COP30 気候変動適応特集
適応関連の交渉結果① 適応に関する世界全体の目標(GGA)
進捗評価のための「ベレン適応指標」採択とその課題
2023年のCOP28(ドバイ)から2年間にわたり進められてきた「指標に関するUAE–ベレン作業計画」は、COP30(ベレン)において、進捗評価のための「ベレン適応指標」の採択という形で一応の完了を迎えました。しかし、その採択に至るプロセスは異例のものであり、合意内容の正当性をめぐって多くの締約国から深刻な懸念が表明される波乱の幕引きとなりました。
採択された「ベレン適応指標」の特徴
今回採択された59個の指標群1は、これまでそのバランスが重視されてきた「プロセス」「インプット」「アウトプット」「アウトカム」を測定する指標の中から、特に「アウトカム(適応策による具体的な成果)」に比重が大きく置かれた点が特徴です。指標リストには、レジリエンスの向上や気候変動影響の低減を測るため、質的な評価軸や異なる温暖化シナリオを考慮した将来リスクの評価などが新たに盛り込まれました。また、決定文にはこれらの指標が自発的(voluntary)かつ非懲罰的(non-punitive)であり、途上国への新たな義務や資金アクセスの条件とならないこと等が明記されました。
不透明な交渉プロセスと各国からの異議
今回の指標採択において最も特筆すべきは、終盤の決定プロセスに対する各国の強い反発です。COP会期第2週の後半、公式な交渉会合外の不透明なプロセスで指標の選定が行われたことに対し、閉会プレナリー会合では、多くの国々がプロセスの透明性や技術的根拠の欠如について公式に異議申し立てや懸念を表明しました。技術専門家による検討成果が十分に反映されず、政治的な判断を中心に指標が統合・修正されたことに対し、「プロセス全体の正当性を損なうものである」との厳しい指摘もなされています。
指標再検討の可能性を孕む「ベレン–アディスビジョン」
こうした経緯から、今回採択された「ベレン適応指標」は完成された最終版ではなく、今後大きな変更が生じ得る「出発点」であると捉えるべきでしょう。COP30で新設された「適応に関するベレン–アディスビジョン」に基づく2年間の作業計画の中で、各国からのフィードバックや技術的な精査により、指標のメタデータや方法論、さらには指標リストそのものの大幅な見直しが行われる可能性があります。さらに、「バクー適応ロードマップ(BAR)」における今後の議論や、2026年末の隔年透明性報告書(BTR)提出に向けた試行プロセスを通じ、科学的・技術的な整合性を重視した指標の再整理を求める議論が加速すると予想されます。
パリ協定10周年の節目に採択された「ベレン適応指標」が、真に信頼に値する進捗評価の手段となるかどうかは、今後のプロセス再構築のあり方にかかっていると言えるでしょう。
- 1 「ベレン適応指標」のリストは、COP30/CMA7のGGA決定文書をダウンロードしAnnexページで確認できます。