の対策優先度:埼玉県

埼玉県のアカイエカ成虫の対策優先度をMRI-CGCM3で計算した結果、RCP2.6では、21世紀中頃から21世紀末にかけて対策優先度が高い地域がやや減少する。RCP8.5では、21世紀中頃から21世紀末にかけて、対策優先度の高い地域が増加する。

また、MIROC5で予測した結果、RCP2.6では、21世紀中頃から21世紀末にかけて、対策優先度が高い地域がやや増加する。RCP8.5では、21世紀中頃に特に対策優先度の高い地域が増加するが、21世紀末には減少する傾向がみられる。

アカイエカ成虫の対策優先度(埼玉県)(MRI-CGCM3)
図 4-29 アカイエカ成虫の対策優先度(埼玉県)(MRI-CGCM3)
アカイエカ成虫の対策優先度(埼玉県)(MIROC5)
図 4-30 アカイエカ成虫の対策優先度(埼玉県)(MIROC5)
(11)ヒトスジシマカ成虫の対策優先度:千葉県

千葉県のヒトスジシマカ成虫の対策優先度をMRI-CGCM3で計算した結果、RCP2.6では、21世紀中頃から21世紀末にかけて対策優先度が高い地域が増加する。RCP8.5では、21世紀中頃から21世紀末にかけて、対策優先度の高い地域がさらに増加する。

また、MIROC5で予測した結果、RCP2.6では、現在から21世紀中頃、21世紀末にかけて、対策優先度が高い地域が増加する。RCP8.5でも、21世紀中頃から21世紀末にかけて、対策優先度が高い地域が増加する。

ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(千葉県)(MRI-CGCM3)
図 4-31 ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(千葉県)(MRI-CGCM3)
ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(千葉県)(MIROC5)
図 4-32 ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(千葉県)(MIROC5)
(12)アカイエカ成虫の対策優先度:千葉県

千葉県のアカイエカ成虫の対策優先度をMRI-CGCM3で計算した結果、RCP2.6では、現在から21世紀中頃、21世紀末にかけて対策優先度が特に高い地域がやや減少する。RCP8.5では、21世紀中頃から21世紀末にかけて、対策優先度の高い地域が増加する。

また、MIROC5で予測した結果、RCP2.6では、現在から21世紀中頃、21世紀末にかけて、対策優先度が特に高い地域がやや減少する。RCP8.5では、21世紀中頃から21世紀末にかけて、対策優先度が高い地域が増加する。

アカイエカ成虫の対策優先度(千葉県)(MRI-CGCM3)
図 4-33 アカイエカ成虫の対策優先度(千葉県)(MRI-CGCM3)
アカイエカ成虫の対策優先度(千葉県)(MIROC5)
図 4-34 アカイエカ成虫の対策優先度(千葉県)(MIROC5)
(13)ヒトスジシマカ成虫の対策優先度:東京都

東京都のヒトスジシマカ成虫の対策優先度をMRI-CGCM3で計算した結果、RCP2.6では、現在から21世紀中頃にかけて対策優先度が特に高い地域が増加し、21世紀末にかけては減少する。RCP8.5でも同様の傾向がみられるが、21世紀末には、対策優先度が高い地域が増加する。

また、MIROC5で予測した結果、RCP2.6では、現在から21世紀中頃にかけて対策優先度が特に高い地域が増加し、21世紀末にかけては減少する。RCP8.5でも同様の傾向がみられる。

ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(東京都)(MRI-CGCM3)
図 4-35 ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(東京都)(MRI-CGCM3)
ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(東京都)(MIROC5)
図 4-36 ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(東京都)(MIROC5)
(14)アカイエカ成虫の対策優先度:東京都

東京都のアカイエカ成虫の対策優先度をMRI-CGCM3で計算した結果、RCP2.6では、現在から21世紀中頃にかけて対策優先度が特に高い地域が増加し、21世紀末にかけては対策優先度が高い地域が減少する。RCP8.5では、現在から21世紀中頃にかけて対策優先度が特に高い地域が増加し、21世紀末にかけては対策優先度が高い地域が増加する。

また、MIROC5で予測した結果、RCP2.6では、現在から21世紀中頃にかけて対策優先度が特に高い地域が増加し、21世紀末にかけては減少する。RCP8.5では、現在から21世紀中頃にかけて対策優先度が特に高い地域が増加し、21世紀末にかけては対策優先度が高い地域が増加する。

アカイエカ成虫の対策優先度(東京都)(MRI-CGCM3)
図 4-37 アカイエカ成虫の対策優先度(東京都)(MRI-CGCM3)
アカイエカ成虫の対策優先度(東京都)(MIROC5)
図 4-38 アカイエカ成虫の対策優先度(東京都)(MIROC5)
(15)ヒトスジシマカ成虫の対策優先度:新潟県

新潟県のヒトスジシマカ成虫の対策優先度をMRI-CGCM3で計算した結果、RCP2.6では、現在から21世紀中頃、21世紀末にかけて対策優先度が高い地域がやや減少する。RCP8.5でも同様の傾向がみられる。

また、MIROC5で予測した結果においても、RCP2.6では、現在から21世紀中頃、21世紀末にかけて対策優先度が高い地域がやや減少し、RCP8.5でも同様の傾向がみられる。

ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(新潟県(北))(MRI-CGCM3)
図 4-39 ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(新潟県(北))(MRI-CGCM3)
ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(新潟県(南))(MRI-CGCM3)
図 4-40 ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(新潟県(南))(MRI-CGCM3)
ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(新潟県(北))(MIROC5)
図 4-41 ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(新潟県(北))(MIROC5)
ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(新潟県(南))(MIROC5)
図 4-42 ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(新潟県(南))(MIROC5)
(16)アカイエカ成虫の対策優先度:新潟県

新潟県のアカイエカ成虫の対策優先度をMRI-CGCM3で計算した結果、RCP2.6では、現在から21世紀中頃、21世紀末にかけて対策優先度が高い地域がやや減少する。RCP8.5では、21世紀中頃で対策優先度が高い地域がやや減少するが、21世紀末には増加する。

また、MIROC5で予測した結果、RCP2.6では、現在から21世紀中頃、21世紀末にかけて対策優先度が高い地域が減少する。RCP8.5では、21世紀中頃で対策優先度が特に高い地域が増加するが、21世紀末には減少する。

アカイエカ成虫の対策優先度(新潟県(北))(MRI-CGCM3)
図 4-43 アカイエカ成虫の対策優先度(新潟県(北))(MRI-CGCM3)
アカイエカ成虫の対策優先度(新潟県(南))(MRI-CGCM3)
図 4-44 アカイエカ成虫の対策優先度(新潟県(南))(MRI-CGCM3)
アカイエカ成虫の対策優先度(新潟県(北))(MIROC5)
図 4-45 アカイエカ成虫の対策優先度(新潟県(北))(MIROC5)
アカイエカ成虫の対策優先度(新潟県(南))(MIROC5)
図 4-46 アカイエカ成虫の対策優先度(新潟県(南))(MIROC5)
(17)ヒトスジシマカ成虫の対策優先度:山梨県

山梨県のヒトスジシマカ成虫の対策優先度をMRI-CGCM3で計算した結果、RCP2.6では、現在から21世紀中頃、21世紀末にかけて対策優先度が高い地域がやや減少する。RCP8.5では、21世紀中頃から21世紀末にかけて対策優先度が特に高い地域が増加する。

また、MIROC5で予測した結果、RCP2.6では、現在から21世紀中頃、21世紀末にかけて対策優先度が高い地域がやや減少する。RCP8.5では、21世紀中頃から21世紀末にかけて対策優先度が特に高い地域が増加する。

ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(山梨県)(MRI-CGCM3)
図 4-47 ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(山梨県)(MRI-CGCM3)
ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(山梨県)(MIROC5)
図 4-48 ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(山梨県)(MIROC5)
(18)アカイエカ成虫の対策優先度:山梨県

山梨県のアカイエカ成虫の対策優先度をMRI-CGCM3で計算した結果、RCP2.6では、現在から21世紀中頃、21世紀末にかけて対策優先度が高い地域がやや減少する。RCP8.5では、21世紀中頃から21世紀末にかけて対策優先度が特に高い地域が増加する。

また、MIROC5で予測した結果、RCP2.6では、現在から21世紀中頃にかけて対策優先度が特に高い地域が増加する。RCP8.5では、21世紀中頃から21世紀末にかけて対策優先度が特に高い地域が増加する。

アカイエカ成虫の対策優先度(山梨県)(MRI-CGCM3)
図 4-49 アカイエカ成虫の対策優先度(山梨県)(MRI-CGCM3)
アカイエカ成虫の対策優先度(山梨県)(MIROC5)
図 4-50 アカイエカ成虫の対策優先度(山梨県)(MIROC5)
(19)ヒトスジシマカ成虫の対策優先度:静岡県

静岡県のヒトスジシマカ成虫の対策優先度をMRI-CGCM3で計算した結果、RCP2.6では、現在から21世紀中頃、21世紀末にかけて対策優先度が高い地域がやや減少する。RCP8.5では、現在から21世紀中頃にかけて対策優先度が高い地域がやや増加する。

また、MIROC5で予測した結果、RCP2.6では、現在から21世紀中頃にかけて対策優先度が高い地域がやや減少する。RCP8.5では、現在から21世紀中頃にかけて対策優先度が特に高い地域がやや減少する。

ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(静岡県)(MRI-CGCM3)
図 4-51 ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(静岡県)(MRI-CGCM3)
ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(静岡県)(MIROC5)
図 4-52 ヒトスジシマカ成虫の対策優先度(静岡県)(MIROC5)
(20)アカイエカ成虫の対策優先度:静岡県

静岡県のアカイエカ成虫の対策優先度をMRI-CGCM3で計算した結果、RCP2.6では、現在から21世紀中頃にかけて対策優先度が高い地域がやや減少する。RCP8.5では、21世紀中頃から21世紀末にかけて対策優先度が高い地域が増加する。

また、MIROC5で予測した結果、RCP2.6では、現在から21世紀中頃にかけて対策優先度が高い地域がやや減少する。RCP8.5では、21世紀中頃から21世紀末にかけて対策優先度が特に高い地域が増加する。

アカイエカ成虫の対策優先度(静岡県)(MRI-CGCM3)
図 4-53 アカイエカ成虫の対策優先度(静岡県)(MRI-CGCM3)
アカイエカ成虫の対策優先度(静岡県)(MIROC5)
図 4-54 アカイエカ成虫の対策優先度(静岡県)(MIROC5)

活用上の留意点

本調査の将来予測対象とした事項

評価では、気温が上昇することにより両蚊成虫の発生時期が早期化・長期化し、それにより人が両蚊成虫に接触する期間(吸血される期間)が長くなることで感染症リスクが増加し得る点に着目し、生息期間マップ及び対策優先度マップの2種類のマップを作成した。

本調査の将来予測の対象外とした事項

評価では、感染症ウイルスの地域への流入、感染症を媒介する蚊であっても人に生存を依存せずに都市型ではない蚊(コガタアカイエカやシナハマダラカ等)、気温上昇に伴う年間世代数の増加、降雨による蚊への影響については対象外とした。

その他、成果を活用する上での制限事項

ヒトスジシマカ/アカイエカ成虫の生息期間
  • ヒトスジシマカ/アカイエカ成虫の生息期間マップは、日平均気温から算定した現在/21世紀中頃/21世紀末の両蚊成虫の生息期間を示したもので、蚊成虫の生息できる緑地や、両蚊の吸血源動物の多さ(人口の多さ)は考慮していない。
  • そのため、生息期間が長いとされている地域でも、蚊成虫が生息できる緑地がない、あるいは吸血源である人口が少ない場所では、実際には発生しない可能性がある。
  • 蚊は変温動物であるため、気温が高い年は蚊の生息期間が通常の年よりも長くなる。したがって、現在であっても気温が急激に高い年が発生すれば、生息期間は21世紀中頃/21世紀末の予測結果に近くなる。
ヒトスジシマカ/アカイエカ成虫の対策優先度
  • 感染症の発生には蚊・ウイルス・人の3つの要素が必要になるが、評価では、このうち蚊と人に着目している。対策優先度が高い地域は、仮にウイルスが何らかの形で流入したときに、感染症が発生しやすい地域であり、既に感染症が発生しているため対策優先度が高いということを意味していないことに留意する必要がある。
  • ヒトスジシマカ/アカイエカ成虫は人間依存の蚊であり、人口が多いところでは感染症患者になる可能性がある人口も多いことになるため、対策優先度は高くなる。
  • 人口と緑地、両蚊成虫の関係性については、人口密度が低い場所では、吸血源動物(人)が少ないため蚊成虫そのものが少なく、人口密度が低くて緑地がある場所でも、同様に吸血源動物が少ないため、蚊成虫が少ないと言える。人口密度が高く、かつ緑地がある条件が揃って、蚊成虫が生息可能な状況になる。
  • 居住人口が少ないため対策優先度がそれほど高くない地域であっても、宿泊客が外部から多く流入する地域では、感染症のリスクが高くなることが想定されるため、対策を検討する必要が出てくる。
  • ヒトスジシマカ/アカイエカ成虫の生息期間マップ同様、現在であっても、気温が急激に高い年が発生すれば、その年は21世紀中頃/21世紀末の予測結果に近い結果が出る可能性がある。
感染症ウイルス

蚊媒介感染症の発生には、ウイルス・蚊・人の3つの要素が必要となる。しかし、ウイルスについては、地域への流入の仕方(ウイルスに感染した人や野鳥の移動、感染蚊の発生場所等)の推定ができないため、評価では考慮していない。また、気温上昇により蚊の体内でウイルスが活性化する可能性を指摘する研究も一部で見られるが、科学的に明らかとなっていないため、考慮していない。

ヒトスジシマカ/アカイエカ以外の感染症媒介蚊

感染症を媒介し得る主な蚊として、コガタアカイエカ(日本脳炎等を媒介)やシナハマダラカ(マラリア等を媒介)が挙げられる。

しかし、これらの蚊は田舎型の蚊であり、人よりも牛や豚を吸血源として好むこと、また日本脳炎については、厚生労働省による日本脳炎ワクチン積極的勧奨により国内での発生数はほとんどなく、マラリアについても、戦前は土着のマラリアの発生があったが戦後は発生がなく、今後も国内での流行可能性は低いとされていることから本調査では対象としていない。

年間世代数の変化

気温が上昇することで、感染症媒介蚊の年間世代数(1年間に卵から親までを繰り返す回数)が増加し、生息数・個体群密度が増加することで感染症リスクが増加する可能性がある。以下の理由から、評価では年間世代数や生息数の変化は考慮していない。

  • 一定以上の高温条件になると蚊に発育障害が生じ、個体数が減少することが研究において指摘されている。
  • そのため、気温が上昇しても直線的に蚊が増え続けることはなく、神奈川県の現状のヒトスジシマカ成虫の年間世代数は7世代程度と推算できるが、気温が上昇しても年間世代数はあまり増加しない可能性も考えられる。
  • 世代数が増加するにつれて、蚊成虫の一個体の大きさが小さくなり、その分生態的に弱くなる研究もみられる。
降雨による蚊への影響

豪雨が降れば、雨水マス内に生息する蚊の卵・幼虫は雨水により流れてしまう可能性がある。一方で、成虫は豪雨時であっても藪の中に隠れて身を守るため、ほとんど影響はないと報告されている。

そのため雨水マス内で一時的に卵・幼虫が流れていなくなっても、数週間後には、成虫が雨水マス内で産卵し、幼虫がその地域で発生する可能性が高いことから、予測では降雨による影響は考慮していない。

適応オプション

感染症媒介蚊対策には、①環境改善(水溜り等の幼虫・成虫が発生・生息しやすい状況・場所をなくす)/②駆除(発生した幼虫・成虫を駆除する)/③個人レベルの対策(個人が蚊に刺されないようにする)/④緊急時への備え(感染症発生時を想定して予め備えておく)の4種類が挙げられる。

適応オプションの整理にあたっては、この感染症媒介蚊対策の4種類の分類項目に普及啓発を加えた、5つの項目で整理した。

表4-3 感染症媒介蚊対策の分類と対策例
分類 平時 緊急時(感染症発生時)
環境
改善
  • 幼虫が発生・成育する水溜り等をなくす、あるいは、成育を阻害するように環境を改善する。
  • 庭木の剪定、藪・雑草の刈り取り、表土の水はけの改善などにより蚊の成虫の潜伏場所を減らす。 等
-
駆除
  • 幼虫発生源に昆虫成長制御剤(IGR)等の薬剤を使用し、幼虫が成虫になることを抑制する。
  • 屋外の植物の茂み等、蚊成虫の潜伏場所周辺を化学的防除の主な対象として、殺虫剤の直接噴霧処理を行う。
  • 緊急時に備えて殺虫剤を備蓄する。等
  • 感染症媒介蚊の発生場所を特定し、発生場所周辺に殺虫剤の直接噴霧処理を行う。
  • 感染症患者の発生場所周辺や行動(移動先等)を特定し、周辺に殺虫剤の直接噴霧処理を行う。 等
個人レベルの対策
  • 皮膚が露出しない蚊に刺されにくい服装をする。忌避剤を使用する。
  • 建物の外部と遮断し窓を開けない。 網戸を設ける。蚊取り線香、液体蚊取り、電気蚊取りを使用する。 等
  • 感染症媒介蚊・感染症患者の発生場所周辺の住民・観光客等に蚊に刺されないように注意を促す。
  • 施設内に蚊が侵入しないように徹底する。 等
緊急時への備え
  • 感染症発生時を想定して、薬剤の散布方法の講習等を受講する。
  • 地域の衛生害虫の駆除業者等の業界団体と感染症発生時の対応について協定を結ぶ。 等
-
表4-4 環境改善に関する適応オプション
対応するリスク 適応オプション 想定される実施主体 評価結果 適応オプションの考え方と出典
現状 実現可能性 効果
行政 事業者 個人 普及状況 課題 人的側面 物的側面 コスト面 情報面 効果発現までの時間 期待される効果の程度
発生期間の長期化 庭木の剪定・藪・雑草の刈り取りを行う。【成虫対策】 普及が進んでいる
  • 定期的に実施する必要がある。
  • 大規模公園・施設では外部への委託等が必要である。
短期 昼間吸血性のヒトスジシマカ成虫は、植生が繁茂し、日照が届きにくく湿度の高いところに好んで潜んでいる。庭木の剪定、藪・雑草の刈り取り、表土の水はけの改善などは、潜伏場所を減らし、成虫密度を低減化することに役立つので、平時から励行することが望まれる。
(出典:チクングニア熱媒介蚊対策に関するガイドライン)
発生期間の長期化 人工容器や竹・切り株などに水が溜まらないように整頓・清掃をする。【幼虫対策】 普及が進んでいる
  • 定期的に実施する必要がある。
  • 大規模公園・施設では外部への委託等が必要である。
短期 敷地内に雨水が溜まった容器が放置してあれば、幼虫が発生しないように少なくとも1週間に一度は逆さにして水を無くすなどの対策が必要である。
(出典:蚊媒介感染症の対策・対応手順. H28 山梨県)
発生期間の長期化 常時貯水が生じやすい雨水マス内を定期的に清掃する。【幼虫対策】 普及が進んでいない 雨水マスの開け閉め、ゴミ・落ち葉等の清掃等、外部へ委託等する必要が多い 短期 雨水ますに関しては日常的に水をくみ出して、幼虫が生活できない環境を作ることも有効である。
(出典:デング熱・チクングニア熱媒介感染症の対応・対策の手引き 地方公共団体向け)
表4-5 (1) 駆除に関する適応オプション
対応するリスク 適応オプション 想定される実施主体 評価結果 適応オプションの考え方と出典
現状 実現可能性 効果
行政 事業者 個人 普及状況 課題 人的側面 物的側面 コスト面 情報面 効果発現までの時間 期待される効果の程度
発生期間の長期化 水たまり・雨水ますへ昆虫成長制御剤(IGR剤)を使用する。【幼虫対策】 普及が進んでいる
  • 定期的に実施する必要がある。
  • 薬剤の使用法に関する知識が必要である。
短期 公園施設の管理者は、幼虫の発生源の撤去や草刈等の環境対策を行うとともに、雨水マス、排水マス等への昆虫成長制御剤(IGR剤)の投入等の対策により、蚊の成虫の発生を抑制することが必要。
(出典:東京都蚊媒介感染症 行動計画. H28 東京都)
発生期間の長期化 定期的に水溜まりの水を除去する。【幼虫対策】 普及が進んでいる
  • 定期的に実施する必要がある。
  • 大規模公園・施設では外部への委託等が必要である。
短期 植木鉢の皿や雨水が溜まった古タイヤ、容器、遊具などについて、1週間に1度は水を無くす。また、古タイヤや容器など、撤去が可能なものは撤去を検討する。
(出典:茨城県蚊媒介感染症対応の手引き(第4版). H28 茨城県)
発生期間の長期化 屋内に侵入した蚊を駆除するように、蚊取り線香や蚊取りマット剤、空間用エアゾール剤を使用する。【成虫対策】 普及が進んでいる 適切な使用方法に関する知識が必要である。 短期 屋内に侵入した蚊成虫の駆除や吸血防止には、蚊取り線香剤、蚊取りマット剤や、液体蚊取り剤を用い、また、空間用エアゾール剤を使用する。
(出典:デング熱・チクングニア熱媒介感染症の対応・対策の手引き 地方公共団体向け)
発生期間の長期化 浄化槽や湧水槽、小水系で蚊成虫が発生する場合、蒸散剤を天井に吊るす。【成虫対策】 普及が進んでいない 適切な使用方法に関する知識が必要である。 短期 浄化槽や湧水槽などや小水系で 安定的に蚊成虫の発生がみられる場合には、ジクロルボス (VP) 樹脂蒸散剤(殺虫プレー ト)をその空間の天井に吊すと、成虫の発生を長期間抑制できる。
(出典:ウエストナイル熱媒介蚊対策に関するガイドライン)
表4-5 (2) 駆除に関する適応オプション
対応するリスク 適応オプション 想定される実施主体 評価結果 適応オプションの考え方と出典
現状 実現可能性 効果
行政 事業者 個人 普及状況 課題 人的側面 物的側面 コスト面 情報面 効果発現までの時間 期待される効果の程度
発生期間の長期化 アカイエカ成虫が越冬していそうな暗渠に冬場に殺虫剤を散布する。【成虫対策】 普及が進んでいない 正確な越冬場所は特定できない。 長期 アカイエカは成虫のまま、暗渠で越冬する。越冬する場所の特定はできないが、暗くて湿った場所に冬場に殺虫剤を散布しておくことで、翌春の発生を抑えることが可能となる。
(出典:有識者ヒアリング)
発生期間の長期化 屋内では空調を用いて外部と遮断し窓を開けないようにする。【成虫対策】 普及が進んでいる なし 短期 空調を用いて外部と遮断し窓を開けないことにより、屋内/施設内への蚊の侵入を防ぐ。
(出典:デング熱・チクングニア熱媒介感染症の対応・対策の手引き 地方公共団体向け)
表4-6 個人レベルの対策に関する適応オプション
対応するリスク 適応オプション 想定される実施主体 評価結果 適応オプションの考え方と出典
現状 実現可能性 効果
行政 事業者 個人 普及状況 課題 人的側面 物的側面 コスト面 情報面 効果発現までの時間 期待される効果の程度
発生期間の長期化 網戸の設置、網戸・扉の開閉を極力減らす。【成虫対策】 普及が進んでいる なし 短期 窓・扉の開閉を減らすことで、屋内/施設内への蚊の侵入を防ぐ。
(出典:デング熱・チクングニア熱媒介感染症の対応・対策の手引き 地方公共団体向け)
発生期間の長期化 皮膚が露出しない服を着用をし、蚊に刺されないようにする。【成虫対策】 普及が進んでいる なし 短期 皮膚が露出しないよう、長袖シャツ、長ズボンを着用し、裸足でのサンダル履きを避ける。ただし、薄手の場合には服の上から吸血されること、足首、首筋、手の甲などの小さな露出面でも吸血されることに留意する。
(出典:福井県蚊媒介感染症予防指針. H27 福井県)
発生期間の長期化 皮膚の露出部への忌避剤(ディート・イカリジン)を備蓄する。(行政・施設管理者の場合は無料配布等も含む)【成虫対策】 普及が進んでいる 忌避剤の適切な使用方法に関する知識が必要である。 短期 防蚊対策として有効性が証明されている忌避剤の成分には、「ディート(DEET)」と「イカリジン(ピカリジン)」の二種類がある。年齢に応じた用法・用量や使用上の注意を守って適正に使用する。
(出典:蚊媒介感染症の診療ガイドラン(第 5版))
発生期間の長期化 蚊取り線香や液体蚊取り、電気蚊取り等の忌避効果のある薬剤を使用する。【成虫対策】 普及が進んでいる 忌避剤の適切な使用方法に関する知識が必要である。 短期 蚊が屋内に侵入を許した場合は、捕殺するか、家庭用殺虫剤を使い防除を行う。昼間から蚊取り線香、蚊取りマット、液体蚊取りなどの殺虫剤を使用する方法も効果的である。薬剤の使用以外には、蚊帳の利用も効果が期待できる。
(出典:福井県蚊媒介感染症予防指針. H27 福井県)
表4-7 (1) 緊急時への備えに関する適応オプション
対応するリスク 適応オプション 想定される実施主体 評価結果 適応オプションの考え方と出典
現状 実現可能性 効果
行政 事業者 個人 普及状況 課題 人的側面 物的側面 コスト面 情報面 効果発現までの時間 期待される効果の程度
感染症発生 公園内で蚊の捕集調査・ウイルス検査を行う。【成虫対策】 普及が進んでいない 調査・検査を行う専門家が必要である。 長期 感染症発生時に迅速に市民・施設/公園利用者等に周知できるように、予め体制を構築しておく必要がある。
(出典:デング熱国内感染事例発生時の対応・対策の手引き地方公共団体向け (第1 版))
感染症発生 感染症発生時の薬剤散布について、関連団体(ペストコントロール協会等)と協定を締結する。【成虫対策】 普及が進んでいない 関連団体との協定の内容・範囲の検討が必要である。 長期 各都道府県には、殺虫剤メーカーや薬剤散布業者で構成される業界団体等(ペストコントロール協会等)があり、予め協定を締結しておくことで、薬剤の確保・散布を迅速に行うことが可能となる。
(出典:有識者ヒアリング)
感染症発生 関連団体(ペストコントロール協会等)との協議の上、殺虫剤を備蓄する。【成虫対策】 普及が進んでいない 薬剤の必要量について検討が必要である。 長期 各都道府県には、殺虫剤メーカーや薬剤散布業者で構成される業界団体等(ペストコントロール協会等)があり、それら団体と協議することで、必要量の殺虫剤を確保することができる。
(出典:有識者ヒアリング)
感染症発生 噴霧器の使い方に関する教育・訓練を職員に対して行う。【成虫対策】 普及が進んでいない なし 長期 殺虫剤の噴霧器の操作など訓練をしておくことで、感染症発生時に迅速・的確に散布することが可能となる。
(出典:有識者ヒアリング)
表4-7 (2) 緊急時への備えに関する適応オプション
対応するリスク 適応オプション 想定される実施主体 評価結果 適応オプションの考え方と出典
現状 実現可能性 効果
行政 事業者 個人 普及状況 課題 人的側面 物的側面 コスト面 情報面 効果発現までの時間 期待される効果の程度
感染症発生 感染症発生場所周辺の住民・観光客等に注意を促す体制を予め構築しておく。【成虫対策】 普及が進んでいない 行政庁内・関係機関との連携が必要である。 長期 市民や施設利用者等に蚊の注意喚起を行える体制を構築しておく。
(出典:有識者ヒアリング)
感染症発生 自治会・マンション管理組合等を通じ、敷地内の立入を前提とする防除作業の理解を得る。【成虫対策】 普及が進んでいない 行政職員では敷地内に立入できないため、予め住民・施設等に説明が必要である。 長期 個人の所有する敷地内は、許可なく薬剤の散布ができないため、感染症発生時に散布できるように、予め住民等の理解を得ておく必要がある。
(出典:有識者ヒアリング)
表4-8 その他(普及啓発等)に関する適応オプション
対応するリスク 適応オプション 想定される実施主体 評価結果 適応オプションの考え方と出典
現状 実現可能性 効果
行政 事業者 個人 普及状況 課題 人的側面 物的側面 コスト面 情報面 効果発現までの時間 期待される効果の程度
感染症発生 個人でできる蚊の対策方法や蚊がもたらす感染症について地域住民に周知する。(パンフレット、ポスター、広報誌等) 普及が進んでいる なし 長期 地域住民や施設管理者に対して、蚊幼虫の発生源となる水たまりの清掃等の取り組みを促すことや、蚊に刺されない対策を取るように促すこと、また感染症の注意喚起をおこなうこと。
(出典:専門家ヒアリング)
感染症発生 蚊の対策に関する講習会等を実施する。 普及が進んでいない なし 長期 殺虫剤の効果的な散布方法や薬剤の使用方法等に関する講習会に参加することで、平時から有効な感染症媒介蚊対策を進めることが可能となる。
(出典:専門家ヒアリング)
感染症発生 訪日外国人に対する蚊の注意喚起を行う。 普及が進んでいない なし 長期 SNS、メールマガジン、多言語情報誌等を通じて訪日外国人や日本語が不自由な外国人に対して感染症の注意喚起を行う。
(出典:専門家ヒアリング)
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