インフォグラフィック
イラストで分かりやすい適応策
気候変動の影響と適応策

死亡リスク等・熱中症等

健康分野|暑熱

影響の要因

気候変動による気温の上昇は、熱ストレスの生理学的影響による熱中症発症数の増加や、疾病発生・悪化への影響が懸念される。

現在の状況と将来予測

現在、全国的に熱中症による救急搬送人員、医療機関受診者数、死亡者数の増加傾向がみられる。また、日本全国で高温による超過死亡*が増加傾向にあり、特に高齢者で超過死亡数の増加傾向が⼤きい。

*⽇別の気温が⾼くなることにより全死亡がどの程度増加したかを⽰す指標(環境省2025)

将来、人々の暑熱適応の効果も考慮した熱中症死亡者数の予測研究によると、暑熱適応を考慮したとしても、基準期間(1995年から2014年)と比べて21世紀半ば(2031年から2050年)に1.6倍に増加すると予測されており(下図参照)、さらなる熱中症対策の必要性が示唆されている(Oka et al. 2025)。

RCP8.5シナリオの将来(2031~2050)気候下における熱中症リスクマップ(4GCMの平均値)
熱中症死亡者数の予測結果
(5つの気候モデルによる結果の平均)
Oka et al. (2025) Fig.10の基準期間及び21世紀半ばの 結果に和訳追記

適応策

熱中症は生命にかかわる病気だが、予防法を知っていれば防ぐことができる。予防は、脱水と体温の上昇を抑えることが基本であり、脆弱性(乳幼児、高齢者等)や環境(学校現場、職場、自宅等)に応じたきめ細やかな対策を行う事が有効となる。

分類
基本的な対策
情報収集
個人での対策
脆弱な集団への配慮
管理者がいる場等における対策
学校、幼稚園・保育園
職場
方法
[ 暑さ指数(WBGT)*の確認 ]

環境省熱中症予防情報サイトより暑さ指数(WBGT)の提供や、「熱中症特別警戒アラート・熱中症警戒アラート」の発表等が行われ、様々なメディア等を通じて注意が促されている。今後更に個人の行動変容を促す直接的な働きかけが重要となる。

個人での基本的な対策として、①暑さを避ける(暑い日や時間をさける等)、②こまめな水分補給、③急に暑くなる日に注意する(徐々に暑さになれる)、④日頃からの適度な運動で暑さに備えた体づくりを行う、⑤各人の体力や体調を考慮して行動する(無理をしない)、⑥集団活動の場では個人の体力や体調に合わせ無理をさせない、等の注意事項を守る(環境省2022)。

[ 高齢者 ]

熱中症による救急搬送人員の半数以上が高齢者(満65歳以上)となっている(総務省消防庁2025)。また高齢者の熱中症は自宅での発生が半数を超えていることから(環境省 2022)、自宅での対策(温湿度計の設置や冷房利用の推進等)が重要である。特に高齢者のみの世帯の場合は、①家族のサポート(IoT活用による見守りや電話等)、②自治体や訪問介護者、町内会等によるサポート(補助金、声掛け、避暑施設の開放等)など様々な方法で注意喚起を行い熱中症を防ぐ事が考えられる。

[ 乳幼児 ]

乳幼児は体温が上がりやす**、脱水にもなりやすいが、基本的な対策を守り、保護者が乳幼児の様子を観察しながら休憩や水分補給を促すことが熱中症の予防に繋がる。

**特に晴天時は地面に近い程気温が高く、高温環境になりやすいので注意が必要。

[ 共通 ]

活動や業務開始の前に暑さ指数(WBGT)や各人の体調を確認し、体調に応じた対応(活動の中止、室内作業への変更等)を取るようにする。また熱中症発生時の対応(応急処置等)の体制も確立しておくようにする。

[ 学校 ]

暑熱下のスポーツ活動(部活動、体育、昼休み等)では熱中症が起こりやすい為、教員は生徒の熱中症の兆候に注意し、適切に対処する必要がある。スポーツ活動中の熱中症予防として、①暑いとき無理な運動はしない、②暑熱馴化(暑くなり始める前(5~6月頃)に、暑さに慣れる馴化期間を設ける)、③各個人の「のどの渇き」に応じた自由な水分・塩分の補給、④特に重装備の服装やユニフォームを着用するスポーツ種目では、できるだけ休憩時間を設け、その間に防具をはずし衣服を緩め体温を下げる、⑤生徒の体調管理、が挙げられる。また、各学校で熱中症対策ガイドラインも策定され、実践的な取組が行われている(環境省・文部科学省2024)。

[ 幼稚園・保育園 ]

基本的な対策に加え、日陰下での水遊び・ミストシャワー等遊びを工夫すると共に、室内での熱中症対策にも配慮する事が挙げられる。

業種別の救急搬送人員数(2024年)は、製造業が235人、建設業が228人(厚生労働省 参照2026年1月14日)となっている。2025年の労働安全衛生規則改正により、事業者に熱中症対策の強化のための「体制整備」「手順作成」「関係者への周知」が義務付けられた。農林水産業では2,226人(同年、総務省消防庁)となっており、上記規則が該当しない個人の農業従事者等の予防と応急処置も非常に重要である。

[ 作業環境管理 ]

高温多湿作業場所(WBGT 基準値を超え、又は超えるおそれのある場所)においては、屋外(簡易屋根の設置等)、屋内(冷房設備の設置等)それぞれで対策を行うと共に、休憩場所の整備も行う。

[ 作業管理 ]

作業休止時間や休憩時間の確保、熱への馴化、水分・塩分の補給、服装への配慮、作業中の巡視、単独作業の回避等を行う。

[ 健康管理 ]

熱中症の発症に影響を与えるおそれのある疾患(糖尿病、高血圧症、心疾患、腎不全、精神・神経関係の疾患、広範囲の皮膚疾患、感冒、下痢等)がある労働者については、医師の意見を聞き人員配置を行う。

*人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目した指標で、人体の熱収支に与える影響の大きい①気温、②湿度、 ③日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境、 の3つを取り入れた指標(環境省参照2026年1月14日)。暑さ指数(WBGT)が28(厳重警戒)を超えると熱中症患者が著しく増加する事が報告されている。

社会的視点

各地域において熱中症の発生場所や年齢など要因を解析し、その要因(独居の高齢者、スポーツ施設等)に応じた実効的な対策をとり、熱中症の発生を減らしていくのが重要となる。また情報提供も、注意喚起より一歩進んだ実際の行動に繋がるものになるよう具体性を持たせる。これら対策の効果も検証し、好事例は他地域に共有することが望ましい。

適応策の
進め方

【現時点の考え方】 熱中症の症状は一様ではなく、症状が重くなると生命へ危険が及ぶが、適切な予防法を知っていれば熱中症を防ぐことができる。一人ひとりが熱中症について正しい知識を持って予防を心がけ、熱中症になったときに適切な処置を行うことができるよう備えることが重要である(環境省 2022)。

【気候変動を考慮した準備・計画】 現在は未発生であるが今後発生の可能性がある極端な高温に備え、国、地方公共団体、事業者等の全ての主体において、起こり得る影響を十分に認識し、効率的かつ機動的な対応ができるよう事前に必要な対策を整理し、準備する(閣議決定2023年5月30 日より引用)。

2026年1月改訂