令和7年度 地域の気候変動適応推進に向けた意見交換会

開催日 2025年12月17日(水)
開催地 コングレスクエア日本橋
参加者 地域気候変動適応センター(LCCAC)・地方公共団体など:63名(都道府県_54 ・市_7)
国の研究機関:13名

地域の気候変動適応を推進することを目的に、「令和7年度地域の気候変動適応推進に向けた意見交換会」を開催いたしました。

集合写真

地域気候変動適応センター(LCCAC)やセンター設置に取り組む自治体関係者や国の研究機関の方にご参加いただきました。
午前中に4つのLCCACから、環境部局以外の部局と連携して適応策を実施している事例についてご講演をいただき、午後には、各LCCACが分野ごとのグループに分かれ、他部局・他機関との連携や、適応情報の施策への反映等についてグループディスカッションを行いました。

講演

情報発信・普及啓発の取組み紹介~気候変動を「自分ごと」化し、次の一歩を後押し~

おおさか気候変動適応センターでは、「情報発信」「セミナー」「イベント」「出前授業」の4つを柱に、府民へ“適応”を届ける普及啓発活動を実施しています。情報発信の取組として、ホームページでは気候変動の影響や適応策を7分野で整理し、将来予測なども含めた情報プラットフォームとして発信しています。あわせて、SNS(X)やYouTubeを活用し、ショート動画などを含めた継続的かつ府民にわかりやすい情報発信を行っています。また、大阪府と連携し、Googleマップを活用した「OSAKAひんやりマップ」や「適応ハンドブック」を通じて、府民が実生活で活用できる情報提供を進めるとともに、対象やニーズに応じてセミナーやイベント、出前授業を実施し、理解促進と行動変容につなげています。
情報を届けたい相手に確実に届けることを重視し、広報手法の工夫や関係者との連携を通じた、より実践的な普及啓発の取組についてご紹介いただきました。

おおさか気候変動適応センターの講演資料の一部
講演の写真
(発表者:おおさか気候変動適応センター 梅本 敬史 氏)

分野横断で進める気候変動対策

佐倉市気候変動適応センターは、第5次佐倉市総合計画中期基本計画において、地方創生と並び気候変動適応を重点施策に位置づけ、分野横断的に取り組んでいます。
広報誌やホームページによる市民周知に加え、ハンドブック配布やESD(Education for Sustainable Development)を通じた小中学生向けの普及啓発を実施し、気候変動を「自分事」として捉えてもらう取組を進めています。
また令和4年度からは、グリーンインフラ研究者との意見交換会・勉強会を市役所内で環境部局以外の部局も交えて実施し、研究成果の共有と施策連携につなげています。田んぼダムでは「農業と防災」の両立を目指し、今後は市内にとどまらず上流域の自治体とも連携を進めていく方針です。放置竹林の整備ではバイオ炭の活用を図るなど、シナジー効果のある施策間連携にも取り組んでいます。
適応と緩和を一体的に進めるため、行政に加え、農業者、企業、研究機関など多様な主体と連携し、次世代につながる持続可能なまちづくりをご紹介いただきました。

佐倉市気候変動適応センターの講演資料の一部
講演の写真
(発表者:佐倉市気候変動適応センター 内田 亨 氏_代理 坂 健郎 氏)

岐阜県気候変動適応センターにおける庁内連携の取組について

岐阜県気候変動適応センターは、岐阜県と岐阜大学が連携して設置された共同設置型センターとして、行政と研究機関の知見を融合した気候変動適応の取組を進めています。県庁内の部局横断的な連携体制のもと、豪雨や猛暑による防災、農林水産業への影響などを対象に、大学と連携して気候変動影響評価や共同研究を実施しています。関係課が新たな施策を進める際に不足する、気候変動による影響等の情報を適応センターが提供することで、施策立案を支援し、流域治水をはじめとする具体的な施策の検討につなげています。
県民や関係機関の理解促進を図りながら、地域に即した気候変動適応を推進する取組についてご紹介いただきました。

岐阜県気候変動適応センターの講演資料一部
講演の写真
(発表者:岐阜県気候変動適応センター 石橋 采己 氏)

福島県の気候変動適応に関する取組について

福島県気候変動適応センターは、適応7分野のうち、健康、自然災害、農林水産業を重点分野として、県庁内の各部局と連携し気候変動適応の取組を推進しています。農林水産業分野における取組事例では、気候変動に対し優先的に対応が必要な事項について、関係部局や研究機関と連携して把握するとともに将来予測を実施しています。健康分野における取組事例では、地域包括支援センター等の協力のもと高齢者など熱中症のリスクが高い層を対象とした普及啓発を実施しています。自然災害分野における取組事例として、流域治水の理解促進の観点から、関係部局や市と連携してワークショップ等を開催しています。
これら気候変動適応の取組を市町村や関係機関と連携しながら、地域に即した気候変動適応を推進している点についてご紹介いただきました。

福島県気候変動適応センターの講演資料一部
講演の写真
(発表者:福島県気候変動適応センター 寺内 浩晃氏)

グループディスカッション

グループディスカッションでは、参加者があらかじめ記入したワークシートをもとに、「気候変動による自治体における危機・優先される取組」の分野ごとにグループに分かれ、意見交換を行いました。

ワークシートの写真
図 各LCCACに作業いただいたワークシート

各分野とグループの内訳は以下のとおりです。(環境省・CCCAメンバー含む)

  • 「水環境・水資源」分野:5名 1グループ
  • 「国民生活・都市生活」分野:34名 5グループ
  • 「農業・林業・水産業」分野:12名 2グループ
  • 「自然生態系」分野:6名 1グループ
  • 「自然災害・沿岸域」分野:12名 2グループ
  • 「産業・経済活動」分野:6名 1グループ

「水環境・水資源」分野では、透明度の高い海域やサンゴ礁が赤土流出の影響を受けやすい一方、流出量と堆積量は必ずしも一致しない点が共有されました。水温上昇による水産業への影響が懸念される中、ダム雨量や水温データの活用には課題があり、地域特性を踏まえた影響評価の必要性が示されました。

「国民生活・都市生活」分野では、(適応法に基づく)クーリングシェルターとその他の涼み処は一体的に運用されているものの、名称や利用条件の分かりにくさによる混乱が課題とされました。取組推進にあたっては、地域気候変動適応計画を契機とした他部局連携やトップダウンの役割分担が有効であり、熱中症対策を中心とした福祉・教育分野との連携事例が共有されました。また、意思決定可能な会議体の重要性や、運用負担、データ・情報整理に関する課題も挙げられました。

「自然生態系」分野では、多様な関係者とのネットワーク構築を基盤に、教育・普及啓発や大学連携による情報発信が進められていることが共有されました。また、在来種・外来種管理や自然共生サイトなど、地域特性を生かした取組の重要性が示され、分野横断的な連携を通じた適応策の実践の必要性が確認されました。

「産業・経済活動」分野では、脱炭素に比べて気候変動適応はビジネスにつながる可能性がある一方、行政・企業ともに対応は十分に進んでいないことが共有されました。降雪量減少によるスキー場への影響や、グリーンシーズン観光への転換などの事例、酒米や発酵産業を含む中小企業への影響が紹介され、今後は科学的エビデンスを基に、関係部局や経済団体、金融機関と連携し、適応ビジネスの展開を進める必要性が示されました。

「自然災害・沿岸域」分野では、市町村や公設研究機関との地域間連携を活用したネットワーク強化の重要性が共有されました。また、VR体験などの体験型研修や防災教材の活用を通じた普及啓発、LCCACの認知度向上が課題として挙げられました。今後は、将来予測データなどの科学的エビデンスを基に、他部局との連携を進めるとともに、適応施策の成果を可視化し、予算確保につなげていく必要性が示されました。

「農業・林業・水産業」分野では、気候変動の影響や適応に対する認知不足が、庁内外の連携や予算確保の障壁となっていることが共有されました。既存業務が「適応」に該当することに気づかれていない点も課題とされました。情報発信では、広報誌やHP、SNS等を活用しつつ、現状の業態を否定せず、新たな業態への移行や両者の併用を促す丁寧な発信の重要性が指摘されました。また、短期的に活用可能な予測情報と、政策立案に資する長期予測の双方が必要であるとの認識が示されました。今後は、LCCACが提供可能な情報を明確に示し、試験研究機関や関係部局とのマッチングを進めるとともに、普及啓発を通じた認知向上と、適応を位置づけた施策・計画への反映を進めていく必要性が示されました。

総括

最後に、弊所・上田副センター長より参加者への感謝と総括がありました。

  • 昨年度までの議論は普及啓発の取組が中心であったが、今年度はより幅が広がり、施策に近い取組まで突っ込んだ議論がなされた。分野別に議論を深めたことで、これまで課題であった点について解決の糸口が見えてきた。
  • 昨日12/16の気候変動適応の研究会においてLCCACによるポスターセッションへの積極的な参加に感謝するとともに、活発な意見交換の場となったことを評価したい。その中では、多くのLCCACから、熱中症関連のポスター発表をいただいていた。
  • 熱中症対策は環境部局が取り組みやすい分野であり、第一歩として成果が期待されるとともに、福祉部局との連携や高齢者対策など、議論が一段深まった。今後は、熱中症対策等の得意分野を起点として、庁内連携が不可欠な「適応」全体へと取組を広げていくことが重要である。
  • 人員や予算の制約に直面する中、さらに先へ進むには、個別対応にとどまらず、地方創生など自治体の主要政策の中に適応策を少しずつでも位置付けていくことで、部局間連携の強化や安定的な財源確保につなげていくことが鍵となる。
  • 適応に関する明確な指標がない中で、これまでの取組の積み重ねや業務ガイドブックの枠組み自体が、今後の指標となり得る。
  • 評価指標の検討や次期中長期計画に向けた取組は、関係者の協力なくしては成り立たず、今後もこのような意見交換の機会を大切にしていきたい。

なお、前日の12/16(火)に令和7年度 気候変動適応の研究会 研究発表会・分科会が同会場で開催され、意見交換会と併せて多数のご参加を賜りました。

アンケート結果(回答件数47件※各設問の回答総数は不定)

事後アンケート結果(回答件数47件)

参加者の所属機関
参加者の所属機関(単位:人)
意見交換会の満足度について
意見交換会の満足度について(単位:%)
参考になったプログラム
参考となった講演、プログラム(単位:%)

感想(一部抜粋・改変)

  • 初めて参加したが、会場の熱気や、同じ課題を抱えるセンター同士の意見交換を対面で聞くことで、業務に対するモチベーションが上がり、また実務的な面においても大変参考になる例が多く、勉強になった。
  • 他のLCCACでの周知啓発方法やツールの事例等を紹介いただき、自組織でも活用できるものについてアイディアをいただけた。直接担当の方に、コンセプトや利活用方法をお伺いできたのも非常に参考になった。
  • グループディスカッションでは、今後の取り組みのヒントも得られたし、本音トークもできてよかった。
  • ハブとなる専門家や研究機関を通じた他部局との連携の事例を聞き、非常に勉強になった。
  • 比較的どの自治体も課題は共通する部分が多く、それに対するアイディアを聞くことができたので、今後の施策に生かしていきたいと思います。
  • 適応を部局横断的に連携しながら進めていくためには、その体制・仕組みをまず作ってしまうことが一番近道であると改めてつくづく感じた。
  • 気候変動に関する分野は自治体での取り組みに顕著な差があるため、全国的な情報交換をもとに率先自治体の経験を広げていくきっかけになっていると感じた。
  • 特別目新しいものがなかった。気候変動を災害等のレジリエンスと捉える従前からの視点ばかりで新しい情報収集ができなかった。
出典・関連情報
(2025年2月3日掲載)