熱中症対策:6月から「猛暑」がはじまる時代がやってくる?国立環境研究所・岡 和孝室長に聞く、2025年の気候と熱中症への備え
花崎 直太室長
「暑すぎて外に出たくない」「日傘を持っている人が増えた」「野菜が高い」「紅葉を見たっけ?」「雪不足でスノボに行けない!」2025年、そんなことを感じませんでしたか?
気候変動は、遠い未来の話ではありません。私たちの暮らしの中に様々な形で現れており以前は「異常」だったものが、「普通」になってきています。
これから環境や暮らしはどのようになっていくのでしょうか。今回は、生活に欠かせない「水」をテーマに、水工学・水資源学研究の専門家である国立環境研究所の花崎 直太室長にお話を伺いました。
2025年の気候の特徴から将来のリスク、そして私たちが明日からできるアクションまで。花崎室長が教えてくれたのは、水資源の変化は、私たちの暮らしの中に様々な形で現れているということでした。
目次
2025年の気候と、日本で起きている「水資源」の変化
日本は、世界で9カ国しかない水道の水をそのまま飲める国であり、また世界の年降水量のほぼ2倍、約1,668mmの雨が降る水に恵まれた国です。
出典:国土交通省 令和7年版『日本の水資源の現況』
一方で、2025年は雨においても「いつもと違う」が数字として現れた年でした。
統計開始以降最も高温の夏となり、記録的な少雨、極端な大雨が全国各地で観測され、その影響によって作物の不作も相次ぎました。
出典:気象庁 「2025年夏(6月〜8月)の天候」
東日本の日本海側や東北の日本海側、北陸地方では、1946年の統計開始以来、7月として最も少ない降水量を記録しています。
出典:気象庁 「2025年7月の天候」
花崎室長は、2025年の気候と気候変動の影響について次のように解説してくれました。
「地球全体の気温が上がっていることは事実であり、それはもちろん2025年の気候に影響を与えています。ただ、もともと気候には揺らぎがあります。温暖化が問題になる以前から、多雨の年もあれば少雨の年もあり、冷夏も暖冬もあった。これまで繰り返されてきた気候の揺らぎが、温暖化の影響によってさらに増長され、一部の要素が極端な値として表に出てきている。それが、2025年に見られたことだと思います」
気候変動の影響によって懸念されるのは、「雨の量」そのものよりも、振れ幅が大きくなっていることだと花崎室長は指摘します。
「温暖化が進むにつれて、降水量の多い年と少ない年、その変動が大きくなると考えられています。2025年のような少雨の年も増えていくでしょうし、一方で多雨の年もでて、降水のパターンがより不安定になり平年並みの降水量を期待するのが難しくなってきます。
もう一つ、年間の降水量が同じであっても、その降り方は変わってきています。仮に一年間で2,000mmの雨が降ったとしても、それが均等に降れば水資源として活用できます。しかし、1日に500mmといった極端な豪雨が発生すると、雨水の多くは川を通じて一気に海へ流れ出てしまい、十分に利用することができません。
極端な豪雨と長い無降雨日数が繰り返される状況では、水を「ためて使う」ことが難しくなってしまうんです」
私たちの暮らしはどうなる? 水資源の変化は食卓に現れている
気候の変化やそれに伴う水資源への影響。私たちの暮らしには、どのような影響がでるのでしょうか。日本では、多くの場合、水は「蛇口をひねっても出ない」のではなく、姿を変えて暮らしの中に現れます。
「気候変動の影響としては、雪の変化が懸念されています。日本において雪は、冬に山で水を貯め、春に解けて農業用水となる「天然のダム」でした。しかし温暖化が進むと、雪が雨に変わったり、春を待たずに解けてしまったりする。これは雪不足でスキーができないといったレジャーの問題だけではなく、農家が一番水を必要とする代掻きや田植えの時期に水が不足してしまう可能性があるんです。
日本はもともと降水量の多い国なので温暖化が進んだからといって、蛇口をひねっても水が全く出ないような生活用水の不足が起こるのは考えづらいのでその点は心配しすぎる必要はないと思います。
ただ2025年も新潟県で田んぼに使う水が深刻に不足する事態が起こったように、雪や雨の変化の影響が、局地的かつ突発的に現れるケースが増えていくと考えられます」
農業は水に大きく依存しており、平年並みの雪解け水や降雨がなければ、作物の生育に影響が出ます。収穫量の減少や品質の低下は、価格や品ぞろえが変わるなど、私たちの食生活に影響を与えます。
「日本の食料自給率は、カロリーベースで約40%。残りの60 %は、海外に依存しています。だから水資源による影響は国内だけでなく、海外も考える必要があります。例えば2018年から2019年にかけて、干ばつの影響でオーストラリアの小麦の生産量が落ち、供給も少なくなったことがありました。(出典:日本経済新聞 豪州の農産物、干ばつで供給減 羊毛・小麦・砂糖価格上昇)気候変動がさらに進み世界では深刻な干ばつが起こる地域もある中、日本はどこから食べ物を調達するかを考え続ける必要があります」
水の変化は気づかないうちに、私たちの選択肢や日常を少しずつ変えていく。
それが日本に暮らす私たちの生活において、気候変動による水の変化の本質なのかもしれません。
じゃあ、どうする?考えてほしいバーチャルウォーター
気候変動による水資源への影響と向き合ううえで、私たちにできる最も基本的なことの一つが、「水を無駄にしない」こと。そのために目を向けてほしいのが、食料を自国で作る場合に必要となる水量を表す「バーチャルウォーター(仮想水)」という考え方だと、花崎室長は語ります。
「日常生活で水を節約することも大切ですが、より大きな影響を持つのが食べ物を無駄にしないことです。食料の生産には大量の水が使われています。たとえば小麦100グラムを無駄にすることは、その背後で使われた1000倍の水、100キロの水を無駄にすると考えることができるんです。節水も大事ですが、食べ物を大事にすることもまた、世界レベルで私たちが貢献できることだと思います」
https://water-sc.diasjp.net/beta/jp/viewer.html
Water Security Compass:企業の水リスクや水環境に及ぼす影響を評価し、ビジネスや水環境の水リスクの影響評価に向けた様々な指標を提供
変わっていく世界を快適に生きぬく選択「適応アクション」
花崎室長にお話いただいた通り、気候変動のサインは水資源やそれにまつわる産業、農業など、あらゆる範囲に現れています。その中で私たちにできるのが、気候変動の影響に備えながら快適に暮らしていくための「適応」という選択です。
日本や世界で起きている水資源の変化に対しては、「節水アイテムを使う」「節水家電を使う」「お風呂の水のはりすぎに注意」といった日常の工夫に加え、「フードロスを減らす」「作りすぎない」「食べ切れる分だけ注文する」ことも大切な適応アクション。
「#適応しよう」ページでは、こうした「様々な適応」を含め、これからの時代を快適に暮らすための「15の適応アクション」を紹介しています。
未来を快適に暮らすために必要なのは、特別な誰かの大きな決断だけではありません。
あなたが今日選ぶ、ほんの小さな「適応」の積み重ねが大切です。
まずは今日の節水から、自分らしいアクションを選んでみませんか?