結果概要 |
 COP30 気候変動適応特集

適応関連の交渉結果② 国別適応計画(NAP)

NAPプロセスアセスメントの完了と「策定から実施」への転換

開発途上国の中長期的な適応能力向上を支援するため2010年に設置された「国別適応計画(NAP)」プロセスは、近年、資金支援や適応の主流化をめぐる議論で交渉が停滞していました。今回のCOP30(ベレン)では、2024年から開始されていた「NAP策定・実施プロセスの進捗評価(アセスメント)」がようやく完了し、今後のプロセスのあり方を方向づける重要な決定が下されました。

NAPプロセスの進展と残された課題

UNFCCC事務局が公表した最新のNAP進捗レポート1(9/30時点における10/21公表文書)によると、NAPプロセスは着実な進展を見せている一方で、第1回グローバル・ストックテイク(GST)決定で掲げられた「2025年までのNAP策定・提出、および2030年までの実施・進展」という目標の達成に向けた課題も浮き彫りになっています。現在、144か国の途上国がNAPプロセスを開始していますが、2025年9月現在で提出が完了しているのは67か国となっています。また支援面では、緑の気候基金(GCF)による「策定」支援が121か国で承認されているのに対し、具体的な「実施」段階への承認は58か国に留まっています。このことは、多くの国が計画策定から実際の適応アクションへの移行段階で大きなギャップに直面していることを示唆しており、資金アクセスや技術移転の障壁をいかに取り除くかが今後の喫緊の課題となっています。

NAPの実施加速に向けた合意と今後の道筋

COP30のNAP決定2(11/22公表)では、これまでの進捗を認めつつ、今後の適応アクションを加速させるための具体的な道筋が示されました。特に重要な成果として、2030年までの「NAPの実施」という目標に向け、単なる計画策定に留まらず、具体的な適応アクションへの投資を促進することが再確認されました。これに関連して、「科学的データ」に基づいたリスク評価の強化や、適応策を国家の財政・開発計画へ組み込む「適応の主流化」の重要性も確認されました。また、実効性のあるNAPプロセスを支える基盤として、途上国の能力強化に向けた「情報プラットフォーム」の活用が決定文の中で正式に認識されたことは、大きな意義を持ちます。各国の成功事例や技術的な知見を共有する多国間・地域間のプラットフォーム(AP-PLATweADAPTが好例)が、知見のギャップを埋め、各国の策定・実施を加速させるための鍵となる手段として位置づけられたのです。さらに、次回の進捗評価については2030年に実施することが合意され、2029年から準備作業を開始するという、実施と評価を繰り返す長期的な道筋が明確に示されました。

実効性のある適応の推進にむけて

NAPは今や、単なる「計画文書」ではなく、GGAのターゲットを達成するための主要な手段としても位置づけられています。今後は、2026年の隔年透明性報告書(BTR)提出や、次期NDCの更新プロセスにおいて、NAPで特定された優先事項がいかに反映・実施されるかも、ひとつの焦点となっていくでしょう。今回のCOP30において、長年議論が続いていた「NAPプロセスアセスメント」がようやく完了したことは、適応を「交渉」から「実施と評価」のフェーズへと本格的に移行させるための重要な節目となりました。

(掲載日:2025年12月25日)