気候変動の原因
地球温暖化は、人間活動が原因であることは「疑う余地がない」
みなさんの中にも、近年、暑い日が増えたように感じている人もいるのではないでしょうか。日本の平均気温は、1898年以降100年あたり1.3℃の速さで上昇しています 。
このような気温上昇が、これまでは自然によるものか、人間活動によるものか、不確実な部分がありました。しかし、世界中の科学者が組織するIPCC(この点について詳しくは「5-3. IPCC」の項目をご覧ください)は、2021年に公表した第6次評価報告書において、人間の活動が地球温暖化を引き起こしてきたことは「疑う余地がない」と発表しました。
つまり、私たちが生活をする中で、化石燃料を燃やす際などに発生する、二酸化炭素(以下、CO2)やメタンやフロンなどの温室効果ガスの大気中への排出によって、気候変動が起こっていることが確実視されているのです。
近い将来1.5℃に達する可能性が高い
これからどの程度、人間社会が気候変動対策に取り組むかにより、予測される将来の気温上昇は異なってきます。しかし、このままでは、世界の気温上昇は今後10~20年の内に1.5℃に達し、今世紀末までには温室効果ガスの排出量が非常に多い想定の場合で3.3~5.7℃高くなる可能性があると考えられています。
温室効果ガスを削減する「緩和」に向けた社会の動き
世界の気温上昇を、1.5℃未満に
気候変動を止めるため、2015年の国連の気候変動枠組条約締約国会議(COP21)で「パリ協定」という国際的な枠組みが採択されました。パリ協定では、「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つ(2℃目標)とともに、1.5℃に抑える努力を追求すること(1.5℃目標) 」が掲げられました。
気候変動の原因を少なくする、「緩和」の取組
温室効果ガスの排出を減らし気候変動の原因をできるだけ抑えることを「(気候変動)緩和」と言います。緩和という言葉は聞きなれないかもしれませんが、みなさんもエコな取組としてなじみがあると思われる、下記のような取組があります。
- 節電・省エネや、エネルギーの効率のよい機器を使うことで、エネルギーの使用を減らす
- 人びとの意識やライフスタイルを通じてできるだけ温室効果ガスの排出を少なくする(例:なるべく車ではなく自転車や徒歩で移動する、徒歩で移動しやすいまちにする)
- 再生可能エネルギーを活用する
- 森林を保全したり、増やしたりする(植物はCO2を吸収してくれるため)
日本では、温室効果ガスを減らすという意味で、緩和という言葉を「脱炭素」や「カーボンニュートラル」、「ゼロカーボン」といった言葉と同種の意味合いで使うこともあります。
急速に進む緩和の取組
パリ協定の目標を達成するためには、早期に大幅な排出削減が必要とされており、協定の枠組みのもと、各国は温室効果ガスの削減目標をたてて、協力しながら緩和の取組を行っています。
もちろん、日本も2050年に温室効果ガスの排出を実質ゼロとするなどの目標を掲げ、法律(地球温暖化対策推進法)を改正したり、計画を策定したりするなど取組を進めています。また近年、多くの自治体・企業などが脱炭素の目標を発表し緩和の取組を加速化させるなど、社会全体が気候変動を止める方向へと大きく変わり始めています。
さまざまな取組の結果、日本では温室効果ガスの排出量は2013年度をピークに減少傾向に転じています。
「緩和」の課題と「適応」の必要性
しかし、世界各国の現在の削減目標や対策では、パリ協定目標の達成は難しいと指摘されています。また、仮に今すぐに温室効果ガスの排出を止めることができたとしても、これまでに排出した分の影響により、気候変動はすぐには止まりません。既に生じていて、また今後進行することが危惧される気候変動の影響に備えるために、気候変動対策のもう一つの柱である「適応」も重要となっているのです。