概要

研究課題名

 極端高温等が暑熱健康に及ぼす影響と適応策に関する研究

研究代表者

 岡 和孝(国立環境研究所)

研究実施期間

 2023年4月~2026年3月

背景・目的

 気候変動やヒートアイランドに伴う気温上昇に伴い、我が国では熱中症による救急搬送数や死亡者数が高い水準で推移しています。この状況を緩和するために、国は2021年度に熱中症警戒アラートを全国展開したところであり、その効果検証は今後のアラートの在り方を検討するためにも喫緊の課題となっています。なお、熱中症に係る救急搬送数の50%、死亡者数の80%を高齢者が占めます。その大半が屋内でエアコンを使用していない状況で発生しており、高齢者に対する適切なエアコン使用の促進が急務となっています。
 世界的にも高温による熱中症等の健康影響が大きな問題となるなか、近年事態がさらに深刻になりつつあります。カナダのブリティッシュ・コロンビア州では2021年6月29日に49.6度の最高気温を記録し、一週間で500人以上の熱中症による死亡者が発生しました。2022年においても世界各地で極端な高温(以下、極端高温)が発生しており、ポルトガルとスペインでは7月17日だけで1000人以上が「暑さ」が原因で死亡しました。日本においても2022年6月下旬から7月上旬に猛暑日が連続するなど異常な高温が発生し、多数の救急搬送が生じています。既に熱中症が深刻である我が国において、気候変動により今後さらに極端高温が深刻化、多発化すれば、今まで経験していない甚大な熱中症被害の発生や、それに伴う医療・介護供給体制の崩壊が危惧されます。このような事態を未然に防ぐために、熱中症警戒アラートの在り方も含め、効果的な対策の在り方を検討することが喫緊の課題となっています。
 上述の課題を解決するためには、今後我が国において極端高温がどの程度深刻化、多発化するか、極端高温が発生した際の熱中症被害はどの程度か、医療・介護供給体制のレジリエンスは十分であるか、熱中症警戒アラートの効果はどの程度か、そしてどのような対策が有効か等の問いに対する科学的回答を有した上で、適切な準備が必須となります。本研究ではこの問いに対する科学的回答を創出し、その知見の活用を通じて我が国の熱中症に係るレジリエンス向上を目的に実施するものです。

国立研究開発法人国立環境研究所 〒305-8506 茨城県つくば市小野川16-2
Copyright © National Institute for Environmental Studies. All Rights Reserved.