コーヒーの未来を守るための生産国での取り組み
キーコーヒー株式会社
業種:製造業
| 更新日 | 2025年10月29日 |
|---|---|
| 掲載日 | 2018年11月22日 |
| 適応分野 | 産業・経済活動 / 農業・林業・水産業 |
会社概要

キーコーヒー株式会社は、1920年(大正9年)の創業以来、「コーヒーを究めよう。お客様を見つめよう。そして、心にゆたかさをもたらすコーヒー文化を築いていこう。」という企業理念のもと、日本におけるコーヒーのリーディングカンパニーとして、世界基準の高い品質と時代の求めるおいしさを常に探究し、海外におけるコーヒー農園事業から、コーヒーの製造・販売ならびにコーヒー関連事業経営に至るまでトータルに事業を展開する。
気候変動による影響
気候変動に伴う気温や湿度の上昇、雨量や降雨のタイミングの変化などが、コーヒーの生産現場に影響を与えている。気温や湿度の上昇は、さび病というコーヒーにとってもっとも深刻な病気が発生しやすくなり、収穫量の減少や、品質低下を招く。
今後さらに気候変動が進めば、コーヒー栽培に適した土地が大幅に減ることも予想されている(図1、図2)。
気候変動リスクに関する取組
キーコーヒーは、1970年代からインドネシア・トラジャ地方に直営農園を運営、1978年には日本で「トアルコ トラジャ」として発売した。当時から小規模コーヒー生産者や現地関係者と共においしいコーヒーを作り続けてきた。50年以上前からコーヒー生産国で手掛ける事業、そしてその知見を活かして2024年には環境省から業務を受託し、エチオピアでも小規模コーヒー生産者への支援を行うなど、コーヒーの未来を守るべく、持続可能なコーヒー生産の実現に向けた取り組みを今もなお推進している。
① インドネシアでの栽培試験「国際多地域実証試験」
当社は、2016年よりコーヒーに関する国際的な研究機関であるWCR(World Coffee Research)と協業し、気候変動に適応する品種開発に繋がるIMLVT(International Multi-Location Variety Trial:国際多地域実証試験)に取り組んでいる(図3)。IMLVTは、世界各国から品質に優れたアラビカ種をWCR本部に集めて培養し、繁殖させたものを各国の生産地で栽培試験を実施している。この栽培試験によって、気候変動や病害虫への耐性を持ちながら、豊かな味わいも備えた優良品種を発掘することを目指している。
インドネシアにある当社直営のパダマラン農園では、コロンビアやパナマなど世界各地を原産とするコーヒーの苗木が約40種植えられた一角を研究場所として提供し、ともに試験活動を実施している。
2017年に試験用の苗を圃場に植樹してから研究を重ねて3年目を迎えた2019年には初めていくつかの品種で大規模な開花がみられた。そして2021年、試験圃場で収穫されたコーヒーのカップテスト(香味試験)を現地で初めて実施し、その後も順調に成長した数十種の品種を収量データとともに味わいをチェックした。
2025年時点においてもIMLVTを継続しており、各国から集められたデータはWCRにて分析される。
② エチオピアでの小規模生産者支援
2024年に、環境省案件「令和6年度 気候変動に脆弱な小規模コーヒー生産者の明るい未来提案業務」を受託した。キーコーヒーが持続可能なコーヒー生産の実現に向けて、2022年4月に社長直轄部署として新設した「コーヒーの未来部」の社員が、アラビカ種コーヒーの原産国と言われるエチオピアを複数回に分けて現地を訪問した。現地の農園の視察や小規模コーヒー生産者へインタビューを実施し、気候変動がコーヒーの生産にどのような影響を与えているかなどを調査した。
調査内容をまとめた資料「コミュニケーションプロダクト」を日本語・英語のほか、エチオピアの公用語の一つであるアムハラ語で制作したほか、小規模コーヒー生産者や現地の研究者に向けて営農セミナーも実施した。またエチオピアでは、一般的に収穫したコーヒーチェリーは果肉が付いたまま天日干しして乾燥させるが、気候変動による降雨サイクルの変化で天日干しの期間中に雨が増えていることが多く、品質劣化や収量が減少するなどの課題がある。そこで、キーコーヒーは手動の木製脱肉機(ハンドパルパー)を実際に日本から現地へ持参した。そして、営農セミナーでは、小規模コーヒー生産者に向けて、果肉除去の手法を実際に行いながら(図4)収穫したコーヒーの果肉を除去してから天日干しして乾燥させる方法を提案した。
効果/期待される効果等
試験結果に基づいた気候変動に最適な品種を明らかにし、地域と情報・技術をシェアすることで、収量の増加や品質の向上、さらには生産者の経済的な向上も期待できる。
また、新たに見つけた品種をコーヒー生産者に流通させることで、持続可能なコーヒー生産の実現が可能となる。





IMLVT(International Multi-Location Variety Trial)の取り組み
図3 IMLVT活動の様子
自社関連サイト
