開催現地レポート① |
 COP30 気候変動適応特集

COP30開会 アマゾン地域での開催が示す適応と森林保全への焦点

公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)研究員 撮影

2025年11月10日、ブラジル連邦共和国のベレンにおいて、第30回気候変動枠組条約締約国会議(COP30)が開幕しました。アマゾン川の河口に位置するベレンでの開催は、気候変動適応策と熱帯林保全を国際交渉の焦点に据える、という議長国ブラジルの強い意向を反映しています。A-PLATのCOP30特集では、これから3回にわたり、会議の様子をご報告します。

11月6~7日に開催されたCOP30サミット(首脳級会議)には、多数の各国首脳が集結し、ステートメントを述べました。ブラジル大統領ルラ・ダシルバ氏は開会演説で「気候変動否定論者に敗北を」と強く呼びかけ、会議の方向性を示しました。今回は「適応とNbS(Nature-based Solutions:自然を基盤とした解決策)のCOP」とも言われており、国連のグテーレス事務総長が「適応はコストではない。命綱である。」と述べたように、気候変動の最前線にある途上国の脆弱性克服と、適応資金の迅速な動員が主要な論点として強調されました。

出典:COP30議長国公式ウエブサイト

特に注目を集めたのは、11月6日に設立が発表された、ブラジルが主導するTropical Forests Forever Facility(TFFF)の設立です。この歴史的な取り組みに対し、合計55億米ドル(8,620億円)超の資金動員が発表され、53か国がTFFF設立宣言を支持しました。TFFFは、熱帯林の長期的な保全を目的とした新たな資金メカニズムであり、気候変動適応の観点からも極めて重要です。健全な熱帯林は、洪水や土砂災害の防止、水源の涵養といった多大な恩恵を通じて、周辺コミュニティの気候変動に対するレジリエンスを強化する、自然を基盤とした適応策(NbS)として機能します。TFFFが長期にわたり安定した資金を供給することで、この重要な「緑のインフラ」の維持に貢献することが期待されています。

出典:COP30議長国公式ギャラリー

また、第2週目初日の11月17日、ブラジル政府はアマゾン地域のバイオエコノミーを強化するため、「Coopera+ Amazônia」プログラムに約31億4000万円(約1億700万レアル)を投資すると発表しました。このプログラムは、アサイーやブラジルナッツなどの林産物に関わる協同組合の経営・生産イノベーションを強化し、森林を維持しながらコミュニティの収入を向上させることを目指しています。これは、経済的な代替策の導入によって、森林破壊へと安易に向かうことを防ぎ、地域社会の適応力を高める「持続可能なバリューチェーン」に焦点を当てた、極めて実践的な適応・NbS関連の取り組みとして注目されています。

また、開催地がアマゾン地域であることから、首脳級会議や主要イベントでは、気候変動への適応策における先住民コミュニティのリーダーシップと、ローカルな伝統的知識の活用が主要な論点として例年以上に活発に議論されました。これは、適応策の策定と実施において、最も脆弱な地域に暮らす人々の視点と知見の重要性が、国際的な議題として一段と注目が高まっていることを示しています。

現地レポート第1回は、首脳級サミットの概要と、適応にも深く関わるTFFFの設立を中心にお伝えしました。次回は、会場やパビリオンでの展示・セミナーの様子をご報告します。

(掲載日:2025年11月27日)