- インフォグラフィック
- イラストで分かりやすい適応策
水稲
影響の要因
気温の上昇、CO2濃度の上昇、強雨の増加、降水量の減少など様々な要因により、水稲の収量や品質に影響を受ける地域が多い。
現在の状況と将来予測
現在、全国で品質への影響が出ているほか、一部地域では収量減少などの影響が生じている。特に、気温の上昇による品質の低下が最大の影響で、白未熟粒や胴割粒の発生による一等米比率の低下などの影響が生じている。
将来、コメ収量は全国的に今世紀半ば頃までは全体として増加傾向にあるものの、 21 世紀末には減少に転じるほか、品質に関して高温リスクを受けやすいコメの割合が 特にRCP8.5 シナリオで著しく増加することが予測されている 。
適応策
気温の上昇に対する適応策として、栽培時期の変更など作物が高温に曝される事を回避する方法、管理方法の改善や品種の転換など作物の高温に対する耐性を高める方法、病害虫の防止など気候変動により増加する病害や害虫を防ぐ方法に大別できる。
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■田植え時期の見直し
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■直播
鉄コーティング種子
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■早めの刈り取り
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■土壌・施肥管理
・土壌環境管理
・施肥管理(窒素肥料 、ケイ酸質肥料 等)
上:還元障害により生育が抑制された根
下:健全な根
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■適切な水管理
・深水管理
・かけ流し灌漑
・早期落水防止等
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■高温耐性品種や晩生品種の導入
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■新品種の開発、導入
高温耐性に優れた多収の極良食味水稲新品種 「にじのきらめき」
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イネ紋枯病やイネ縞葉枯病等の病害虫対策を実施
イネ紋枯病
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■雑草管理
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■薬剤防除
高温登熟の回避や、白未熟粒の発生を防ぐため、田植え時期の晩期化が一般的(但し、日射量の減少による登熟不良、幼穂形成期に高温懸念等のリスクがあり、西日本暖地では早期化も有効とされている)。
直接水田に種子(種籾)を播く方法。収穫時期を遅らせる事で高温登熟を回避する。
胴割米の発生を軽減するため、刈り取りを遅らせないようにする。
高温時における根からの養分吸収力を高めるため、作土深15cmを確保し、根圏を広げて根量を増加。
■基部未熟粒等の発生を抑制するため、施肥窒素量を増やす。
■光合成速度を高めるため、有用元素であるケイ酸質肥料の施用。
高温の影響を回避する為に、出穂期に深水管理をし温度を下げる。
高品質を確保するために、出穂後の高温時にかけ流し灌漑をして温度を下げる。
高温になった場合、胴割米の発生を軽減するため、早期落水を回避。
■既存の高温耐性品種への作付け転換を徐々に進める。
■晩生品種を導入し、秋涼しくなってから実らせる作り方を推進する。
■地域特性に応じた高温に強い品種の開発(高温登熟耐性に加え縞葉枯病抵抗性を持つ品種(にじのきらめき等)は北関東等で、高温登熟耐性に加えてトビイロウンカ抵抗性を持つ品種(秋はるか等)は九州等での普及が期待)(森田・中野2020)。
■生産者、実需者等が一体となった、高温耐性品種の導入実証の取組支援。
イネ縞葉枯病は主にヒメトビウンカ(保毒虫)により媒介される為、越冬場所となる畦畔等周囲の除草作業を行い大量発生しないよう予防する。
ヒメトビウンカの発生密度を下げたり、紋枯病菌を殺菌する為に薬剤による防除を行う。
田植時期見直し:田植え期
早めの刈り取り:成熟期
土壌環境:代かき期
施肥(追肥):田植え期(出穂期前後)
深水管理:出穂期等
かけ流し:出穂後等
早期落水防止:登熟期
薬剤散布:発生予察情報等を活用し、適切な時期に散布する。
適応策の進め方
【現時点の考え方】
高温対策として、肥培管理、水管理等の基本技術の徹底を図るとともに、高温耐性品種の開発・普及を推進(農林水産省 2021)している。また、病害虫対策として、発生予察情報等を活用した適期防除等の徹底を図っている(農林水産省2021)。
【気候変動を考慮した考え方】
予測される温暖化に対応した実効性のある適応策導入を検討するに当たり、個別の現象に対する適応技術を開発するだけでは不十分であり、各影響の複合影響や適応策実施に伴うコストや生じうる他のリスクといった間接影響を 考慮することが必要不可欠である(石郷岡2015より引用)。
【気候変動を考慮した準備・計画】
適応策実行計画の策定等、産地の将来の目標を踏まえ、どのような適応策を、どのタイミングで導入していくかを取りまとめることが重要(農林水産省 2020)。また、農業分野における長期的なビジョンを示す振興計画を策定する場合には適応策実行計画を併せて策定することで、より効果的な計画作りとなる(農林水産省2020)。