各セクターから見たCOP30気候変動適応分野の調査報告 |
 COP30 気候変動適応特集

気候の「危機」を「実施」へ繋ぐ:
気象予報士として、ユースとして見つめたアマゾンでのCOP

Climate Youth Japan(CYJ)1 副代表 / 政策提言統括 和田 優希さん

A-PLATでは、COP特集記事の締めくくりとして、COPに参加した様々なステークホルダーの皆様から現地の印象をお伺いしています。今回は、気象予報士としての専門性を持ちながら、CYJ副代表としてYOUNGO2の適応ワーキンググループに関わった和田優希さんに、現地の熱気と今後の展望についてお話を伺いました。アマゾン流域という気候危機の象徴的な場所で、若者たちは何を求め、どう動いたのでしょうか。

アマゾン・ベレンで肌身に感じた適応の緊急性
―COP30の開催地、ベレンの雰囲気はいかがでしたか?

会場のパビリオンエリアでは、クーラーが十分に効かず、立っているだけで汗が噴き出すような暑さでした。ベレンはアマゾン流域の入り口であり、気候変動の影響を最も受けている地域の一つです。私たちが感じたその「不快な暑さ」は、現地の人々にとっては生活を脅かす「日常」そのものでした。

今回のCOPでは、これまでに増して先住民族や地域コミュニティの存在感が際立っており、会議場の内外では気候資金の増額などを求める力強いデモが連日繰り広げられていました。ともに活動した現地の若者たちがデモに参画する姿を目の当たりにし、その高い意識と行動力に触れたことは、私にとって非常に貴重な経験となりました。「適応」はもはや遠い未来の議論ではなく、今この瞬間の生存に関わる喫緊の課題であるという事実を、現地の空気感から強く突きつけられました。

日本のユースとして初めて適応交渉の最前線へ
―今回はYOUNGOの適応ワーキンググループ(WG)で活動されたそうですね。

はい。CYJからの参加者としては初めて、公式ユース団体であるYOUNGOの適応WGに本格的に加わり、各国のユース約20名とともに交渉の動向を追いました。主な役割は議事録の作成や提言書の提出ですが、毎朝のミーティングで議論を重ね、ユースとしての優先事項を決定文書に反映させるべく奔走しました。

私は特にGGA(適応に関する世界全体の目標)に関する交渉を注視していましたが、決定文書のわずか一語の修正に膨大な時間が費やされる光景を目の当たりにし、国際交渉の難しさを改めて実感しました。また、適応資金の問題を巡っては、日本政府の立場と他国ユースの主張との間で板挟みになり、葛藤する場面もありました。しかし、日本のユースとして単に交渉を追うのみならず、提言として現場で直接声を上げたことは、何物にも代えがたい経験になったと感じています。

早期警戒システムを「動かす」実効性
―気象予報士という専門家の視点から、特に注目した点はありますか?

GGAのターゲットにも含まれている「早期警戒システム(EWS)」の導入についてです。私が気象予報士を志した原点は、気候変動の脆弱国に対して、日本などが持つ高度な気象予報技術の移転に貢献したいという思いにあります。そうした支援体制を整えたいという動機から、GGAに関する国際交渉もフォローし始めました。

単にシステムを導入するだけでは不十分です。それを受け取った現地の人が正しく理解し、避難などの具体的な行動に移せるよう、「気象情報を迅速かつ正確に伝達するための能力強化」がセットで評価されるべきだと考えています。現在、気象データは米国が優位にあると言われていますが、特定国のデータ公開状況に脆弱国の予報精度が左右される現状には危惧を覚えます。政治的情勢によるデータ遮断のリスクや、グローバルなモデルでは地形状の微細な変化を捉えきれない限界があるなかで、各国が大国のデータに過度に依存せず、局地的なローカルデータを用いて自らの手で予測を行うスキルを習得すること、すなわち「人」の能力強化こそが重要だと考えています。

気象災害が激甚化する中で、数字上の目標達成に留まらず、現場で本当に命を守ることができる仕組みになっているか。ひとりの気象予報士として、人材育成などの支援の進捗が適切に評価される指標になっているか、その「実効性」を注視していきたいと考えています。

「提言」から、具体的な「実施」のフェーズへ
―今後の活動について教えてください。

COP30を経て、CYJとしても大きな転換点を迎えています。これまでの「政策提言部門」に加え、来年度からは新たに「インプリメンテーション(実施)部門」を立ち上げる予定です。

政策や計画の文言を変えるだけでは、気候危機を止めることはできません。また、今回議論された「指標」についても、それが単なる政府間の約束に留まらず、民間セクターの具体的な投資や行動を促し、社会全体を動かす仕組みへと昇華させる必要があります。

提言した内容を、自治体や企業、省庁と連携しながら、実際に自分たちの手で動かしていく。GGAの指標が完全に固まるのを待つのではなく、今できるアクションを同時並行で進めていく。そんな「実行するユース」として、日本国内外における適応の取組を加速させていきたいと考えています。

取材日:2026年1月13日
画像提供:和田 優希

(掲載日:2026年1月22日)