インフォグラフィック
イラストで分かりやすい適応策
気候変動の影響と適応策

ヒートアイランド*

国民生活・都市生活分野|健康な生活とその基盤|
健康的な暮らし
協力:東京大学大学院新領域創成科学研究科

影響の要因

気候変動による気温上昇にヒートアイランド現象による昇温が加わることで熱ストレスが増大し、都市生活にさらに大きな影響を及ぼすことが懸念されている。

現在の状況と将来予測

現在、都市化の影響により気温が上昇している。
また、人々が感じる熱ストレス増大が指摘され、熱中症リスクの増加に加え、 発熱・嘔吐・脱力感による搬送者数の増加、睡眠の質の低下による睡眠障害有症率の上昇等が報告されている。

真夏日・猛暑日・熱帯夜日数の将来予測
都市化の影響による平均気温の上昇**
出典:気象庁(2018)を改変

**都市の地表面状態や人工排熱を考慮したシミュレーション実験」から、「都市の影響を除去した実験」の差分

東京・名古屋・大阪を対象とした特定日日数の将来予測研究では、 2070年代8月には猛暑日が増加し、熱帯夜日数は記録的な猛暑年となった2010年8月とほぼ同程度の出現率となると予測されている。また、だるさ・疲労感・熱っぽさ・寝苦しさといった健康影響が現状より悪化すると予測されている(下図)。

真夏日・猛暑日・熱帯夜日数の将来予測
真夏日・猛暑日・熱帯夜日数の将来予測
出典:日下他(2013)

適応策

都市計画や街区設計等の段階からヒートアイランド現象を緩和して都市の気温を下げる街づくりに配慮する。また既存の街では、求める効果(日中の暑熱対策主体もしくは夜間も重視、冬季の温度環境も勘案等)やコスト(維持費用の大小等)に応じた対策を進める事が考えられる。

影響
複数(熱ストレス、健康影響、ピーク電力等)日中の人への熱ストレス
分類
都市の気温低減
街区・建物の気温低減
人への熱ストレス低減
スケール
都市~地区レベル
  • 地表面被覆の改善が特に重要

    地表面被覆の改善
  • 人工排熱の低減
  • 都市形態の改善
街区レベル
  • 植物の活用や地表面被覆を改善することで、街区の気温低減に寄与する。

    街の緑化
    路肩の拡幅
  • 遮熱化
  • 保水化
建物レベル
  • 建物の工夫により、建物内外の気温低減に寄与する。

    建物の緑化

    屋上緑化

  • 壁面緑化

  • 窓面等の再帰反射化**

    **開発要素を含む

地点レベル
  • 人の周りに直接作用して熱ストレスを低減する。

    日射を遮る

    緑陰、人工日除け、街路樹等

    緑陰、人工日除け等
  • 風の活用

    送風ファン等

    送風ファン等
  • 水の活用

    微細ミスト等

    微細ミスト等
分類
都市の気温低減
街区・建物の気温低減
人への熱ストレス低減
スケール
都市~地区レベル
街区レベル
建物レベル
地点レベル

ヒートアイランド対策は、現在進められている脱炭素都市づくりや、都市緑地の保全・緑化とも関係が深く、一体的な取組が進められている。

方法
[地表面被覆の改善]

熱の蓄積が多く気温上昇の原因となる地表面の人工被覆改善が重要である。街路等の緑化の充実を図り風の温度上昇をできるだけ抑えたり、その周辺において、建物の敷地・屋上・壁面の緑化や高反射化、舗装の改善、水面(水辺空間)の確保を図ること等に配慮することが有効である。

[ 人工排熱の低減 ]

「風の道」を流れる冷涼な風を、人工排熱(エアコン等の設備機器や照明、自動車等から排出される熱)により暖められることなく都市空間内に導くため、周辺において、地中熱ヒートポンプや下水熱の利用、地域冷暖房の導入等により大気への顕熱放出の抑制を図る(国土交通省都市局都市計画課 2013より引用)等に配慮することが有効である。空気熱源ヒートポンプ給湯機による夜間の気温低減効果(Yamaguchi et al., 2025)や電気自動車の導入による冷却効果(Yamaguchi et al., 2024)の研究事例も示されている。

[都市形態の改善]

都市スケールでは「風の道」となる河川や緑地等をネットワークで結ぶ等配慮し、地区スケールでは都市空間に取り込んだ冷涼な風を阻害しない建物配置の工夫等の配慮が有効である(国土交通省都市局都市計画課 2013)。東京湾から流れ込む風の道確保のための技術指針も示されている(東京都2020)。

街区レベルでは、複数の取組を組みあわせて検討する。風向や緑の効果を視覚化し、建築主等が暑さに考慮したまちづくりができるよう支援している事例もある(横浜市2024年12月25日)。また雨水の貯留・浸透機能も備えた緑化や保水化は、雨水流出抑制の効果も期待される。

[街の緑化]

街路樹の整備や公開空地の植樹等により、緑陰による地表面温度上昇の抑制や、体感温度を下げる効果、植物の蒸発散による周辺の気温上昇緩和効果が期待される。

[遮熱化]

路面に当たる日射の一部を上空に反射させ、路面の温度上昇を抑制する(環境省2023)。人が受ける反射日射は増えるため、日当たりの良い車道等への施工が効果的である。遮熱性舗装や遮熱性ブロックが実用化されている。

[保水化]

保水性舗装や保水性建材等を活用して路面や屋上面を濡れた状態に保ち、気化熱により路面等の温度上昇を抑制・冷却する(定期的に給水する必要有り)。

[建物の緑化]

■緑化
屋上面や建物壁面を緑化し、温度上昇を抑制する。地表面では芝生や草本類等、壁面ではつる性植物や緑化パネル等が用いられている。多くの場合、灌水等の維持管理が必要でコストもかかるが、建物の価値向上や生き物の生息地保全など副次的な効果も期待できる。

■窓面等の再帰反射化
建物(オフィスビル、商業施設等)の窓や壁面に当たる日射の一部を上空に反射させ、地上の歩行者への反射日射を抑制する。窓面に適用する透明なフィルムの他、外壁用タイルが開発されている(環境省2023)。冬季の日射も反射され、暖房需要が増えるため、目的(夏季の暑熱対策重視等)に応じて施行することが考えられる。

[日射を遮る]

休憩スペース、バス停、商業施設等において、緑陰(樹木やつる性植物(藤棚)等)や人工日除けにより日陰を作る日射遮蔽対策。暑さに大きく影響する日射を遮ることが最も効果的である。

[風の活用]

送風ファンでからだに直接、風を当てて、皮膚表面からの放熱を促進する。電気が使えれば簡便かつ安価に導入が可能な対策で、熱だまりを解消し、気温の上昇を抑制する効果も期待できる。(環境省2023)

[水の活用]

微細ミストや冷却ベンチ等が実用化されている。微細ミストは、大気中へミストを噴霧し、噴霧直後に蒸発する気化熱を利用して局所的に気温を低下させる。ミストの粒子径は、製品によって異なるが10~30μmと微細であり、短時間で気化するため人が濡れを感じることなく暑さを和らげることができる(環境省2023より引用)。

体感温度
SET*低減効果
(環境省2023)
-
遮熱化・保水化:2℃以下
(遮熱化は日没後の夕刻における効果)
地表面等の緑化・再帰反射化:2℃以下
緑陰:4℃以上、人工日除け
(簡易):3℃程度~4℃以上、送風ファン・冷却ベンチ:3℃程度、微細ミスト:2℃以下
所要時間
短期~中期
短期
短期
短期

*SET(標準有効温度):複数の温熱要素(環境側の気温,放射,湿度,気流の温熱4要素 と人体側の着衣量、代謝量)を総合して単一の温度で表す温熱指標(深井1994)。

社会的視点

2050年の日本の人口は、大都市やその郊外ならびに沖縄県で増加する一方、多くの市区町村で減少すると推計され、都市部への人口集中がさらに進むと予測されている(国立社会保障・人口問題研究所 2023)。また気候変動により将来の極端な大雨の発生頻度の増加や気温上昇等が予測されており(文部科学省 気象庁2025)、より人口が集中した状況で気候変動対策も踏まえた住みやすい都市づくりを考えることが重要となっている。

適応策の
進め方

【現時点の考え方】 ヒートアイランド対策大綱(平成25年5月改定)が改定され、①人工排熱の低減、②地表面被覆の改善、③都市形態の改善、④ライフスタイルの改善、⑤人の健康への影響等を軽減する適応策の推進を柱として対策が進められている。また対策の導入の際には、コベネフィット(温室効果ガス排出削減にも貢献するヒートポンプや雨水の貯留・浸透機能を有する緑地等)の視点も考慮することが重要と考えられる。

【気候変動を考慮した考え方】 ヒートアイランド現象は冬季の都市高温化をも含むため、単純に気温を低下させると冬季の暖房需要を増大させ、ひいてはCO²排出量を増大させてしまう。いうまでもなく地球温暖化は重要な環境問題として認識されており、地球温暖化抑制と矛盾しないヒートアイランド対策の導入が望まれる。(井原2008)

【気候変動を考慮した準備・計画】 ヒートアイランド現象を緩和するため、実行可能な対策を継続的に進めるとともに、短期的に効果が現れやすい対策を併せて実施する。また、ヒートアイランド緩和には長期間を要することを踏まえ、ヒートアイランド現象の実態監視や、ヒートアイランド対策の技術調査研究を行う。(閣議決定 2023年5月30日(一部変更) )

2026年1月改訂
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