気候変動適応法の施行

2015年12月に、第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)で採択された「パリ協定」において、気候変動影響に適応する能力とレジリエンスの強化を目的に、各国に対して適応の推進や適応計画の立案などが求められることとなりました。
これを受けて、日本では、2018年6月に「気候変動適応法」が公布され、同年12月1日に施行されました。

この法律には、①適応の総合的推進、②情報基盤の整備、③地域での適応の強化、④適応の国際展開等という4つのポイントがあります。これらのポイントを踏まえ、国は気候変動適応計画の策定や気候変動影響評価の実施、国立環境研究所を情報基盤の中核として定めるとともに地域への技術的な支援を行うなどさまざまな取組を行っています。

なお、適応について独立した法律を施行したのは日本が初めてと言われています。例えば、イギリスやフランスでは、気候変動対策や環境政策に関する法律の中で適応を位置付けており、ドイツは法律を定めず、計画の中で対応しています。

気候変動適応法の概要
気候変動適応法の概要

気候変動適応計画の策定・推進

気候変動適応法に基づき、国は、気候変動適応に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための「気候変動適応計画」を策定しています。
この計画は、大きく3つの章に分かれています。

第1章では気候変動適応に関する施策の基本的方向性を、第2章では分野ごとに想定される気候変動影響と施策を、第3章では基盤的施策について記載しています。
また、施策等のKPI(重点業績指標、Key Performance Indicator)を設定し、PDCA[1]サイクルの下で進捗管理を進めることを定めています。


[1]Plan(計画)、Do(実行)、Check(測定・評価)、Action(対策・改善)というプロセスを繰り返して、マネジメントの品質を高めていく考え方のこと。

気候変動影響評価報告書の作成

気候変動適応法に基づき、国は、気候変動及び多様な分野における気候変動影響の観測、監視、予測及び評価に関する最新の科学的知見を踏まえ、気候変動影響の総合的な評価についてまとめた「気候変動影響評価報告書(総説)」を作成、公表しています。

この報告書では、各分野における気候変動影響の概要に加えて、気温や降水量などの観測結果と将来予測、影響の評価に関する今後の課題や現在の国の取組をまとめています。

本報告書は、国による「気候変動適応計画」や、地方公共団体や事業者等による適応計画等の策定に役立てられています。
なお、この「総説」報告書のほか、各分野におけるより詳細な情報をまとめた「気候変動影響評価報告書(詳細)」も参考資料として公表されています。また、これらはおおむね5年ごとに更新されることになっています。

国際パートナーシップの構築

日本は、国際的な気候変動対策にも積極的に取り組んでおり、気候変動適応に関する国際的な会合等に出席し、情報共有、議論することによって、世界各国との連携を強化しています。

また、アジア太平洋地域における幅広い気候変動影響に対して、各国・地方において気候変動リスクを踏まえた意思決定と実効性の高い適応を支援するため「アジア太平洋気候変動適応情報プラットフォーム(AP-PLAT)」を構築しています。

このプラットフォームでは、①気候変動リスクや適応事例等の知見・情報の発信、②適応策立案等に関する支援ツールの開発・提供、③気候変動影響評価や適応計画策定実施に関する人材育成・能力向上の3つを活動の柱とし、気候変動リスクに対応するための政策決定や効率的な適応策の実現を目指しています。