世界で見られるさまざまな気象災害
以下では、近年世界中で発生している気象災害のうち、特に大規模なもの、特徴的なものを示します。
熱波や森林火災が増えている
近年、広範囲で顕著な高温が続く熱波や森林火災などの発生が増加しており、気候変動により今後さらに被害が大きくなることが考えられます。2020年の世界平均気温は観測史上最高となり、特にシベリアでは長期間にわたって高温が続き、北極圏の観測史上最高気温となる38.0℃が観測されました。また、米国カリフォルニア州デスバレーでは同年8月に、少なくとも過去80年間で世界最高の気温となる54.4℃が観測され、さらにカリフォルニア州を含む米国西部では、夏から秋にかけて大規模な森林火災が発生し、8,500棟を超える建物が被害を受け、41人が死亡しました。
大雨による洪水被害が発生している
大雨による大規模な洪水被害などが発生しており、2022年には、バングラデシュやパキスタンで、近年では最大の被害をもたらした洪水が起こりました。
バングラデシュでは、影響を受けた160万人の子どもを含む400万人が緊急支援を必要とし、3万6,000人以上の子どもが、家族とともに過密な避難所への避難を強いられました。
また、パキスタンでは、国土の3分の1が水没し、1,200人以上の死者が報告されるとともに、3,300万人以上が被災、50万人以上が救援キャンプで生活を余儀なくされたと推測されています。
海外の災害が日本にも影響を及ぼしている
海外で発生した災害により、日本にも影響が及ぶこともあります。2011年に発生したタイ国チャオプラヤ川の洪水は、自動車、精密機械や化学産業など立地企業の6割以上を日系企業が占める工業団地に被害をもたらしました。この洪水によって、多くの日系企業の工場が操業停止になり、また、生産に必要な図面や金型等の資材が水没し、代わりの生産や調達に時間を要するなど、大きな損失を受けることとなりました。
食料に関しても、世界的な気候変動による被害が、日本にも影響を及ぼします。気温の上昇は、主要穀物(小麦、大豆、トウモロコシ、コメ)など国際的に取引される作物の収量の減少や不安定化を引き起こす可能性があり、そうなると、国際市場への供給量の低下や価格の上昇をもたらすこととなります。
途上国と先進国の関係
このような被害に対して特に被害を受けやすいのはどのような国々でしょうか。
気候変動に対して脆弱な国は途上国に多い
先に示したように、アメリカなど先進国でも気象災害が起こっていますが、それ以上に途上国の方が、気候変動に対して脆弱であると言えます。
世界的にも、開発途上の地域は、気候変動に対し脆弱性が高いと言われており、例えば、西アフリカ、中央アフリカ、東アフリカ、南アジア、中南米、小島嶼開発途上国、北極域などがそれに該当します。
先進国の責務、支援の必要性
このような状況の中、先進国の責務として、途上国への支援の必要性が指摘されています。この点、国際的な枠組みにおいても、先進国による途上国支援が定められており、1992年の地球サミットで、先進国の義務として途上国への資金供与、技術移転、及び能力開発などが定められ、2009年の第15回気候変動枠組条約締約国会議(COP15)では、2020年までに先進国全体で官民合わせて1000億ドルを拠出するとの目標も定められています。また、2022年のCOP27では、気候変動の悪影響に対して特に脆弱な途上国を支援するため、新たに基金を設置し、さらなる資金支援組織を確立するという合意に至りました。