インフォグラフィック
イラストで分かりやすい適応策
気候変動の影響と適応策

雪上レジャー

産業・経済活動分野|観光業| レジャー
協力:名城大学 都市情報学部

影響の要因

気温の上昇、降雨量・降雪量の時空間分布の変化は、自然資源(雪山等)を活用したレジャーにおいて、活用可能な場・資源の消失や減少、活動に適した期間の変化等の影響を及ぼす可能性がある。

現在の状況と将来予測

現在、暖冬によって積雪量の不足や雪質の変化が生じている地域が見られ、スキー場の運営に悪影響を与えている。

将来、2031 年以降、ほとんどのスキー場で積雪深が大きく減少すると予測されている。積雪量の減少に伴い、来客数及び営業利益が大幅に減少する可能性がある。

積雪量増減率別スキー場数*
(左2031年~2050年、右2081年~2100年)
*全国 275 スキー場を対象
出典:中口(2010)

適応策

地域によっては積雪量の不足が見られ、降雪量の補填やスキー場設備の縮小、レジャーの多角化等などに取り組んでいる(社会的要因による来客数減少への対応も含まれる )。将来的にはより一層積雪量が減少することも見据え、経営体制の改革、事業転換といった大きな変化が求められる。

主体
事業者
国・地方自治体
分類
事業継続のための取組・経営効率化
  • 積雪量の確保

    人工降雪機等の使用

    ファンタイプ/ガンタイプ
  • 事業内容の検討

    【設備規模の適正化】
    高度の低い敷地内リフトや駐車場数のリストラ

    【集客力の強化】
    温泉など他の観光メニューとのパッケージツアー等

    【グリーンシーズンの活用】
    夏季/通年のマウンテンレジャーの展開

  • 経営体制の改革・投資の喚起

    ・広域連携(スキー場同士、索道同士)

    ・索道会社の統合、所有と運営の分離

    共通パス
事業者支援・地域活性化
  • 事業者への支援

    借地料の低減やリフト券転売対策の支援

  • 観光地としての魅力向上

    魅力ある景観づくりや町並みづくり

  • 観光地域づくり法人(DMO)の活用
    官民連携

    官民連携

主体
事業者
国・地方自治体
分類
事業継続のための取組・経営効率化
事業者支援・地域活性化
積雪量の確保
事業内容の検討
経営体制の改革
・投資の喚起
事業者への支援
観光地として
の魅力向上
観光地域づくり法人(DMO)の活用
方法

人工的な積雪量の確保として、降雪機(低温空気中に水を噴霧し空中で水滴を凍結させる)と造雪機(氷を細かく粉砕して撒く)の利用がある。人工降雪機がより広く利用されており、造雪方式からファンタイプとガンタイプに大別される。

①ファンタイプ
大量の造雪が可能で、低温域、緩斜面、広いゲレンデに向いている。

②ガンタイプ
ファンタイプより造雪量は少ないが高温域での造雪が可能で、急斜面や狭いゲレンデでも作業可能。

[ 設備規模の適正化 ]

来客数の減少にあわせた適正規模となるよう、リフトや駐車場数の削減等を行う。

[ 集客力の強化 ]

雪上レジャーを始める魅力あるきっかけづくり(イベントや温泉等、地元の観光資源とのパッケージ化等)により、スキー場への来客を促進する。

[ グリーンシーズンの活用 ]

マウンテンバイクによるトレイルライドや、グラススキー、トレッキング・ハイキングなど、夏季・通年で楽しめるレジャーを展開する。

[ 広域連携 ]

地域内の複数スキー場で使用可能なエリア共通チケットの導入等を行い、地域として集客力を高める。

[ 経営体制の改革 ]

①索道会社の統合
スノーコンテンツと索道を管理する索道事業者の資本統合を行い、一山一社化して効率化を図る。

②所有と運営の分離
宿泊飲食小売等の小規模事業者の資産を統合し、所有と運営を分離することで投資(土地・店舗等の不動産投資と運営事業者への投資)を促進する。

[ 借地料低減 ]

地方自治体が所有している土地を貸し付けているスキー場に対し借地料を軽減する事が考えられる。

[ リフト券転売対策の支援 ]

リフト券転売の対策を実施する(罰則付きの条例を制定する等)。

ゴンドラや山頂からの眺望等魅力ある景観づくりや、滞在先としても楽しめる町並みづくり等、観光地としての魅力をより高める事で、四季を通じて集客力強化に繋げる。

[ DMO設立と地域一体でのプロモーション ]

スノーリゾート形成を目的とする観光地域づくり法人(DMO)を設立し、 「 官民公金 」 の主要プレイヤーにおいて、観光活性化のキーパーソンを特定した上で信頼関係を構築し、キーパーソンとの関係性を軸に、地域のコンセンサスを形成しながら、 着地整備・誘客を 推進することが重要である(スノーリゾートの投資環境整備に関する検討会 2020)

[ 受入環境の整備 ]

官民連携によるインバウンド推進協議会を立ち上げ、Wi-Fi、キャッシュレス、案内標識等の受入環境整備を推進する。

時期
冬季
通年
通年
通年
通年
通年
効果
集客数の維持・増加
集客数の維持・増加
運営コストの低減
投資効率の向上
運営コストの低減
景観保全
集客数の維持
コスト
中(降雪機)~
高(造雪機)
高(事業費・工事費)
-

(借地料分収入減)
高(工事費)

(調整費、工事費)

適応策の進め方

【現時点の考え方】
積雪の変化に対し、3割強のスキー場で人工降雪機が導入されているという報告もあり(国土交通省 2015)、既に適応策として導入され、積雪量の維持に活用されている。

【気候変動を考慮した考え方】
長期的かつRCP8.5シナリオという温暖化が過度に進行してしまった状況下においては、気温上昇による被害が大きくなり、そもそもゲレンデに雪を固着させるような大がかりで高額な費用を伴う設備(人工造雪機等)を導入するか、あるいは適応技術が既に効果的でない場合も想定する必要がある(森杉 2020)。

【気候変動を考慮した準備・計画】
地域特性を踏まえ適応策を検討していくことが重要であることから、地域における気候変動の影響に関する科学的知見の集積を図る(環境省2021)。その上で、積雪量が不足する場合は、事業の継続策とあわせて長期的には経営体制の改革や事業の転換を見据えた対策・計画が必要になると考えられる。

2022年3月改訂
産業・経済活動

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