COP30 気候変動適応特集
COP30会場での様々なイベントと、それを支えるひと
COP30の会場内には、各国の政府代表団による交渉が行われる会議場の他に、それぞれの国や組織が独自の企画展やセミナーを行うパビリオンエリアがあります。
ジャパンパビリオンでは、企業による展示の他、適応関連のセミナーが開催されました。11月13日に実施された環境省主催の「強靭なサプライチェーンの実現に向けた早期警戒システム(EWS)」では、途上国の供給現場で高まる気候リスクに対し、日本発のEWSをどう実装していくかが焦点でした。国際機関も加わったパネルでは、官民の連携や資金ギャップなど、今後の課題も共有されました。続く「自然を活かした気候変動への解決策 (NbS)によるシナジー効果の追求」では、気候変動、生物多様性の損失、汚染という3つの世界的な危機を乗り越えるための統合的な解決策をテーマに、各地の取り組みや成功例が紹介されました。
議長国ブラジルのパビリオンは、木材を基調とした、アマゾンに生息する動物や先住民族の衣装を彷彿とさせる鮮やかで力強い色彩が特徴です。パビリオン内では、熱帯林の保全や生物多様性をテーマにしたセミナーが数多く開催され、連日大勢の参加者で賑わっていました。
また、今回のCOPが掲げる「実施のCOP」を体現する場として“Action Agenda Thematic Area”が設けられました。エネルギー・トランジションや適応・レジリエンスなど6つの重点テーマごとに分けられたセミナールームで、毎日多彩なイベントや対話が行われていました。

会場には会議場や各国パビリオンの運営のほか、国際交渉や数々のイベントを円滑に進めるために多くのサポーターが働いています。コンピューター・センターでCOP30サポーターとして働くベレン出身のブレンダ・ナシメントさんもその一人です。彼女にベレンの若者が考える「実施のCOP」についてお話を伺いました。
IGES研究員: お時間をいただきありがとうございます。自己紹介とコンピューター・センターでの仕事内容を教えてもらえますか?
ブレンダさん: こんにちは、ブレンダです。20歳です。ベレンの大学院でコンピュータサイエンスを専攻しています。主に交渉会議のライブ配信をサポートしています。交渉の様子をリアルタイムで世界中の参加者が見られるようにする仕事です。責任は大きいですが、とてもやりがいがあります。インターネット接続の問題でリアルタイム配信が途切れたときは大変でしたが、たくさんの関係者と言語の壁を越え、協力して解決できたときは、コミュニケーションには言葉を超える力があると実感しました。
IGES研究員: ブレンダさんが気候変動に興味を持ったのはいつ頃からですか?
ブレンダさん: 正直に言うと、以前はデジタル製品やソリューションに夢中で、気候変動の緊急性を理解していませんでした。しかし、調べていくうちにテクノロジーが解決策を提供するためのツールになり得ることに気づきました。テクノロジーを気候変動問題の解決へと結びつけたいと思い、今回COP30のサポーターの仕事に応募しました。COP30は私にとって視野を広げる大きな機会でした。
IGES研究員: ベレンの若い世代は気候変動に関心がありますか?
ブレンダさん: Z世代は強い関心を持っています。私たちは声をあげるだけでなく、実際に解決策を生み出したいと思っています。例えば、私の友人はコンテンツ制作をしており、TikTokなどで気候変動問題について発信しています。また、私は友人と“CarbonTrack”というシステムを開発しました。ベレンの企業の炭素排出量を追跡するためのツールです。私たちにとって重要なのは、単に声をあげることではなく、実際にアイデアを出して解決するためのツールを作ることです。
IGES研究員: とても貴重なお話をありがとうございました。最後に、ブレンダさんにとってCOP30とは?
ブレンダさん: 私にとってのCOP30は「約束より行動」です。アマゾンの熱帯林を有するベレンのような場所において、実際に取り組みを前に進めることが重要です。対話だけではなく、行動することが本当の変化につながります。COP30は世界中の人々が宗教や信条を超えて一つの目的のために協力する場です。私たちには地球が一つしかありません。だからこそ、行動が必要なのです。
ベレンで生まれ育ち、これまで海外に行ったことがないというブレンダさんは、COP30を通して多くの国の人々と会話し、改めて自分の街についても理解を深める機会を得られたことが嬉しいとのことでした。遠いどこかの“about Amazon”ではなく、実際にベレンに足を運んでもらって “with Amazon”で一緒に行動を起こしたい、という彼女のメッセージが印象的でした。
現地レポート第2回は、パビリオンでのセミナーの様子や会場で働くスタッフについてお伝えしました。次回は、COP30の結果についてご報告します。